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009『部活には入りましたか?』
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せやさかい・009
『部活には入りましたか?』
昔は体育館が一杯になったらしい。
なにで一杯かと言うと、全校集会なんかやると、体育館の床が生徒で一杯になったらしい。
各学年8クラスもあって、一クラスに50人も生徒がおって、計算したら全校生で1200人!
いまの倍以上や!
「もっと前は、一クラス60人で8クラスでした! さあ、全校生で何人になりますか!?」
え~と……
「……1440人」
後ろで榊原さんが呟く。数学はあたしよりできそう。
でも、そんな人数、体育館に入ったんかなあ?
「だから、全校集会はグラウンドで行っていました!」
校長先生は話がうまいなあと思た。そうやって生徒を集中させて、要件に入っていった。
「一年生のみなさん、部活には入りましたか?」
連休までは体験入部期間になってて、どこの部活を見に行ってもええことになってる。全生徒が部活をやる建て前になってて、校長先生はやんわりと勧めてるんや。
吹部に入りたいなあという気持ちはあった。
コトハちゃんは高校の吹部でアルトサックスを吹いてる。
中学の吹部でも、吹部に入ってて、クラリネットの名手やったらしい。一回だけ練習見に行った。見学が二十人ほどおったんで気楽に見られたんやけど、掛けてある写真見てタマゲタ。
全員が楽器持っての集合写真の真ん中にコトハちゃんが写ってる。ほかにもコンクールで表彰状もろてるのもコトハちゃん。
「いや~キレイな人やなあ」
写真に目を止めた子ぉがため息ついた。
「吹部のマドンナで、今は真理愛(マリア)女学院のブラバンでサックス吹いてはります!」
副部長の三年生が誇らしげに説明して、ほかの部員もウンウンと頷いてる。三年生は一年間コトハちゃんといっしょやった。そらもう、希望の星やったんや。
そんな中に入っていったら「あ……酒井さんの従妹……やのん?」と残念がられる。
その日の見学だけで、吹部は断念した。
むろん、全員部活いうのは建前で「勉強に打ち込みます!」いうのんもあり。いまどきの中学生、進学を真剣に考えてたら塾に通うのは当たり前。たいていは三年の二学期には部活も引退して進学に備える。
コトハちゃんは「他にすることもないし」と二学期一杯まで練習に通っていた。それで偏差値60以上ある真理愛女学院に涼しい顔して合格。なんともはや……。
「放課後空いてる?」
春の日差しにアクビが出かかったとこで、榊原さんに肩を叩かれた。
「ふぇ?」
「よかったら、部活の見学について来てもらわれへんやろか?」
子犬のような目ぇで聞かれる。
「うん、ええけど、どこの部活?」
万一吹部だったら付いて行かれへんから、その確認だけした。
「えと……文芸部」
かくして――図書分室――の看板が掛かった部屋の前に立っている。看板の横にはカマボコの板みたいなのに『文芸部』と書かれている。
付き添いなんで、ノックは榊原さんがするべきやと思うねんけど、これがいっこうに動かへん。
「ノックしよっか?」
「う、うん……」
これは、あたしがやらんとあかんか……決心したら、後ろから声を掛けられた!
「入部希望?」
「「ヒャウ!」」
二人そろって悲鳴を上げて振り返るとメチャクチャなベッピンさんが立ってた!
金髪にブルーの瞳、どう見ても外人のベッピンさんが、うちらと同じ制服着てニコニコしてる。
「文芸部部長の夕陽丘です。ま、中にどうぞ」
誘蛾灯に誘われるみたいに「失礼します」を合唱する二人でありました……。
『部活には入りましたか?』
昔は体育館が一杯になったらしい。
なにで一杯かと言うと、全校集会なんかやると、体育館の床が生徒で一杯になったらしい。
各学年8クラスもあって、一クラスに50人も生徒がおって、計算したら全校生で1200人!
いまの倍以上や!
「もっと前は、一クラス60人で8クラスでした! さあ、全校生で何人になりますか!?」
え~と……
「……1440人」
後ろで榊原さんが呟く。数学はあたしよりできそう。
でも、そんな人数、体育館に入ったんかなあ?
「だから、全校集会はグラウンドで行っていました!」
校長先生は話がうまいなあと思た。そうやって生徒を集中させて、要件に入っていった。
「一年生のみなさん、部活には入りましたか?」
連休までは体験入部期間になってて、どこの部活を見に行ってもええことになってる。全生徒が部活をやる建て前になってて、校長先生はやんわりと勧めてるんや。
吹部に入りたいなあという気持ちはあった。
コトハちゃんは高校の吹部でアルトサックスを吹いてる。
中学の吹部でも、吹部に入ってて、クラリネットの名手やったらしい。一回だけ練習見に行った。見学が二十人ほどおったんで気楽に見られたんやけど、掛けてある写真見てタマゲタ。
全員が楽器持っての集合写真の真ん中にコトハちゃんが写ってる。ほかにもコンクールで表彰状もろてるのもコトハちゃん。
「いや~キレイな人やなあ」
写真に目を止めた子ぉがため息ついた。
「吹部のマドンナで、今は真理愛(マリア)女学院のブラバンでサックス吹いてはります!」
副部長の三年生が誇らしげに説明して、ほかの部員もウンウンと頷いてる。三年生は一年間コトハちゃんといっしょやった。そらもう、希望の星やったんや。
そんな中に入っていったら「あ……酒井さんの従妹……やのん?」と残念がられる。
その日の見学だけで、吹部は断念した。
むろん、全員部活いうのは建前で「勉強に打ち込みます!」いうのんもあり。いまどきの中学生、進学を真剣に考えてたら塾に通うのは当たり前。たいていは三年の二学期には部活も引退して進学に備える。
コトハちゃんは「他にすることもないし」と二学期一杯まで練習に通っていた。それで偏差値60以上ある真理愛女学院に涼しい顔して合格。なんともはや……。
「放課後空いてる?」
春の日差しにアクビが出かかったとこで、榊原さんに肩を叩かれた。
「ふぇ?」
「よかったら、部活の見学について来てもらわれへんやろか?」
子犬のような目ぇで聞かれる。
「うん、ええけど、どこの部活?」
万一吹部だったら付いて行かれへんから、その確認だけした。
「えと……文芸部」
かくして――図書分室――の看板が掛かった部屋の前に立っている。看板の横にはカマボコの板みたいなのに『文芸部』と書かれている。
付き添いなんで、ノックは榊原さんがするべきやと思うねんけど、これがいっこうに動かへん。
「ノックしよっか?」
「う、うん……」
これは、あたしがやらんとあかんか……決心したら、後ろから声を掛けられた!
「入部希望?」
「「ヒャウ!」」
二人そろって悲鳴を上げて振り返るとメチャクチャなベッピンさんが立ってた!
金髪にブルーの瞳、どう見ても外人のベッピンさんが、うちらと同じ制服着てニコニコしてる。
「文芸部部長の夕陽丘です。ま、中にどうぞ」
誘蛾灯に誘われるみたいに「失礼します」を合唱する二人でありました……。
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