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43『三度目はアメノワカヒコ』

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誤訳怪訳日本の神話

43『三度目はアメノワカヒコ』  




 二度目に遣わした次男のアメノホヒがオオクニヌシに取り込まれて家来のようになってしまいました。

 ミイラ取りがミイラになるを地でいったような失敗でした。

 高天原勢力の中つ国への浸透は一筋縄ではいかなかったことの表れだと思います。

 言い換えれば、アマテラスは、けして戦争などという力押しにすることなく、なるべく平和的に解決しようとしていたということでもあり、勢力的には拮抗していたことの現れだとも言えます。


 アマテラスはオモヒカネでは頼りないと思い、タカムスヒノカミ(高御産巣日神)も加えて相談し、天津国玉神(アマツクニタマ)の息子のアマノワカヒコ(天若日子)を遣わすことにします。

 タカムスヒはイザナギ・イザナミの前に現れた創造神で、姿形がありません。

 おそらくは『困った時の神頼み』ということを現しているのだと思います。

 オモヒカネは高天原の長老的存在ですが、云わば高天原市民(住人は全員神さま)の代表というか町内会長であります。

 その市民代表との協議でうまくいかなかったので、神さまの神さま的なタカムスヒノカミに相談=神さまのお告げを聞く的な描写になっているのだと思います。

 日本に限らないことですが、人の頭で判断できなくなったり、力が及ばなくなると、人は神頼みになります。

 桶狭間に今川義元を迎え撃つ織田信長は出撃直後に熱田神宮に立ち寄って祈願しています(軍勢を整える間もなく清須城を飛び出したので、祈願することで家来たちが揃うのを待っていたという説もあります。ただ、祈願そのものは真剣で、勝利した後、熱田神宮に様々に寄進しただけではなく、神宮の塀を立派な土壁に作り替え、今でも『信長の壁』として残っています。たしか日本三大土壁の一つになっています)

 明智光秀が謀反を起こす時も、愛宕神社に神頼みした上にお御籤まで引いた話は有名です。光秀が引いたお御籤は「凶」ばかりなので「吉」が出るまで引き直したと言われています。

 さて、アマノワカヒコ。

 アマテラスは、彼に天のマカコ弓と天のハハ矢を授けて「みごとにオオクニヌシをぶち殺してきなさい」と送り出します。

「承知つかまりました。このアメノワカヒコ、身命を賭してお役目を務めてまいります!」

 まるで大河ドラマの主人公が、乾坤一擲の出陣をするように地上に天下っていきます。もし、高天原にテレビがあったら、その出発式はCM抜きのライブ放送になって、視聴率の新記録になったでしょう。

 キャーーーー!!

 サグメという婆やを連れて地上に降り立ったアメノワカヒコは。降り立ったとたんに女性の悲鳴に驚きます。

「なにごとだ!?」

 マカコ弓にハハ矢をつがえて駆けつけますと、見目麗しい女の子が熊に襲われているところです!

「いま、助けるぞ!」

 アメノワカヒコは、叫ぶと同時にハハ矢を放って熊を退治します。

「サグメ、声を掛けてやってくれ(*゚O゚*)」

 女の子は熊に襲われて、衣服も乱れて気が動転している様子なので、まず、サグメに介抱させます。

「大丈夫、お嬢さん?」
「は、はい、お陰様で……お婆さん、わたしを助けてくださった、あのお方は?」
「あのお方は、高天原のアマテラスさまがお遣わしになったアメノワカヒコさまですよ。ワカヒコさま、こちらへ」
「ワカヒコです、もう、大丈夫ですか(#^_^#)?」
「はい、危ないところをお助け下さってありがとうございます。わたし、オオクニヌシの娘でシタテルヒメと申します」
「おお、オオクニヌシ殿のお嬢さんであったか!?」

 女の子は、オオクニヌシと宗像の女神との間に生まれたシタテルヒメであったのです。

 ワカヒコの降臨は、幸先よく転がり始めました……。

 

 
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