68 / 230
68『ローゼンシュタット・1』
しおりを挟む
RE・かの世界この世界
68『ローゼンシュタット・1』テル
どっちが早かったのか……
峠に差し掛かったところで「停まれ」とヒルデは命じた。
同時に四号は停車した。
当たり前なら、車長であるヒルデが命じて、即座に操縦手であるタングリスがブレーキを踏んだということなんだけど、すこし違うのだ。
タングリスは、自分の判断で停車している。同時にヒルデも判断して命じている。
四号は一匹の像が耳をそばだてるようにして停止した。
具体的な変異や脅威を感じたわけではない。戦慣れした二人が同時に反射的に反応したことに車内に緊張が走る。
五人の乗員は息を潜め、クリーチャーのポチもロキのポケットに潜り込んでしまった。
ブルブルブルブルブル…………マイバッハV12エンジンの音だけが車内に響く。
「エンジンを切れ」
「エンジン切ります」
ブリュン……
四号はヒルデの真名の前半分を呟くようにしてなりを潜めた。
「え? どうかした?」
付き合いの浅いロキには分からないようだ。
「Cアラームが反応したような気がしたんだ」
ヒルデはCアラームを見つめる。Cアラーム(クリーチャー警報装置)は砲塔の天井にぶら下げてあり、砲手であるわたしの視界にも入っているのだが、アラームの反応には気づかなかったというかアラームは反応していないと思う。装填手のケイトも怪訝な顔をしている。
「タングリスは?」
「いや……ちょっと気配がしたもんでな。気のせいでしょ、進めてよろしいか?」
「ああ、前進しよう」
ヨッコラショと動き出すと、バラの香りが車内にまで入り込んできた。
そして、峠が下り坂になった瞬間、バラの花で溢れかえったローゼンシュタットの町が広がってきた。
うわあ!
ロキが歓声をあげ、みんなも、それぞれのペリスコープや貼視孔から外を覗く。
荒れ地同然の草原や灌木ばかりの、ゴルフで言えばラフやベアグランドのようなところばかり走ってきたので、お花畑のようなローゼンシュタットの町はため息が出そうなほど新鮮だ。
パパパパーン!
町の入り口に差し掛かると可愛い花火が打ち上げられ、『熱烈歓迎ブリュンヒルデ御一行様!』の懸垂幕が教会の尖塔に掲げられた。
ハッチを開け、恐る恐る首を出す。
「ようこそ、お立ち寄りくださいました! ローゼンシュタットの町を代表いたしまして、町長のミュンツァーがご挨拶申し上げます!」
同時に、町のあちこちから大人たちや子どもたちが現れて、バラの花びらを撒きながら歓待してくれた。
「い、いやあ……(^_^;)」
戸惑ってしまった、我々は巡回警備の分遣隊ということになっている。いわば、ただのパトロールだ。
どこの世界にパトロールを町ぐるみで歓待するところがあるというのだ。それも本人には内緒の誕生パーティーを開くように息を潜めて?
ケイトとロキは無邪気に喜んでいるが、我々は当惑するばかりだ。
「承知しております、ですから、お名前の下の敬称は記しておりません」
……なるほど、ブリュンヒルデの下には『姫』だの『殿下』だのの敬称は記されていない。
「このようにバラ以外にはなんの取り柄もない町です。なにもございませんが、我が町、我が家と思ってお寛ぎください」
詮索も野暮なようで、我々は、とりあえずはミュンツァー町長らの歓待を素直に受けることにした。
☆ ステータス
HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
68『ローゼンシュタット・1』テル
どっちが早かったのか……
峠に差し掛かったところで「停まれ」とヒルデは命じた。
同時に四号は停車した。
当たり前なら、車長であるヒルデが命じて、即座に操縦手であるタングリスがブレーキを踏んだということなんだけど、すこし違うのだ。
タングリスは、自分の判断で停車している。同時にヒルデも判断して命じている。
四号は一匹の像が耳をそばだてるようにして停止した。
具体的な変異や脅威を感じたわけではない。戦慣れした二人が同時に反射的に反応したことに車内に緊張が走る。
五人の乗員は息を潜め、クリーチャーのポチもロキのポケットに潜り込んでしまった。
ブルブルブルブルブル…………マイバッハV12エンジンの音だけが車内に響く。
「エンジンを切れ」
「エンジン切ります」
ブリュン……
四号はヒルデの真名の前半分を呟くようにしてなりを潜めた。
「え? どうかした?」
付き合いの浅いロキには分からないようだ。
「Cアラームが反応したような気がしたんだ」
ヒルデはCアラームを見つめる。Cアラーム(クリーチャー警報装置)は砲塔の天井にぶら下げてあり、砲手であるわたしの視界にも入っているのだが、アラームの反応には気づかなかったというかアラームは反応していないと思う。装填手のケイトも怪訝な顔をしている。
「タングリスは?」
「いや……ちょっと気配がしたもんでな。気のせいでしょ、進めてよろしいか?」
「ああ、前進しよう」
ヨッコラショと動き出すと、バラの香りが車内にまで入り込んできた。
そして、峠が下り坂になった瞬間、バラの花で溢れかえったローゼンシュタットの町が広がってきた。
うわあ!
ロキが歓声をあげ、みんなも、それぞれのペリスコープや貼視孔から外を覗く。
荒れ地同然の草原や灌木ばかりの、ゴルフで言えばラフやベアグランドのようなところばかり走ってきたので、お花畑のようなローゼンシュタットの町はため息が出そうなほど新鮮だ。
パパパパーン!
町の入り口に差し掛かると可愛い花火が打ち上げられ、『熱烈歓迎ブリュンヒルデ御一行様!』の懸垂幕が教会の尖塔に掲げられた。
ハッチを開け、恐る恐る首を出す。
「ようこそ、お立ち寄りくださいました! ローゼンシュタットの町を代表いたしまして、町長のミュンツァーがご挨拶申し上げます!」
同時に、町のあちこちから大人たちや子どもたちが現れて、バラの花びらを撒きながら歓待してくれた。
「い、いやあ……(^_^;)」
戸惑ってしまった、我々は巡回警備の分遣隊ということになっている。いわば、ただのパトロールだ。
どこの世界にパトロールを町ぐるみで歓待するところがあるというのだ。それも本人には内緒の誕生パーティーを開くように息を潜めて?
ケイトとロキは無邪気に喜んでいるが、我々は当惑するばかりだ。
「承知しております、ですから、お名前の下の敬称は記しておりません」
……なるほど、ブリュンヒルデの下には『姫』だの『殿下』だのの敬称は記されていない。
「このようにバラ以外にはなんの取り柄もない町です。なにもございませんが、我が町、我が家と思ってお寛ぎください」
詮索も野暮なようで、我々は、とりあえずはミュンツァー町長らの歓待を素直に受けることにした。
☆ ステータス
HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
魔法少女マヂカ
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
マヂカは先の大戦で死力を尽くして戦ったが、破れて七十数年の休眠に入った。
やっと蘇って都立日暮里高校の二年B組に潜り込むマヂカ。今度は普通の人生を願ってやまない。
本人たちは普通と思っている、ちょっと変わった人々に関わっては事件に巻き込まれ、やがてマヂカは抜き差しならない戦いに巻き込まれていく。
マヂカの戦いは人類の未来をも変える……かもしれない。
プラネット・アース 〜地球を守るために小学生に巻き戻った僕と、その仲間たちの記録〜
ガトー
ファンタジー
まさに社畜!
内海達也(うつみたつや)26歳は
年明け2月以降〝全ての〟土日と引きかえに
正月休みをもぎ取る事に成功(←?)した。
夢の〝声〟に誘われるまま帰郷した達也。
ほんの思いつきで
〝懐しいあの山の頂きで初日の出を拝もうぜ登山〟
を計画するも〝旧友全員〟に断られる。
意地になり、1人寂しく山を登る達也。
しかし、彼は知らなかった。
〝来年の太陽〟が、もう昇らないという事を。
>>>
小説家になろう様・ノベルアップ+様でも公開中です。
〝大幅に修正中〟ですが、お話の流れは変わりません。
修正を終えた場合〝話数〟表示が消えます。
異世界転移したロボ娘が、バッテリーが尽きるまでの一ヶ月で世界を救っちゃう物語
京衛武百十
ファンタジー
<メイトギア>と呼ばれる人型ホームヘルパーロボット<タリアP55SI>は、旧式化したことでオーナーが最新の後継機に買い換えたため、データのすべてを新しい機体に引継ぎ、役目を終え、再資源化を迎えるだけになっていた。
なのに、彼女が次に起動した時にいたのは、まったく記憶にない中世ヨーロッパを思わせる世界だった。
要人警護にも使われるタリアP55SIは、その世界において、ありとあらゆるものを凌駕するスーパーパワーの持ち主。<魔法>と呼ばれる超常の力さえ、それが発動する前に動けて、生物には非常に強力な影響を与えるスタンすらロボットであるがゆえに効果がなく、彼女の前にはただ面倒臭いだけの大道芸に過ぎなかった。
<ロボット>というものを知らないその世界の人々は彼女を<救世主>を崇め、自分達を脅かす<魔物の王>の討伐を願うのであった。
斬られ役、異世界を征く!!
通 行人(とおり ゆきひと)
ファンタジー
剣の腕を見込まれ、復活した古の魔王を討伐する為に勇者として異世界に召喚された男、唐観武光(からみたけみつ)……
しかし、武光は勇者でも何でもない、斬られてばかりの時代劇俳優だった!!
とんだ勘違いで異世界に召喚された男は、果たして元の世界に帰る事が出来るのか!?
愛と!! 友情と!! 笑いで綴る!! 7000万パワーすっとこファンタジー、今ここに開幕ッッッ!!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる