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67『御籠りの五日間・1』

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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

67『御籠りの五日間・1』オメガ 




 松ネエが刺された!

 メイド仲間のもなかさんとの買い物帰り、アキバ駅の改札近くで刺された!

 もなかさんの常連客がストーカーになって、女装してもなかさんにナイフを突きつけた。

 松ネエは、とっさに飛びかかって、結果的にはストーカーをやっつけたんだけど、もみ合っているうちにナイフが松ネエの腹に刺さってしまったんだ。


「あ、もう大丈夫だから」


 病室のベッドに寝てこそはいたけど、酸素マスクもせずに、いたって元気そうだったので拍子抜けがした。

「腹膜の手前でナイフが止まったから、傷の縫合しただけなのよ」

「「「「「よかったーーー」」」」」

 妻鹿家五人の声が揃った。

 祖父ちゃんの血圧がレッドゾーンまで上がったり、小菊が泣き崩れたり、いろいろあったけどな。

「いや、小梅(祖父ちゃんの妹、オレの叔母さん)が小松って名前つける時にな『ちょっとブルドーザーみたいじゃねえか』って言ったんだけどな。いやいや、頑丈に育ったんだ。いやいや小松でよかったよかった(^_^;)」

「あ~~なんか微妙にコンプレックスなんだけど、伯父さ~ん」

 アハハハハ

 俺たちが笑うと松ネエも笑う。

「アヒャヒャヒャ……ちょ、笑わせないでよ、傷に響くぅ(;'∀')」

 一時はどうなることかと思ったけどな、とにかく一安心。

 しかし、世の中、どこに災難が転がっているか分からないもんだ。



 で、連休のど真ん中、俺は奥多摩の山中に居る。



「助けると思って付いて来てぇ(>人<)!」

 風信子に頭を下げられたのが三日前。

 俺とシグマとノリスケ、それにノリスケの彼女の増田さんを道連れに『神楽坂神社』と大書されたワンボックスカーは、この奥多摩の奥つ城にたどり着く。

 ガルパンに出てくるような大吊橋が架かった渓谷を渡ると、その奥つ城が見えた。

 石垣の上は鬱蒼とした森になっており、その森の奥に『御神楽大神神社(みかぐらおおがみじんじゃ)』が見えてきた。

「……うちの御本家にあたる神社なの」

 そう聞かされていたが、これほどだとは思わなかった。

 建物が古いわけじゃない。拝殿も本殿も新築と言っていいほどに若やいでいる。

「式年造替(しきねんぞうたい)したところだから」

「「「シキネンゾータイ?」」」

「ええとね……」

 なんでも二十年に一度建てかえるそうで、神道の「清々しさが命」を地でいっている。

 造りは小ぶりな伊勢神宮を思わせる、なんというか弥生時代の高床式を、とことん完成形にしたようなもの。

 この新しさが古いと認識できるのは「やっぱり神楽坂のネイティブね」ということになるんだろうか。

 一の鳥居の前で車を降り、歩くこと五分ほどで二の鳥居。

 二の鳥居をくぐったところで待っていると、なんだか女王卑弥呼のような女の人が二人の巫女さんを連れて現れた。

「よくぞ参られました、では、この御籠りの五日間を心静かにお過ごしなさい」

 そう言うと卑弥呼さんはバサリバサリとゆかし気に幣(ぬさ)を振る。

 振られる幣の下でかしこまっていると腹に響く音がした。

 ズズズーーーーン

「つり橋が落ちました……五日後には渡れるようになります。お平らかになさい」

 ええ( ゚Д゚)!?

 ……そういうわけで、御籠りの五日間が始まったのだった(;'∀')。




☆彡 主な登場人物

妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
百地美子 (シグマ)     高校二年
妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
妻鹿幸一           祖父
妻鹿由紀夫          父
鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ)        小菊のクラスメート


 
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