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64『オーマイガー!?』
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妹が憎たらしいのには訳がある
64『オーマイガー!?』
それから、表面上は穏やかな学生生活が続いた。
裏ではいろいろあった。
春奈の父親は、C国のハニートラップ、それもロボットに騙され情報を流し続けたということで、他社や自社の重役や役人達といっしょに社会的に抹殺され、今は長崎に帰って妻と少しずつ「夫婦」に戻りつつあった。
春奈は、これを機に東京での学生生活に本腰を入れはじめた。むろん宗司のサポートがあってのことだけど。
日本政府とC国の関係は一触即発の状態になり、グノーシスの仲間割れも休戦状態で、隣の木下クンのところからも、日本とC国の腹のさぐり合い以上の情報は流れてこず、緊張を孕んだ平和が続いた。
そんな中、W大の理工学部と自動車部の肝いりで自動車ショーが開かれた。
「足としての車 足は第二の頭脳である」
もっともらしいコンセプトで、自動車部が持っているガラクタ同然のクラシックカーに理工学部が適当な解説をつけ、お祭り騒ぎをやろうという学生らしい企みであった。
むろん参加料はタダだけど、自動車メーカーや玩具メーカーとタイアップしてブースを出してもらい、一稼ぎしようという目論見。
企画は、我らが「となりの木下クン」で、彼自身ネット上にブースを設け、中古車から、クラシックカーのパーツ販売の仲介までやって稼いでいた。
宗司クンは、スーパーの知識と料理の腕をを生かし、友人とB級グルメの店を出して楽しんでいる。
宗司クンの出店は、いわば客寄せで、ほとんど儲けはないが、趣味人として楽しみ、春奈も喜々としてウェイトレスをしている。
「この車かわいいね」
優奈が一台のクラシックカーに目を付けた。ホンダN360Zと表記された車は「古典的未来の魅力」というキャプションが付いていた。
百年前の車だけど、21世紀に対する無垢なあこがれがフォルムに現れていた。21世紀を感じさせるフロントグリル、コックピットと言っていいような乗車スペース。大胆な黒縁のハッチバック。切り落としたような車体後部。
「極東戦争の前にヒットした『オーマイガー!!』に出てくる車だよ」
「主人公のマドカが『ファルコンZ』って名前付けて、イケメンの外人講師乗せたり、過去の世界に戻って、高校生時代の母親を助けたりするんだよね」
優子は、頭脳の元になっている幸子か優奈が好きだったんだろう、『オーマイガー!!』の映画への思い入れと知識に詳しい。
「よかったら試乗してください。オートでしか運転できませんが、時代の雰囲気は満喫していただけます」
W大生にしては可愛いミニスカ・キャンギャルの女の子が、にこやかにドアを開けてくれた。
「ウワー、カッチョイイ!」
その一言で、わたしは優子といっしょに「コックピット」に乗り込んだ。
「うわー、これ音声認識もしないんだ!」
「はい、三世代前の手動入力になっています」
キャンギャルの子が、目をへの字にして、興味をそそる。
「じゃ、神楽坂に出て、渋谷……」
優子が、山手線の内側をなぞるようにコース設定をした。
「ウウ、たまらん、このアナログ感!」
「ファルコンZ、しゅっぱーつ!」
優子が、映画のマドカのように声を上げた。
車が一般道に出るまで、キャンギャルの子は笑顔で手を振っ見送ってくれた。
車が見えなくなると、キャンギャルはへの字目のままブースの陰でミニのコスを脱ぎ捨て、隠しておいた国防軍のレンジャーのユニホ-ムになり、迎えに来た高機動車に乗り込んだ。
木下クンも、宗司も春奈も、会場の誰も気づかなかった……。
64『オーマイガー!?』
それから、表面上は穏やかな学生生活が続いた。
裏ではいろいろあった。
春奈の父親は、C国のハニートラップ、それもロボットに騙され情報を流し続けたということで、他社や自社の重役や役人達といっしょに社会的に抹殺され、今は長崎に帰って妻と少しずつ「夫婦」に戻りつつあった。
春奈は、これを機に東京での学生生活に本腰を入れはじめた。むろん宗司のサポートがあってのことだけど。
日本政府とC国の関係は一触即発の状態になり、グノーシスの仲間割れも休戦状態で、隣の木下クンのところからも、日本とC国の腹のさぐり合い以上の情報は流れてこず、緊張を孕んだ平和が続いた。
そんな中、W大の理工学部と自動車部の肝いりで自動車ショーが開かれた。
「足としての車 足は第二の頭脳である」
もっともらしいコンセプトで、自動車部が持っているガラクタ同然のクラシックカーに理工学部が適当な解説をつけ、お祭り騒ぎをやろうという学生らしい企みであった。
むろん参加料はタダだけど、自動車メーカーや玩具メーカーとタイアップしてブースを出してもらい、一稼ぎしようという目論見。
企画は、我らが「となりの木下クン」で、彼自身ネット上にブースを設け、中古車から、クラシックカーのパーツ販売の仲介までやって稼いでいた。
宗司クンは、スーパーの知識と料理の腕をを生かし、友人とB級グルメの店を出して楽しんでいる。
宗司クンの出店は、いわば客寄せで、ほとんど儲けはないが、趣味人として楽しみ、春奈も喜々としてウェイトレスをしている。
「この車かわいいね」
優奈が一台のクラシックカーに目を付けた。ホンダN360Zと表記された車は「古典的未来の魅力」というキャプションが付いていた。
百年前の車だけど、21世紀に対する無垢なあこがれがフォルムに現れていた。21世紀を感じさせるフロントグリル、コックピットと言っていいような乗車スペース。大胆な黒縁のハッチバック。切り落としたような車体後部。
「極東戦争の前にヒットした『オーマイガー!!』に出てくる車だよ」
「主人公のマドカが『ファルコンZ』って名前付けて、イケメンの外人講師乗せたり、過去の世界に戻って、高校生時代の母親を助けたりするんだよね」
優子は、頭脳の元になっている幸子か優奈が好きだったんだろう、『オーマイガー!!』の映画への思い入れと知識に詳しい。
「よかったら試乗してください。オートでしか運転できませんが、時代の雰囲気は満喫していただけます」
W大生にしては可愛いミニスカ・キャンギャルの女の子が、にこやかにドアを開けてくれた。
「ウワー、カッチョイイ!」
その一言で、わたしは優子といっしょに「コックピット」に乗り込んだ。
「うわー、これ音声認識もしないんだ!」
「はい、三世代前の手動入力になっています」
キャンギャルの子が、目をへの字にして、興味をそそる。
「じゃ、神楽坂に出て、渋谷……」
優子が、山手線の内側をなぞるようにコース設定をした。
「ウウ、たまらん、このアナログ感!」
「ファルコンZ、しゅっぱーつ!」
優子が、映画のマドカのように声を上げた。
車が一般道に出るまで、キャンギャルの子は笑顔で手を振っ見送ってくれた。
車が見えなくなると、キャンギャルはへの字目のままブースの陰でミニのコスを脱ぎ捨て、隠しておいた国防軍のレンジャーのユニホ-ムになり、迎えに来た高機動車に乗り込んだ。
木下クンも、宗司も春奈も、会場の誰も気づかなかった……。
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