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129『灌木林の中に美容院!』
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RE・かの世界この世界
129『灌木林の中に美容院!』テル
スプラッシュテール!
ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク!
数十回繰り返すと、ヒルデのスプラッシュテールは磨きがかかってきた。力を前方向に集中できるようになって啓開が効率的になってきたのだ。
最初は灌木林の天井を残すのみで、横方向には4メートルあまりもあって、我々三人とポチが通るには広すぎた。タングリスとわたしは、ソードや鉈で刈り残された足元の草木を刈る。ポチに至ってはすることが無くなって、三人の肩や背中に停まって「フレーフレー!」とか「ガーンバレ!」と応援するだけ。
啓開された道の断面は凸の字を逆さにした形で、横方向の出っ張りが無駄だった。
それが、前方向に集中できるようになって、横方向には1.5メートルに収まり、その分前方向に深く進めるようになってきた。
努力の甲斐あって開けたところに出てきた。
「もう、髪がビチョビチョのネチャネチャーーー!」
ヒルデの髪は獰猛な植物たちの樹液に染まって薄っすらと緑色。その水分で重くなって、ぶん回すことを止めると大雨に降られたライオンのタテガミのようになった。
「よく頑張られました、すこし休憩しましょう。姫、シャンプーさせていただきます」
「こんなところでシャンプーできるのか?」
「回復アイテムの中にシャンプーがあります……」
タングリスがホルダーにタッチすると、美容院のシャンプー台が出てきた。
「立派なのが出てきた!」
それだけではなかった、シャンプー台の周囲がムクムクと変化して本格的な美容院になった。
「おお、すごい!」
「なんと! ここまでのものとは思いませんでした!」
「ドライシャンプーくらいのものかと思っていた」
「あはは、これはいい! 一瞬の魔法でやるよりもリラックスできるし!」
グルグルグル(^▽^)/
腰掛けたスタイリングチェアをグルグル回して喜ぶヒルデ。
なんだか四五歳の幼児のようで、出会った頃のヒルデが懐かしい。
オーディンの姫騎士として、時に頼もしくもクソ生意気に見えることもあるが、ヒルデの本性は遊びたい盛りの少女なのかもしれない。
「美容師までは付いていないようだな」
「セルフサービスだよ、この方が面白いかも!」
「テル、姫が済んだら、わたしたちもやろう、気分転換になるぞ」
「あたしもやりたい!」
ポチも手をあげて交代でシャンプーすることにした。
「わたしは最後でいいぞ」
ヒルデが似合わぬ遠慮をする。
「そうですか、それではポチからやってやろう」
女と言うのは髪をいじるのが大好きだ。人をシャンプーしてやることも十分癒しになる。
ヒルデが遠慮したのが意外だったが、最後にやってみて分かった。
「なんで、こんなに長いんだあ!」
リラックスしたヒルデの髪は五メートルほどの長さになった。まるでラプンツェルだ。
「ふだんは短くしているのだ、フン!」
気合いを入れると普段の長さに縮む。
「おもしろーい!」
ポチが面白がって髪を体に巻き付ける。フンッ! ホー フンッ! ホー オッサンがメタボの腹をペコペコさせるように気合いに加減をくわえると、ヒルデの髪はピュルピュルと伸び縮みを繰り返す。夏祭りや縁日で売っている『ふきもどし』にそっくりだ……ん? なんで見たこともない『ふきもどし』を知っているんだ?
時どきおこるデジャブに思考をとられていると、周囲の様子が変わってきた。
美容院の床や壁がグニャグニャに波打ったかと思うと、美容院は袋状になって急速に縮みながら蠕動運動を始めた。
「しまった、罠だ!」
タングリスが叫んだ時には、いっそう激しく蠕動、グニャグニャはグチュグチュになり、ポッカリ穴の開いた床に全員揃って飲み込まれてしまった……。
☆ ステータス
HP:13000 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル) スプラッシュテール(ヒルデ)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル (寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ラーテの搭乗員 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 1/12サイズで人化している
ペギー 異世界の万屋
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
129『灌木林の中に美容院!』テル
スプラッシュテール!
ザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザクザク!
数十回繰り返すと、ヒルデのスプラッシュテールは磨きがかかってきた。力を前方向に集中できるようになって啓開が効率的になってきたのだ。
最初は灌木林の天井を残すのみで、横方向には4メートルあまりもあって、我々三人とポチが通るには広すぎた。タングリスとわたしは、ソードや鉈で刈り残された足元の草木を刈る。ポチに至ってはすることが無くなって、三人の肩や背中に停まって「フレーフレー!」とか「ガーンバレ!」と応援するだけ。
啓開された道の断面は凸の字を逆さにした形で、横方向の出っ張りが無駄だった。
それが、前方向に集中できるようになって、横方向には1.5メートルに収まり、その分前方向に深く進めるようになってきた。
努力の甲斐あって開けたところに出てきた。
「もう、髪がビチョビチョのネチャネチャーーー!」
ヒルデの髪は獰猛な植物たちの樹液に染まって薄っすらと緑色。その水分で重くなって、ぶん回すことを止めると大雨に降られたライオンのタテガミのようになった。
「よく頑張られました、すこし休憩しましょう。姫、シャンプーさせていただきます」
「こんなところでシャンプーできるのか?」
「回復アイテムの中にシャンプーがあります……」
タングリスがホルダーにタッチすると、美容院のシャンプー台が出てきた。
「立派なのが出てきた!」
それだけではなかった、シャンプー台の周囲がムクムクと変化して本格的な美容院になった。
「おお、すごい!」
「なんと! ここまでのものとは思いませんでした!」
「ドライシャンプーくらいのものかと思っていた」
「あはは、これはいい! 一瞬の魔法でやるよりもリラックスできるし!」
グルグルグル(^▽^)/
腰掛けたスタイリングチェアをグルグル回して喜ぶヒルデ。
なんだか四五歳の幼児のようで、出会った頃のヒルデが懐かしい。
オーディンの姫騎士として、時に頼もしくもクソ生意気に見えることもあるが、ヒルデの本性は遊びたい盛りの少女なのかもしれない。
「美容師までは付いていないようだな」
「セルフサービスだよ、この方が面白いかも!」
「テル、姫が済んだら、わたしたちもやろう、気分転換になるぞ」
「あたしもやりたい!」
ポチも手をあげて交代でシャンプーすることにした。
「わたしは最後でいいぞ」
ヒルデが似合わぬ遠慮をする。
「そうですか、それではポチからやってやろう」
女と言うのは髪をいじるのが大好きだ。人をシャンプーしてやることも十分癒しになる。
ヒルデが遠慮したのが意外だったが、最後にやってみて分かった。
「なんで、こんなに長いんだあ!」
リラックスしたヒルデの髪は五メートルほどの長さになった。まるでラプンツェルだ。
「ふだんは短くしているのだ、フン!」
気合いを入れると普段の長さに縮む。
「おもしろーい!」
ポチが面白がって髪を体に巻き付ける。フンッ! ホー フンッ! ホー オッサンがメタボの腹をペコペコさせるように気合いに加減をくわえると、ヒルデの髪はピュルピュルと伸び縮みを繰り返す。夏祭りや縁日で売っている『ふきもどし』にそっくりだ……ん? なんで見たこともない『ふきもどし』を知っているんだ?
時どきおこるデジャブに思考をとられていると、周囲の様子が変わってきた。
美容院の床や壁がグニャグニャに波打ったかと思うと、美容院は袋状になって急速に縮みながら蠕動運動を始めた。
「しまった、罠だ!」
タングリスが叫んだ時には、いっそう激しく蠕動、グニャグニャはグチュグチュになり、ポッカリ穴の開いた床に全員揃って飲み込まれてしまった……。
☆ ステータス
HP:13000 MP:180 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・900 マップ:12 金の針:1000 その他:∞ 所持金:8000万ギル(リボ払い残高無し)
装備:剣士の装備レベル38(勇者の剣) 弓兵の装備レベル32(勇者の弓)
憶えたオーバードライブ:シルバーヒール(ケイト) シルバースプラッシュ(テル) スプラッシュテール(ヒルデ)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル (寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼馴染 ペギーにケイトに変えられた
ブリュンヒルデ 主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ラーテの搭乗員 辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ シリンダーの幼体 1/12サイズで人化している
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