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200『鬼ノ城・2』
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RE・かの世界この世界
200『鬼ノ城・2』テル
楼門を潜った城の中は…………なにも無かった。
なにも無いと言っても、次元の狭間というわけでもブラックホールというわけでもない。
ちゃんと草が萌えて、木々が茂り草木の間には岩が覗いて小道が巡っている。
しかし、その有りようは、楼門の外と変わるところが無い。
頂上ではあるが、整備された山中のハイキングコースと変わるところが無い。
城と呼ぶ限り、櫓や殿郭が朽ち果てても城の構えはうかがえるものだ。苔むした石垣であったり、基壇であったり堀の跡であったり。城としての構造を偲ばせるものがあるはずだが、それが、なにも無い。
要するに、山の頂上を鉢巻きのように土塁で囲んで、その内側を城と呼んでいるだけのようなのだ。
「ちぇ、なんか詐欺みてーじゃねえか。ゲートと塀だけがあって入ったらなんにもねえ遊園地みてえだぞ、ケイト」
桃太郎二号がくさる。
「おまえが言うな」
「ああん?」
「おまえだって」
「よせ、二人とも」
「これは避難用の城ですね」
「おまえも、そう思うか、タングニョースト」
「避難用の城?」
「ああ、桃太郎のように攻撃バ……ひと筋の者には分からんだろうが、世の中には攻められれば立て籠もって災いが過ぎるのを待つしかない者もいるんだ」
「そうなのか、ヒルデのねえちゃん?」
「ああ、そして、この地は豊かなんだろう。籠城のための食糧の備蓄も出来たろうし、援軍を呼ぶこともできたんだろう。ほんとうに貧しい者は、避難用の城など作らない」
「そうなのか……」
「ほんとうに弱い者、貧しい者は、ただ逃げるしかない。もっと弱い者は、ただ奪われて殺されるだけだ」
「えと……この奥に行くと、わずかですが井戸の跡や建物のあとがあります」
雪舟ねずみが奥を指さす。
「よし、行ってみますか」
イザナギさんが促して奥に進むと少し開けたところに出てきて、建物の礎石を示す表示がある。
水場や井戸、鍛冶場の跡はうかがえるが、防備の備えを偲ばせるものは見当たらない。
「やはり、戦いの形跡はないなあ」
「見ただけで分かんのか?」
「ああ、いいことなんだぞ、避難場所に使用の形跡が無いのは」
「北欧にも、いくつかこういうところがあるが、どこも焼け跡があって、骨がごろごろ転がっている」
「「ゲゲ」」
「イザナギ殿、あなたは良い国を造られたようだ」
「思い至りました……これは七世紀、百済救援のため差し向けた日本の艦隊が白村江の戦いで大敗を喫し、その後、唐・新羅の反攻を恐れて造られた山城の一つなのでしょう。幸い、海の外から攻められることも無く、いつの間にか忘れ去られた城郭なのでしょう」
「結果的には無駄になったかもしれないが、恐れを知るということは悪いことではない」
「ヴァルキリーの姫騎士にご理解いただければ光栄です」
「いやはや、我が父にもイザナギ殿の半分の分別があればと思います」
「オーディン殿ですね」
「父は最終戦争までやらないと気が済まない男……」
「ヒルデさん?」
「誰かいるぞ!」
ヒルデがイザナギさんを庇って飛び退る!
「なに奴!?」
我々も反射的に剣を抜きながら飛びのくと、岩陰から殺気を発して飛び出してくる者があった!
☆ ステータス
HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
ペギー 異世界の万屋
ユーリア ヘルム島の少女
その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
日本神話の神と人物 イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎
200『鬼ノ城・2』テル
楼門を潜った城の中は…………なにも無かった。
なにも無いと言っても、次元の狭間というわけでもブラックホールというわけでもない。
ちゃんと草が萌えて、木々が茂り草木の間には岩が覗いて小道が巡っている。
しかし、その有りようは、楼門の外と変わるところが無い。
頂上ではあるが、整備された山中のハイキングコースと変わるところが無い。
城と呼ぶ限り、櫓や殿郭が朽ち果てても城の構えはうかがえるものだ。苔むした石垣であったり、基壇であったり堀の跡であったり。城としての構造を偲ばせるものがあるはずだが、それが、なにも無い。
要するに、山の頂上を鉢巻きのように土塁で囲んで、その内側を城と呼んでいるだけのようなのだ。
「ちぇ、なんか詐欺みてーじゃねえか。ゲートと塀だけがあって入ったらなんにもねえ遊園地みてえだぞ、ケイト」
桃太郎二号がくさる。
「おまえが言うな」
「ああん?」
「おまえだって」
「よせ、二人とも」
「これは避難用の城ですね」
「おまえも、そう思うか、タングニョースト」
「避難用の城?」
「ああ、桃太郎のように攻撃バ……ひと筋の者には分からんだろうが、世の中には攻められれば立て籠もって災いが過ぎるのを待つしかない者もいるんだ」
「そうなのか、ヒルデのねえちゃん?」
「ああ、そして、この地は豊かなんだろう。籠城のための食糧の備蓄も出来たろうし、援軍を呼ぶこともできたんだろう。ほんとうに貧しい者は、避難用の城など作らない」
「そうなのか……」
「ほんとうに弱い者、貧しい者は、ただ逃げるしかない。もっと弱い者は、ただ奪われて殺されるだけだ」
「えと……この奥に行くと、わずかですが井戸の跡や建物のあとがあります」
雪舟ねずみが奥を指さす。
「よし、行ってみますか」
イザナギさんが促して奥に進むと少し開けたところに出てきて、建物の礎石を示す表示がある。
水場や井戸、鍛冶場の跡はうかがえるが、防備の備えを偲ばせるものは見当たらない。
「やはり、戦いの形跡はないなあ」
「見ただけで分かんのか?」
「ああ、いいことなんだぞ、避難場所に使用の形跡が無いのは」
「北欧にも、いくつかこういうところがあるが、どこも焼け跡があって、骨がごろごろ転がっている」
「「ゲゲ」」
「イザナギ殿、あなたは良い国を造られたようだ」
「思い至りました……これは七世紀、百済救援のため差し向けた日本の艦隊が白村江の戦いで大敗を喫し、その後、唐・新羅の反攻を恐れて造られた山城の一つなのでしょう。幸い、海の外から攻められることも無く、いつの間にか忘れ去られた城郭なのでしょう」
「結果的には無駄になったかもしれないが、恐れを知るということは悪いことではない」
「ヴァルキリーの姫騎士にご理解いただければ光栄です」
「いやはや、我が父にもイザナギ殿の半分の分別があればと思います」
「オーディン殿ですね」
「父は最終戦争までやらないと気が済まない男……」
「ヒルデさん?」
「誰かいるぞ!」
ヒルデがイザナギさんを庇って飛び退る!
「なに奴!?」
我々も反射的に剣を抜きながら飛びのくと、岩陰から殺気を発して飛び出してくる者があった!
☆ ステータス
HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
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その他 フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
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