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222『タングリス復活』
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RE・かの世界この世界
222『タングリス復活』テル
「ここではまずいぞ」
ヒルデが眉を寄せた。
もっともだ。イザナミさんが居る玄室は、まだ少し距離があるというものの、一本道の羨道を挟んでいるだけだ。
カテンの森でトール元帥の非常食になってから、タングリスは骨と皮だけになってタングニョ-ストの背嚢に詰められたままだ。彼女の記憶はカテンの森で途切れている。
ここは、カテンの森があった『かの世界』ではない。新旧入り混じりながら、新しく生まれた神話の日本、それも生者の立ち入りが許されない幽世。それも、イザナミさんを取り戻せるかどうかの瀬戸際なんだ。
ここで、復活し終えたタングリスが出てきても事態を理解できずに混乱するだけだろう。
イザナギ:「いやあ、目出度いではありませんか。妻の玄室を目前にしてタングリスさんが蘇る、まさに吉兆ですよ(^▽^)」
なんと良い神さまだろう、自分と国の大事を目の前にして、異世界の兵士の復活を寿いでくださる。
ただし、めちゃくちゃ声を潜めてだけれど(^_^;)
ヒルデ:「すまない、イザナギ殿」
ヒルデも声を潜めてお詫びを言う。
イザナギ:「ええと……タングリスさんは骨と皮に肉が付いて……つまり、裸で復活するんですよね」
あ……男はイザナギさん一人だ。
「すこし戻ったところに小さな岩室がありました、そう、30mほど戻った左側です、こちらに向かって左側。全員で戻るわけにはいきませんが、テルさん、そこでタングリスさんの復活を見守ってあげてください」
よく考えている……タングニョーストに付き添えと言っても、元来はヒルデのガード、ヒルデから離れることはしない。
ヒルデが付き添えば、同じ理由でタングニョーストもイザナギさんの傍を離れざるを得ず、付き添いはわたし一人になる。ここに及んでヴァルキリーの者が付き添わないのはヒルデのプライドが許さない。
控えのガードは人数から言っても実力から言っても、わたし一人よりは、ヒルデとタングニョ-ストがいいに決まっている。
あれこれ勘案すると、わたしがタングリス付き添うのがベストなんだ。イザナギさんは、迷いも見せずに一瞬で判断したんだ。
タングニョースト:「衣類や装備は背嚢の中に入っている。復活してしばらくは体を動かせないと思う、よろしく頼む」
テル:「分かった、間に合うようなら駆けつけます」
イザナギ:「ありがとう、では、お互いの無事と成功を祈って……」
イザナギさんが出した手に三人の手を重ねて、わたしは背嚢を抱えて岩室のある場所まで戻った。
テル:「間に合えば、タングリス共々戻ってきます」
イザナギ:「ありがとう、でも、無理はしないでください」
押し入れほどの岩室に身を寄せると、背嚢の動きはいっそう繁くなってきて、わたしは背嚢の口を緩めた。
その直後、ニュルリと音がしたかと思うと、タングリスが出てきた。
ハーハーハーハーハー
膝を丸めたタングリスは、思いのほかに息が荒い。
ハーハーハーハーハー
そして、知っている彼女の姿よりも十歳近く若い。
ハーハーハーハーハー
その、予想よりも若い姿と、思いのほかの苦し気な様子に狼狽えたわたしは、用意していた「おかえり」という言葉もかけてやることが出来なかった。
☆ ステータス
HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
日本神話の神と人物 イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
222『タングリス復活』テル
「ここではまずいぞ」
ヒルデが眉を寄せた。
もっともだ。イザナミさんが居る玄室は、まだ少し距離があるというものの、一本道の羨道を挟んでいるだけだ。
カテンの森でトール元帥の非常食になってから、タングリスは骨と皮だけになってタングニョ-ストの背嚢に詰められたままだ。彼女の記憶はカテンの森で途切れている。
ここは、カテンの森があった『かの世界』ではない。新旧入り混じりながら、新しく生まれた神話の日本、それも生者の立ち入りが許されない幽世。それも、イザナミさんを取り戻せるかどうかの瀬戸際なんだ。
ここで、復活し終えたタングリスが出てきても事態を理解できずに混乱するだけだろう。
イザナギ:「いやあ、目出度いではありませんか。妻の玄室を目前にしてタングリスさんが蘇る、まさに吉兆ですよ(^▽^)」
なんと良い神さまだろう、自分と国の大事を目の前にして、異世界の兵士の復活を寿いでくださる。
ただし、めちゃくちゃ声を潜めてだけれど(^_^;)
ヒルデ:「すまない、イザナギ殿」
ヒルデも声を潜めてお詫びを言う。
イザナギ:「ええと……タングリスさんは骨と皮に肉が付いて……つまり、裸で復活するんですよね」
あ……男はイザナギさん一人だ。
「すこし戻ったところに小さな岩室がありました、そう、30mほど戻った左側です、こちらに向かって左側。全員で戻るわけにはいきませんが、テルさん、そこでタングリスさんの復活を見守ってあげてください」
よく考えている……タングニョーストに付き添えと言っても、元来はヒルデのガード、ヒルデから離れることはしない。
ヒルデが付き添えば、同じ理由でタングニョーストもイザナギさんの傍を離れざるを得ず、付き添いはわたし一人になる。ここに及んでヴァルキリーの者が付き添わないのはヒルデのプライドが許さない。
控えのガードは人数から言っても実力から言っても、わたし一人よりは、ヒルデとタングニョ-ストがいいに決まっている。
あれこれ勘案すると、わたしがタングリス付き添うのがベストなんだ。イザナギさんは、迷いも見せずに一瞬で判断したんだ。
タングニョースト:「衣類や装備は背嚢の中に入っている。復活してしばらくは体を動かせないと思う、よろしく頼む」
テル:「分かった、間に合うようなら駆けつけます」
イザナギ:「ありがとう、では、お互いの無事と成功を祈って……」
イザナギさんが出した手に三人の手を重ねて、わたしは背嚢を抱えて岩室のある場所まで戻った。
テル:「間に合えば、タングリス共々戻ってきます」
イザナギ:「ありがとう、でも、無理はしないでください」
押し入れほどの岩室に身を寄せると、背嚢の動きはいっそう繁くなってきて、わたしは背嚢の口を緩めた。
その直後、ニュルリと音がしたかと思うと、タングリスが出てきた。
ハーハーハーハーハー
膝を丸めたタングリスは、思いのほかに息が荒い。
ハーハーハーハーハー
そして、知っている彼女の姿よりも十歳近く若い。
ハーハーハーハーハー
その、予想よりも若い姿と、思いのほかの苦し気な様子に狼狽えたわたしは、用意していた「おかえり」という言葉もかけてやることが出来なかった。
☆ ステータス
HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
日本神話の神と人物 イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎 雪舟ねずみ 櫛名田比売 ヨネコ
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
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