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62『春奈の秘密・2』
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妹が憎たらしいのには訳がある
62『春奈の秘密・2』
三十くらいの女がエレベーターで降りてくる。
女がマンションから出てくると、十秒数えて優子とわたしは道を分かれて追跡した。
わたしたち義体にはGPS機能が付いているので相手に気づかれることはない。道の分かれ目で合流し、追跡を交代すれば、よほど慣れたスパイや、アナライザーロボットや義体でも、二回まではごまかせる。
女は野川沿いの緑地帯に入っていった。顔見知りなんだろう、犬を散歩させているオバサンに声を掛けて、犬とじゃれ合った後、ベンチに座った。
少し離れたベンチで、女のパッシブスキャンをやる。
体から放出される体温、水蒸気、呼気、脳波、電波などから、相手が人間かロボットか義体なのかを見分けるのだ。
「……人間?」
「確かめよう」
ベンチに座ったまま優子と石の投げっこをする。
優子が軽く投げた石ころを、わたしが別の石で当てるという無邪気な遊びである。
ほんの数メートルの距離だけど、女子高生がじゃれているぐらいにしか見えない。他にもキャッチボールをやったり、フリスビーで遊んでいる家族連れがいるので目立たないのだ。
「真由、いくよ」
優子が、小さく呟く。
「OK……」
パシ
わたしは二百キロのスピードで小石を投げ、優子の小石をはじき飛ばした。はじかれた石は、まっすぐに女の顔に向かい、女は二百キロで飛んできた小石を軽々とかわすと、アクティブレーダー波を発した。
――義体かロボットだ――
優子は、すぐにジャミングをかけ、わたしは小石をキャッチボールをしている親子のボールに当て、ボールを緩く女の足もとに転がした。
「どうも、すみません」
「いいえ、ボク、投げるわよ」
女は正確に少年のグロ-ブに投げてやった。
その隙に、わたしと優子は女の後ろに回り、アクティブスキャンをかけた。
――ロボットだ!――
女が行動を起こす前に、耳の後ろのコネクターに手を当てると、CPをブロックし、アイホンに見せかけたケーブルを繋いだ。
「C国の最新型ね。並のスキャンじゃ人間と区別つかない」
「メモリーにロックされてるのがある」
「……待って、下手に解除したら自爆するわ」
「そんなドジはしない……わたしの勘に狂いがなければ……ほら、ロックが解けた」
「どうやったの?」
「ダミーのM重工の情報を流した……大当たり。M重工のロボット技術の機密でいっぱい」
「産業スパイ?」
「兼秘密工作員。奥にまだロックのかかったのがある。このキーは軍事用だわ」
「いっそ、破壊する?」
「もっと、いい手がある……」
「なにしてんの?」
「こいつのCPにウィルスを送り込んだ。掴んだ情報に微妙な係数がかかるようにね。C国が気づくのに半年、解析に三ヵ月はかかる」
「でも、八か月で、バレちゃうじゃん」
「解析したらね……多摩で出会った二世代前のロボットのスペックが出るようにしといた」
「真由って優秀!」
「優子にも同じスキルがあるんだけど、優奈の脳細胞生かすのにCPに負担かけられないからね……」
「ごめん」
「それよりも、M重工の技師やらエライサンの秘書やら愛人に五体、同じのが送り込まれてる」
「機密情報ダダ洩れじゃん!」
「ハニートラップに特化したロボット……意外と間が抜けてる。五体でネットワークしてる。このウィルスは自動的に、他のにも感染するね」
そこで、わたしたちはロボットを解放した。ロボットは浮気相手の娘が来たので、避難した記憶しか残っていない。
この間、わずかに二秒。緑地帯に居る人たちは、貧血の女性を女子高生が労わっていたとしか見えていないだろう。
春奈には悪いけど、もう少し親の不倫に悩んでもらわなければならない。春奈のフォローのためにマンションに戻った……。
62『春奈の秘密・2』
三十くらいの女がエレベーターで降りてくる。
女がマンションから出てくると、十秒数えて優子とわたしは道を分かれて追跡した。
わたしたち義体にはGPS機能が付いているので相手に気づかれることはない。道の分かれ目で合流し、追跡を交代すれば、よほど慣れたスパイや、アナライザーロボットや義体でも、二回まではごまかせる。
女は野川沿いの緑地帯に入っていった。顔見知りなんだろう、犬を散歩させているオバサンに声を掛けて、犬とじゃれ合った後、ベンチに座った。
少し離れたベンチで、女のパッシブスキャンをやる。
体から放出される体温、水蒸気、呼気、脳波、電波などから、相手が人間かロボットか義体なのかを見分けるのだ。
「……人間?」
「確かめよう」
ベンチに座ったまま優子と石の投げっこをする。
優子が軽く投げた石ころを、わたしが別の石で当てるという無邪気な遊びである。
ほんの数メートルの距離だけど、女子高生がじゃれているぐらいにしか見えない。他にもキャッチボールをやったり、フリスビーで遊んでいる家族連れがいるので目立たないのだ。
「真由、いくよ」
優子が、小さく呟く。
「OK……」
パシ
わたしは二百キロのスピードで小石を投げ、優子の小石をはじき飛ばした。はじかれた石は、まっすぐに女の顔に向かい、女は二百キロで飛んできた小石を軽々とかわすと、アクティブレーダー波を発した。
――義体かロボットだ――
優子は、すぐにジャミングをかけ、わたしは小石をキャッチボールをしている親子のボールに当て、ボールを緩く女の足もとに転がした。
「どうも、すみません」
「いいえ、ボク、投げるわよ」
女は正確に少年のグロ-ブに投げてやった。
その隙に、わたしと優子は女の後ろに回り、アクティブスキャンをかけた。
――ロボットだ!――
女が行動を起こす前に、耳の後ろのコネクターに手を当てると、CPをブロックし、アイホンに見せかけたケーブルを繋いだ。
「C国の最新型ね。並のスキャンじゃ人間と区別つかない」
「メモリーにロックされてるのがある」
「……待って、下手に解除したら自爆するわ」
「そんなドジはしない……わたしの勘に狂いがなければ……ほら、ロックが解けた」
「どうやったの?」
「ダミーのM重工の情報を流した……大当たり。M重工のロボット技術の機密でいっぱい」
「産業スパイ?」
「兼秘密工作員。奥にまだロックのかかったのがある。このキーは軍事用だわ」
「いっそ、破壊する?」
「もっと、いい手がある……」
「なにしてんの?」
「こいつのCPにウィルスを送り込んだ。掴んだ情報に微妙な係数がかかるようにね。C国が気づくのに半年、解析に三ヵ月はかかる」
「でも、八か月で、バレちゃうじゃん」
「解析したらね……多摩で出会った二世代前のロボットのスペックが出るようにしといた」
「真由って優秀!」
「優子にも同じスキルがあるんだけど、優奈の脳細胞生かすのにCPに負担かけられないからね……」
「ごめん」
「それよりも、M重工の技師やらエライサンの秘書やら愛人に五体、同じのが送り込まれてる」
「機密情報ダダ洩れじゃん!」
「ハニートラップに特化したロボット……意外と間が抜けてる。五体でネットワークしてる。このウィルスは自動的に、他のにも感染するね」
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この間、わずかに二秒。緑地帯に居る人たちは、貧血の女性を女子高生が労わっていたとしか見えていないだろう。
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