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54『図書室で借りた本』

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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)

54『図書室で借りた本』小菊 




 街の図書館や学校の図書室が、まだアナログの図書カードを使っていた時代、昭和の終りか平成の始めのお話。

 読書大好き少女の月島雫は気が付いた……。

 自分が借りた本の図書カードにある名前。

 天沢聖司

 あれ?

 ほかの本の裏表紙をめくると、どの本の図書カードにも天沢聖司の名前がある。

 みんな、あたしより先に読んでる。

 天沢聖司……どんな人だろう?

 疑問と興味の湧いた雫は、いろいろなドタバタ事件の果てに天沢聖司に出くわした。

 天沢聖司は、それまで雫に意地悪ばかりしていた変わり者の男子、同じ中学校の三年生だった……。



 あたしだって素敵だと思ったジブリの名作アニメ。



 それに憧れて、増田さんは図書室で本を借りた……んだけどね。

 いまの図書室ってバーコード管理だから図書カードなんて無いのよね!

 言ってみりゃ無精卵みたいなもんで、いくら温めても「彼との出会い」というヒヨコは生まれっこない。

 そんなことは承知の上で、増田さんは、本を眺めてはニヤニヤしている。

「あーーーで、どんな本借りたの?」

「え、えとね……」

 増田さんは、書店の陳列のように五冊の本を並べる。

 トイレから戻ってみると、あいかわらずのニヤニヤだったので聞かざるを得なくなったのよ。

 本から顔あげた彼女と目が合ってしまったしね。

「えと、一押しは?」

「もちろん、これですよ!」

 その一冊だけカバー付きの表紙をめくると『耳をすませば』とあった。

 なんちゅうか、とてもベタな子だ(^_^;)。

「い、いや、これはですね(;'∀')」

 顔に出てしまったのか、増田さんは慌てて斜め上を見る。

 ちょっと意地悪を言ってみた。

「わたしも借りればよかったかな、オソロに五冊」

「ダメです!」

「え?」

「夕子、本は借りないんです」

「ゆうこ?」

「雫の親友ですよ! 原田夕子! ほら、カントリーロードの訳詩を頼むコーラス部の同級生! 杉村に思いを寄せてる!」

「あ…………ああ」

 そうか、雫が借りたのも五冊だったっけ?

 思い出したけど、ちょっと付いていけないテンションですよ(^_^;)

 まあ、期せずして同級生認定。よくできた過年度生よりもいい。

「あーーーとりあえず、教室に置いといたら(^_^;)」

 五時間目と六時間目は移動教室が重なってしまい、校内移動にしては「どーなんだ!」ってくらいの荷物なのだ。

「うーーーーーん」

 唸った後、五時間目六時間目のモロモロの間に、五冊とも挟んでしまった!

 ただでもスペシャルサンドイッチ状態なのに、どーすんだろって感じになってしまった。

「早く早く!」

 急かしたのが悪かったのか、二度ほどスペシャルサンドイッチを落としてしまう。

「ごめん、先に行ってぇ(#^o^#)」

 なんとか授業には間に合ったけどね。


 そして恐れていたことが起こってしまった。

 六時間目が終わって教室に戻って確認してみると、図書室で借りた本は四冊しかなかったのよ!




☆彡 主な登場人物

妻鹿雄一 (オメガ)     高校三年  
百地美子 (シグマ)     高校二年
妻鹿小菊           高校一年 オメガの妹 
妻鹿由紀夫          父
鈴木典亮 (ノリスケ)    高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子            高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ)  大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ       シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子)    雄一の担任
木田さん           二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ)        小菊のクラスメート


 
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