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43『甲府城・4・地下蔵』
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くノ一その一今のうち
43『甲府城・4・地下蔵』
広いと言っても地下のこと、単線のトンネルぐらいの、奥行きは三十メートルほど。
中央に通路が通っていて、両側は重いものを置いていたのか枕木状に石が並んでいる。
―― レールを撤去した複線トンネル? ――
―― いいや、石は三本ごとに間隔が広くなっている。三本の石を土台にして重いものを置いていたんだ。広い間隔はその重いものを動かすか中身を出し入れするための通路だ ――
そう言われて、三本を一組で見れば、図書館や大型書店の書架の配置にも見えてくる。本というのは書架にまとめると非常に重たいもので、床はしっかりと補強がしてあると聞いたことがある。
―― 本よりも重たいものだ。三本の石を敷いているのは隙間を作って空気の流れをよくして、湿気やカビから守る必要があった……おそらくは木箱に小分けした金銀の類だろう ――
―― 地下の金蔵? ――
―― 使われていたのは、相当の昔だ。石の上に物を置いた形跡がない ――
なるほど、触ってみると、石の上も通路の上も同じように埃が積もっている。
夜目を効かしているが、さすがに、それ以上のことは分からない。
―― 一段落したら灯りを入れて調べてみよう……いや、その時は学者の領分になっているかもしれないがな ――
―― 右奥に通路があります ――
―― 行ってみよう ――
不定形な岩肌に隠れるようにして通路が穿たれている。
潜ってみると、数メートルで開けて同じような地下トンネルに出た。
二人とも足が止まった。
地下トンネルは、さらに続いている気配なんだけど、直ぐには先が読めない。
―― いくつか枝分かれがあります ――
―― まるで松代大本営のようだ ――
なんですか?……聞き返す余裕はなかった、トンネルの向こうから、こちらを探る複数の気配がしてきた!
こういう時の判断は二つ。逃げるか戦うか。
―― 逃げる! ――
―― 応! ――
前を向いたまま通路を後ろ向きに飛び退る。
コンマ5秒で元の石室に戻ると、気配は集約されて覚えのある一人の気配になった。
「しばらくぶりだな、その。そして、ずいぶんの久しぶりだな、服部半三」
「猿飛佐助!」
「…………」
「半三、口をきいてくれてもいいじゃないか、古い付き合いだろ」
「…………」
「まあいい。いやはや感服したよ。ひょっとしたら、半三はそのを好きなんじゃないかって勘ぐってしまった」
「な(#;゚Д゚#)!?」
「忍び語りとはいえ、こんなに口数の多い半三は初めて見た。並の弟子になら一年分の量をそのに話しかけていたんじゃないか。なんだか微笑ましかったぞ」
「それは(#'∀'#)」
―― 心を動かすな! ――
―― すみません ――
「まあいい、二人が推測したように、ここは信玄の埋蔵金が収めてあった、一部だがな。ここにあった分はとっくに霧消してしまった。そっちの通路から奥は木下党が発見して活用させてもらった。これ以上の探索は無意味だ」
「フフ、木下の猿がすかしおる」
「やっと声が聴けて嬉しいよ、半三」
「すかすな。無意味なところに姿を現す猿飛ではなかろうが」
「もう一つ教えてやろう、あの本丸の謝恩碑。単なる戒めではないぞ」
「え?」
―― 聞くな! ――
「あれは、武田家の三つ者が大水害の洪水を封じた仕掛けなんだ。封を破れば、ただちに一万トンの水が、この坑道と地下蔵に流れ込む。そして、これが、そのスイッチだ」
「醤油さし!?」
佐助は懐から取り出したのは、ひょうたん型の醤油さしに似たスイッチだ。
なにか一講釈あると思ったら、佐助はいきなり、赤いスイッチを捻った!
ドオオオオオン!!
すごい爆発音がしたかと思うと、坑道の向こうからゾゾっと風が吹いてきて、埃と土埃の臭い、そして……
ドドドドドド!
かび臭い臭いと共に奔流となって水が迫って来る!
ドガ!
え?
課長代理は、いきなりわたしの鳩尾に突きをくらわして……目の前が真っ暗に…………
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
服部課長代理 服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
十五代目猿飛佐助 もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
43『甲府城・4・地下蔵』
広いと言っても地下のこと、単線のトンネルぐらいの、奥行きは三十メートルほど。
中央に通路が通っていて、両側は重いものを置いていたのか枕木状に石が並んでいる。
―― レールを撤去した複線トンネル? ――
―― いいや、石は三本ごとに間隔が広くなっている。三本の石を土台にして重いものを置いていたんだ。広い間隔はその重いものを動かすか中身を出し入れするための通路だ ――
そう言われて、三本を一組で見れば、図書館や大型書店の書架の配置にも見えてくる。本というのは書架にまとめると非常に重たいもので、床はしっかりと補強がしてあると聞いたことがある。
―― 本よりも重たいものだ。三本の石を敷いているのは隙間を作って空気の流れをよくして、湿気やカビから守る必要があった……おそらくは木箱に小分けした金銀の類だろう ――
―― 地下の金蔵? ――
―― 使われていたのは、相当の昔だ。石の上に物を置いた形跡がない ――
なるほど、触ってみると、石の上も通路の上も同じように埃が積もっている。
夜目を効かしているが、さすがに、それ以上のことは分からない。
―― 一段落したら灯りを入れて調べてみよう……いや、その時は学者の領分になっているかもしれないがな ――
―― 右奥に通路があります ――
―― 行ってみよう ――
不定形な岩肌に隠れるようにして通路が穿たれている。
潜ってみると、数メートルで開けて同じような地下トンネルに出た。
二人とも足が止まった。
地下トンネルは、さらに続いている気配なんだけど、直ぐには先が読めない。
―― いくつか枝分かれがあります ――
―― まるで松代大本営のようだ ――
なんですか?……聞き返す余裕はなかった、トンネルの向こうから、こちらを探る複数の気配がしてきた!
こういう時の判断は二つ。逃げるか戦うか。
―― 逃げる! ――
―― 応! ――
前を向いたまま通路を後ろ向きに飛び退る。
コンマ5秒で元の石室に戻ると、気配は集約されて覚えのある一人の気配になった。
「しばらくぶりだな、その。そして、ずいぶんの久しぶりだな、服部半三」
「猿飛佐助!」
「…………」
「半三、口をきいてくれてもいいじゃないか、古い付き合いだろ」
「…………」
「まあいい。いやはや感服したよ。ひょっとしたら、半三はそのを好きなんじゃないかって勘ぐってしまった」
「な(#;゚Д゚#)!?」
「忍び語りとはいえ、こんなに口数の多い半三は初めて見た。並の弟子になら一年分の量をそのに話しかけていたんじゃないか。なんだか微笑ましかったぞ」
「それは(#'∀'#)」
―― 心を動かすな! ――
―― すみません ――
「まあいい、二人が推測したように、ここは信玄の埋蔵金が収めてあった、一部だがな。ここにあった分はとっくに霧消してしまった。そっちの通路から奥は木下党が発見して活用させてもらった。これ以上の探索は無意味だ」
「フフ、木下の猿がすかしおる」
「やっと声が聴けて嬉しいよ、半三」
「すかすな。無意味なところに姿を現す猿飛ではなかろうが」
「もう一つ教えてやろう、あの本丸の謝恩碑。単なる戒めではないぞ」
「え?」
―― 聞くな! ――
「あれは、武田家の三つ者が大水害の洪水を封じた仕掛けなんだ。封を破れば、ただちに一万トンの水が、この坑道と地下蔵に流れ込む。そして、これが、そのスイッチだ」
「醤油さし!?」
佐助は懐から取り出したのは、ひょうたん型の醤油さしに似たスイッチだ。
なにか一講釈あると思ったら、佐助はいきなり、赤いスイッチを捻った!
ドオオオオオン!!
すごい爆発音がしたかと思うと、坑道の向こうからゾゾっと風が吹いてきて、埃と土埃の臭い、そして……
ドドドドドド!
かび臭い臭いと共に奔流となって水が迫って来る!
ドガ!
え?
課長代理は、いきなりわたしの鳩尾に突きをくらわして……目の前が真っ暗に…………
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母(下忍)
百地三太夫 百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
徳川社長 徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
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