17 / 97
16『丸の内 徳川物産』
しおりを挟む
くノ一その一今のうち
16『丸の内 徳川物産』
けっきょく学校の制服にした。
丸の内の狸オヤジの会社に行くのに、困った。何を着て行けばいいのかなって。
アルバイトとは云え、百地事務所を代表……なんかしてないんだけど、一員として行くわけだから、それなりのナリでなくっちゃと考えた。
だけど、百地の制服めいたものは、あのヨレヨレで石鹸くさいジャージしかない(;'∀')
だから、学校の制服。
女子高生の制服って、一種の迷彩服……て云うのは『リコリスリコイル』の中の台詞だけど、ほんとにそうだよね。
髪は自然なブラックで、スカートの丈が五センチくらい膝上で、それ以外はちゃんとしていたら、人畜無害の女子高生で、それだけで風景に溶け込める。
ところが、丸の内っていうのは、この女子高生迷彩がかえって目立っているような気がしないでもない。
今は、四時過ぎなんだけど、この時間て、日本中どこでも下校時間のピーク。
たいていの日本の街で高校生が歩いてる。帰宅組だったりバイトに向かうのだったり、仲間同士でブラブラだったり。
それが、この丸の内では見かけない。
ひょっとして、丸の内辺に高校って無いのか?
スマホを出してググってみる。
あ…………無いよ。
丸の内が頭に付く学校は、一つあるけど高知県。東京には一つもない。
千代田区には六つほど高校があるんだけども、丸の内には一つもない。
チ
思わず舌打ちしてしまう。
!!?
とたんに真後ろで人の気配がして、跳躍しながら振り返って、五メートルほども飛んでしまう。
「君は、どこの高校なのかなあ」
目だけ笑わない笑顔で警察官が、わたしを見てる。
「あ、え、バイトの面接に行くところ……です」
「そうか、お巡りさんは『どこの学校』かって聞いたんだけどね」
こいつ、あたりは柔らかいけど、疑りの眼差しだ。
それに……こいつ、すごくデキる。
わたしに気取られないで真後ろに立つなんて、並みの警察官にできる技じゃない。
「アハハ、ビビらせたのなら、ごめんなさいね。ここ、丸の内でしょ、皇居と東京駅の間だし、国会議事堂とかお役所も多いしね。ついね。警視庁は奈良県警みたいな失敗はできないしね」
「そ、そうですよね(^_^;)、いきなり声かけられちゃって、ビックリしちゃって。あ、生徒手帳見せますね」
背中のカバンを下ろして、胸元で開けようとしたら、すごい殺気!!
セイ!
今度は10メートルもジャンプ!
ニャンパラリンをきめて、着地すると、もう殺気はおろか、警察官の姿も無い。
チ…………なんなんだ、あいつは?
すると、幾人もの視線が足もとから突き刺さって来る。
しまった、わたしってば、信号機のポールの上までジャンプしてしまっていたんだ(;'∀')。
徳川物産
八階建て……そんなには高くないんだけど、戦前からあったんじゃないかと思われるビルは、ちょっとした神殿みたい。
で、まさか、その八階建てがまるまる徳川物産だとは思わなかった。
だって、わたしの生活圏にあるビルって、みんな雑居ビル。
区役所や図書館とか郵便局とかも合同ビルで、ビル一個まるまるっていうのは警察と消防署ぐらいのものだから、会社一個で一つのビルっていうのは見たことない。
それに『徳川物産』って看板が、真鍮製とはいえ、学校の看板よりも小さい。
普通は、入ったとこにテナントの看板が並んでて、共同の郵便受けとかがズラッと設置されてるって感じでしょ。
受付で挨拶すると、IDをくれて、四階の総務部に言ってくれと言われる。
たかがバイトだから、受付のうしろの1~5まである出入り業者用の、あるいは玄関払い用の応接の一つだと思ったから、なんというか、お城で云ったら本丸って感じ?
恐るおそる総務部のドアをノックして来意を伝えると、「あ、これは総務二課ですので、八階の総務二課の部屋になります。ご案内しますので、こちらにどうぞ」
ちょっとレトロな事務服のおねえさんが案内してくれる。
終始穏やかに微笑んでるんだけど、余計な話はしませんというオーラ出まくりで、八階の総務二課へ。
チーン
事務服オネエサンとエレベーター。
コーン コーン コーン
天井の高い廊下に事務服おねえさんのパンプスが響く。
仰いだ部屋の表示は……社長室!?
なんと、総務二課は社長室の隣だ。
「はい、総務二課は社長室直属の配置になっています。少々お待ちください」
そう言って、総務二課に入って行って二十秒ほどだれかと話して出てきた。
「どうぞ、ここからは総務二課の者がお相手いたします」
「は、はひ」
なんか緊張して間抜けた応えをしてしまう。
「失礼します、百地芸能事務所から参りました、風魔そのと申します」
「ご苦労で御座った、暫時、それにてお待ちくだされ」
まるで『吠えよ剣!』の台詞みたいな返事。
顔を上げると……そいつはロボットだった!
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母
百地三太夫 百地芸能事務所社長 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
16『丸の内 徳川物産』
けっきょく学校の制服にした。
丸の内の狸オヤジの会社に行くのに、困った。何を着て行けばいいのかなって。
アルバイトとは云え、百地事務所を代表……なんかしてないんだけど、一員として行くわけだから、それなりのナリでなくっちゃと考えた。
だけど、百地の制服めいたものは、あのヨレヨレで石鹸くさいジャージしかない(;'∀')
だから、学校の制服。
女子高生の制服って、一種の迷彩服……て云うのは『リコリスリコイル』の中の台詞だけど、ほんとにそうだよね。
髪は自然なブラックで、スカートの丈が五センチくらい膝上で、それ以外はちゃんとしていたら、人畜無害の女子高生で、それだけで風景に溶け込める。
ところが、丸の内っていうのは、この女子高生迷彩がかえって目立っているような気がしないでもない。
今は、四時過ぎなんだけど、この時間て、日本中どこでも下校時間のピーク。
たいていの日本の街で高校生が歩いてる。帰宅組だったりバイトに向かうのだったり、仲間同士でブラブラだったり。
それが、この丸の内では見かけない。
ひょっとして、丸の内辺に高校って無いのか?
スマホを出してググってみる。
あ…………無いよ。
丸の内が頭に付く学校は、一つあるけど高知県。東京には一つもない。
千代田区には六つほど高校があるんだけども、丸の内には一つもない。
チ
思わず舌打ちしてしまう。
!!?
とたんに真後ろで人の気配がして、跳躍しながら振り返って、五メートルほども飛んでしまう。
「君は、どこの高校なのかなあ」
目だけ笑わない笑顔で警察官が、わたしを見てる。
「あ、え、バイトの面接に行くところ……です」
「そうか、お巡りさんは『どこの学校』かって聞いたんだけどね」
こいつ、あたりは柔らかいけど、疑りの眼差しだ。
それに……こいつ、すごくデキる。
わたしに気取られないで真後ろに立つなんて、並みの警察官にできる技じゃない。
「アハハ、ビビらせたのなら、ごめんなさいね。ここ、丸の内でしょ、皇居と東京駅の間だし、国会議事堂とかお役所も多いしね。ついね。警視庁は奈良県警みたいな失敗はできないしね」
「そ、そうですよね(^_^;)、いきなり声かけられちゃって、ビックリしちゃって。あ、生徒手帳見せますね」
背中のカバンを下ろして、胸元で開けようとしたら、すごい殺気!!
セイ!
今度は10メートルもジャンプ!
ニャンパラリンをきめて、着地すると、もう殺気はおろか、警察官の姿も無い。
チ…………なんなんだ、あいつは?
すると、幾人もの視線が足もとから突き刺さって来る。
しまった、わたしってば、信号機のポールの上までジャンプしてしまっていたんだ(;'∀')。
徳川物産
八階建て……そんなには高くないんだけど、戦前からあったんじゃないかと思われるビルは、ちょっとした神殿みたい。
で、まさか、その八階建てがまるまる徳川物産だとは思わなかった。
だって、わたしの生活圏にあるビルって、みんな雑居ビル。
区役所や図書館とか郵便局とかも合同ビルで、ビル一個まるまるっていうのは警察と消防署ぐらいのものだから、会社一個で一つのビルっていうのは見たことない。
それに『徳川物産』って看板が、真鍮製とはいえ、学校の看板よりも小さい。
普通は、入ったとこにテナントの看板が並んでて、共同の郵便受けとかがズラッと設置されてるって感じでしょ。
受付で挨拶すると、IDをくれて、四階の総務部に言ってくれと言われる。
たかがバイトだから、受付のうしろの1~5まである出入り業者用の、あるいは玄関払い用の応接の一つだと思ったから、なんというか、お城で云ったら本丸って感じ?
恐るおそる総務部のドアをノックして来意を伝えると、「あ、これは総務二課ですので、八階の総務二課の部屋になります。ご案内しますので、こちらにどうぞ」
ちょっとレトロな事務服のおねえさんが案内してくれる。
終始穏やかに微笑んでるんだけど、余計な話はしませんというオーラ出まくりで、八階の総務二課へ。
チーン
事務服オネエサンとエレベーター。
コーン コーン コーン
天井の高い廊下に事務服おねえさんのパンプスが響く。
仰いだ部屋の表示は……社長室!?
なんと、総務二課は社長室の隣だ。
「はい、総務二課は社長室直属の配置になっています。少々お待ちください」
そう言って、総務二課に入って行って二十秒ほどだれかと話して出てきた。
「どうぞ、ここからは総務二課の者がお相手いたします」
「は、はひ」
なんか緊張して間抜けた応えをしてしまう。
「失礼します、百地芸能事務所から参りました、風魔そのと申します」
「ご苦労で御座った、暫時、それにてお待ちくだされ」
まるで『吠えよ剣!』の台詞みたいな返事。
顔を上げると……そいつはロボットだった!
☆彡 主な登場人物
風間 その 高校三年生 世襲名・そのいち
風間 その子 風間そのの祖母
百地三太夫 百地芸能事務所社長 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
鈴木 まあや アイドル女優
忍冬堂 百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
巡(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
時司巡(ときつかさめぐり)は制服にほれ込んで宮之森高校を受験して合格するが、その年度から制服が改定されてしまう。
すっかり入学する意欲を失った巡は、定年退職後の再任用も終わった元魔法少女の祖母に相談。
「それなら、古い制服だったころの宮の森に通ってみればぁ?」「え、そんなことできるの!?」
お祖母ちゃんは言う「わたしの通っていた学校だし、魔法少女でもあったし、なんとかなるよ」
「だいじょうぶ?」
「任しとき……あ、ちょっと古い時代になってしまった」
「ええ!?」
巡は、なんと50年以上も昔の宮之森高校に通うことになった!
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
やくもあやかし物語
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
やくもが越してきたのは、お母さんの実家。お父さんは居ないけど、そこの事情は察してください。
お母さんの実家も周囲の家も百坪はあろうかというお屋敷が多い。
家は一丁目で、通う中学校は三丁目。途中の二丁目には百メートルほどの坂道が合って、下っていくと二百メートルほどの遠回りになる。
途中のお屋敷の庭を通してもらえれば近道になるんだけど、人もお屋敷も苦手なやくもは坂道を遠回りしていくしかないんだけどね……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる