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97『白雪姫と七人の小人』 

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RE・かの世界この世界

97『白雪姫と七人の小人』テル 




 旅の目的はグラズヘイムに着くことだ。


 グラズヘイムにはブリュンヒルデの父である主神オーディンの居城ヴァルハラがある。

 ブリュンヒルデをムヘンの牢獄に繋いだのは、その父である主神オーディン。

 主神オーディンとブリュンヒルデには確執があって、それを解くのが目的のようなのだが、詳しくは分からない。

 もう一つの目的がある。シュタインドルフのヴァイゼンハオス(孤児院)で預かったロキを、その母の元に送り届けることだ。ロキの故郷はユグドラシル(世界樹)の根元にある。この世界の地理には詳しくないが、グラズヘイムとユグドラシルでは方角が違う。

 本来なら夕べのうちにノルデングランドホテルで決めるべきだった。

 だが、ヒルデの子どもっぽい寛ぎかたやタングリスの落ち着きぶりを見ていると「どっちにする?」とは聞けなかった。わたしもケイトも別の世界の人間なのだからな。

 
「ロキを送り届ける」

 
 いっしょに顔を洗いながらタングリスが一言言ってくれたのは好意なのだと思う。

「安心した」

 一言返事すると、わたしとタングリスは並んで歯を磨いた。洗面の前で横に並んでもタングリスの美しさが匂いたつ。

 同じ朝の光を浴びているのに、タングリスの方が10ルックスほど明るく感じてしまう。

「なにか?」

「すまん、見とれてしまった」

 正直に言った、どんな状況でも、タングリスは言葉を濁すことは好まないだろうと思ったからだ。

「そうか、テルが男であればなあ……いや、わたしが男であってもよかったか。テルもなかなかの女っぷりだぞ」

「「アハハハ」」

 二人で笑ってお仕舞にした。

 二人で軍服に着替えて、みんなを起こす。さすがに軍人で、軍服に着替えると、いつものタングリスに戻った。



 大きい分だけボロだった。



 乗船Schneewittchen(シュネーヴィットヘン)は艦齢五十年はあろうかというポンコツ輸送船だ。

 西部戦線が落ち着いて最初にヴァルハラに戻る便で、千人ほどの帰還兵と物資が積み込まれている。

「おっきい割には乗ってないねえ」

 ケイトが安心したように船を見上げる。

「あちこち痛んで、人が乗りこめるのは半分ほどしかないそうだ」

「シュネーヴィットヘンって、どういう意味?」

「白雪姫」

 一言で済ますと、タングリスはタラップを上っていく。笑ったり呆れたりしながら後に続く。

「毒リンゴ喰らって沈みそう……」

「沈むゆーな(;`O´)!」

「もう一人いたら、あたしら七人の小人だ!」

「ポチは0.1くらいだな」

「おっきさで判断しないで(`^´)!」

 アハハと笑って、一同でデッキに上がる。ちょうどデリックで四号が釣り上げられるところだ。

 シュルツェンを付けられたので一回り大きく見える。

「かぼちゃの馬車にしては武骨だなあ」

 ロキが知ったかぶりを言う。

「かぼちゃの馬車はシンデレラだろう」



 ボオオオオオオオオ!



 次の便船が迫っているシュネーヴィットヘンは盛大に汽笛を鳴らすと早々に出港した。



 ん、おまえは!?



 出港して間もなく、四号のハッチから顔を出したのは整備兵のヤコブだ。

「アハハ、わたしが付いて行けば七人の小人になるでしょ!」

 みんなが笑うなか、わたしとタングリスは渋い顔をしたままだった。




☆ ステータス

 HP:9000 MP:100 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・60 マップ:5 金の針:0 所持金:1500ギル(リポ払い残高34400ギル)
 装備:剣士の装備レベル25(トールソード) 弓兵の装備レベル25(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 
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