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82『ダブルブッキング』
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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
82『ダブルブッキング』オメガ
心理学部に入れそうな体験をしたぞ、それも一日に二つも!
羞恥心というのは、状況に寄って大きく変わる。これが一つ目。
たとえ新品であっても生パンを人に見られるのは恥ずかしい、程度の差はあるけど男女ともにそうだろう。
たとえ二年前に買ったものでも水着ならへっちゃら、これも程度の差はあるけども。
「腐れ童貞!」と妹に言われてもへっちゃらだが、「オメガ君童貞?」と女の子に聞かれたらアタフタしてしまうだろう。
サブカル研は、エロゲをやるのが部活なので、部活中は際どいことでもヘッチャラだ。
「前から疑問だったんですけど、男の人ってこんなに出るんですか?」
画面を指さしながらシグマが質問した。
画面は、主人公の想いが成就して、ヒロインと初めての真っ最中。モザイクを掛けられたソレからはおびただしいナニがほとばしっている。
「デフォルメだよ、個人差はあるけど3CCから6CCくらいって言われてるなあ……」
ノリスケがゲームの誤字脱字をチェックしながら答える。
「修正パッチ出てるのに、こんなにあるのかよ」
ノリスケのメモには二十を超える言葉が書かれている。
「多少のミスは愛嬌ってか、作り手の個性にも思えて微笑ましいんだけど、こうも多くちゃ興ざめになるよなあ……」
「そうだな、ここのCGは劇場アニメ並なのに、こんなところで作画ミスされると凹むよな……シグマ、なにやってんの?」
シグマはペットボトルのお茶をティースプーンに移してチビチビやっている。
「量を実感しようと思って、ティースプーン一杯が、だいたい3CCなんです……」
こういうこだわり方は邪道だとは思うんだけど、エロゲの楽しみ方は人それぞれというのが正しいあり方なので、感想は言っても批判はしない。
「最初から潮吹くなんて、このあとの描写とかどうするつもりなんだろうね」
「わーー派手に吹いてる、これも不思議なんですよね、ほんとに潮なんて吹くものなんでしょうか?」
「男に聞くか~」
「潮吹きのメカニズムとか成分とかはよく分かってないらしいけど、昔のお女郎さんなんかはテクニックでやれたらしいぞ」
うちは江戸時代からの置屋だったので、酔っぱらった祖父ちゃんから断片的には話を聞いている。
「いちど、それぞれが感動したHシーンの比較とかしてみませんか、あたし、名場面をUSBに残してるんです」
「すごいなあ、シグマは」
「探求心は大事だぞ」
シグマのUSBをパソコンに繋いで品評会になった。
「やっぱ、八方備男は絵師として一押しだな」
「ポニーさんの技巧も捨てがたい」
「ネコしゃんのエロカワイさが好きです」
モニター三台に次々と名場面を映して盛り上がる。
人間の記憶はカテゴリーごとに別々になっていて、別々な記憶を統合するのはむつかしい。これが二つ目。
風信子は茶道部の部長であり、サブカル研のメンバーでもある。
もっとも、サブカル研は俺たちに作法室を使わせてくれるための方便で、風信子自身がサブカルの活動に参加することはなかった。
だから、茶道部とサブカル研のことは、風信子の中では別のカテゴリーの中に入っていて、別々ゆえに、うっかり二つのスケジュールをダブルブッキングしてしまったのだ。
―― すみません、失礼しまーす ――
声と同時に作法室の襖が開かれ、俺たち三人はサブカルモードと日常モードの切り替えも出来ずにパニックになった。
え(꒪ཫ꒪; )ヤバイ!?
襖を開けて入って来たのは、小菊のクラスメートであり、ノリスケの彼女である増田さんだった。
俺は瞬時に理解した。
茶道部に入ったばかりの増田さんは茶道部の部活と思ってやってきたのだ。
風信子が二つの部活の活動日を間違って教えたのだ。
で、そんなことは増田さんには関係ない。
増田さんの目は、目の前の三つのモニターに釘付けになった。で……
キャーーー!
……………オワッテシマッタヾ(๑╹ヮ╹๑)ノ”。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ) 小菊のクラスメート
ビバさん(和田友子) 高校二年生 ペンネーム瑠璃波美美波璃瑠 菊乃の文学上のカタキ
82『ダブルブッキング』オメガ
心理学部に入れそうな体験をしたぞ、それも一日に二つも!
羞恥心というのは、状況に寄って大きく変わる。これが一つ目。
たとえ新品であっても生パンを人に見られるのは恥ずかしい、程度の差はあるけど男女ともにそうだろう。
たとえ二年前に買ったものでも水着ならへっちゃら、これも程度の差はあるけども。
「腐れ童貞!」と妹に言われてもへっちゃらだが、「オメガ君童貞?」と女の子に聞かれたらアタフタしてしまうだろう。
サブカル研は、エロゲをやるのが部活なので、部活中は際どいことでもヘッチャラだ。
「前から疑問だったんですけど、男の人ってこんなに出るんですか?」
画面を指さしながらシグマが質問した。
画面は、主人公の想いが成就して、ヒロインと初めての真っ最中。モザイクを掛けられたソレからはおびただしいナニがほとばしっている。
「デフォルメだよ、個人差はあるけど3CCから6CCくらいって言われてるなあ……」
ノリスケがゲームの誤字脱字をチェックしながら答える。
「修正パッチ出てるのに、こんなにあるのかよ」
ノリスケのメモには二十を超える言葉が書かれている。
「多少のミスは愛嬌ってか、作り手の個性にも思えて微笑ましいんだけど、こうも多くちゃ興ざめになるよなあ……」
「そうだな、ここのCGは劇場アニメ並なのに、こんなところで作画ミスされると凹むよな……シグマ、なにやってんの?」
シグマはペットボトルのお茶をティースプーンに移してチビチビやっている。
「量を実感しようと思って、ティースプーン一杯が、だいたい3CCなんです……」
こういうこだわり方は邪道だとは思うんだけど、エロゲの楽しみ方は人それぞれというのが正しいあり方なので、感想は言っても批判はしない。
「最初から潮吹くなんて、このあとの描写とかどうするつもりなんだろうね」
「わーー派手に吹いてる、これも不思議なんですよね、ほんとに潮なんて吹くものなんでしょうか?」
「男に聞くか~」
「潮吹きのメカニズムとか成分とかはよく分かってないらしいけど、昔のお女郎さんなんかはテクニックでやれたらしいぞ」
うちは江戸時代からの置屋だったので、酔っぱらった祖父ちゃんから断片的には話を聞いている。
「いちど、それぞれが感動したHシーンの比較とかしてみませんか、あたし、名場面をUSBに残してるんです」
「すごいなあ、シグマは」
「探求心は大事だぞ」
シグマのUSBをパソコンに繋いで品評会になった。
「やっぱ、八方備男は絵師として一押しだな」
「ポニーさんの技巧も捨てがたい」
「ネコしゃんのエロカワイさが好きです」
モニター三台に次々と名場面を映して盛り上がる。
人間の記憶はカテゴリーごとに別々になっていて、別々な記憶を統合するのはむつかしい。これが二つ目。
風信子は茶道部の部長であり、サブカル研のメンバーでもある。
もっとも、サブカル研は俺たちに作法室を使わせてくれるための方便で、風信子自身がサブカルの活動に参加することはなかった。
だから、茶道部とサブカル研のことは、風信子の中では別のカテゴリーの中に入っていて、別々ゆえに、うっかり二つのスケジュールをダブルブッキングしてしまったのだ。
―― すみません、失礼しまーす ――
声と同時に作法室の襖が開かれ、俺たち三人はサブカルモードと日常モードの切り替えも出来ずにパニックになった。
え(꒪ཫ꒪; )ヤバイ!?
襖を開けて入って来たのは、小菊のクラスメートであり、ノリスケの彼女である増田さんだった。
俺は瞬時に理解した。
茶道部に入ったばかりの増田さんは茶道部の部活と思ってやってきたのだ。
風信子が二つの部活の活動日を間違って教えたのだ。
で、そんなことは増田さんには関係ない。
増田さんの目は、目の前の三つのモニターに釘付けになった。で……
キャーーー!
……………オワッテシマッタヾ(๑╹ヮ╹๑)ノ”。
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妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
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風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
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