47 / 68
47『優奈と幸子の二転三転』
しおりを挟む
妹が憎たらしいのには訳がある
47『優奈と幸子の二転三転』
そこにはねねちゃんが立っていた……。
「これ、警察病院からもらってきたの。亡くなる前にママが、一時的に元気になった時の薬剤」
「これは……」
そうだ、里中ミッション・4でねねちゃんの義体にインストールされた俺が里中リサを看取った時のものだ。まだ残っていたんだ。
「優奈ちゃんにも効くわ、元々は、戦闘中に負傷した者を一時的に健常にもどし、あとで治療するためのものだから」
「じゃ、優奈ちゃん出場できるのね!」
みんなが喜んだ。幸子も喜んだが、仕様書を読んで顔が曇った。
「心臓に負担が……15%の確率で効かないこともあるのね」
「……ええ、それに状態によっては、完全に戻らないこともあるわ。使うかどうかは、あなた達次第。じゃ、明日は会場で見てるわ。チサちゃんも来るんでしょ?」
「うん、えと……D列の35番。みんなそのへんよ」
「わたしも、そのあたり確保しとくわ」
「でも、予約いっぱいよ」
――甲殻機動隊に不可能はないの(^▽^)――
高機動車のハナちゃんが、車体をガシャガシャ揺すって笑った。
「優奈ちゃんも飲む?」
開演前、みんなで特製のジンジャエールをまわした。よく冷えていて、喉がスッキリする。
みんなのスッキリ顔を見て、自分も飲みたくなったのであろう、優奈は進んで手を出した。
「ぼんど、ズッギリじまず……」
「酷い声だなあ」
「あい、おどなじぐ、ごごで見でまず( ;∀;)」
「じゃ、わたしリハーサル室行ってるね。またあとで見に来るからね」
幸子と俺はリハーサル室へ向かった。
そして蟹江先生と加藤先輩には、ジンジャエールに薬を混ぜて優奈に飲ませたことを伝えた。二人とも驚いていたが、喜んでくれた。
「いっしょに苦労したんや、優奈が歌うのがベストやで!」
珍しく加藤先輩が目を潤ませた。
午前中の会場は、まだいくらか空席があったが、午後には強豪校の出場が目白押しなるので、満席になった。
「……声が出る!」
午前中最後の茶屋町高校の曲は、優奈の好きな曲だったので、口パクでナゾって、気づいたら自然に歌えたのである。
「優奈ちゃん、リハーサル室へ行って!」
チサちゃんが促す。ちょうど様子を見に来た俺といっしょになったので、足を弾ませてリハーサル室に向かった。
「なんで、そんなに楽しそうなの?」
出られることを知らない優奈には、俺は本番を前にハイテンションになったバカにしか見えなかっただろう。え、いつもバカみたいだから目立たなかっただろうって……はい、そのとおり(o^―^o)!
いよいよ、俺たち真田山高校の出番が回ってきた。
――さて、急遽予定を変更。ボーカルは、山下優奈さん回復して、もとの編成に戻り、真田山高校は審査対象になります――
幸子の出演を楽しみにしていたファンの中からはブーイングも起こったが、概ね会場の反応は暖かかった。
――なお、終演後ファンのみなさんのため、佐伯幸子の30分ミニライブをおこないま~す!!――
会場は、どよめきにつつまれ、あとのアナウンスは、ろくに聞こえなかった。
そして、これが大きな悲劇を生むことになるとは、誰も気づかなかった……。
47『優奈と幸子の二転三転』
そこにはねねちゃんが立っていた……。
「これ、警察病院からもらってきたの。亡くなる前にママが、一時的に元気になった時の薬剤」
「これは……」
そうだ、里中ミッション・4でねねちゃんの義体にインストールされた俺が里中リサを看取った時のものだ。まだ残っていたんだ。
「優奈ちゃんにも効くわ、元々は、戦闘中に負傷した者を一時的に健常にもどし、あとで治療するためのものだから」
「じゃ、優奈ちゃん出場できるのね!」
みんなが喜んだ。幸子も喜んだが、仕様書を読んで顔が曇った。
「心臓に負担が……15%の確率で効かないこともあるのね」
「……ええ、それに状態によっては、完全に戻らないこともあるわ。使うかどうかは、あなた達次第。じゃ、明日は会場で見てるわ。チサちゃんも来るんでしょ?」
「うん、えと……D列の35番。みんなそのへんよ」
「わたしも、そのあたり確保しとくわ」
「でも、予約いっぱいよ」
――甲殻機動隊に不可能はないの(^▽^)――
高機動車のハナちゃんが、車体をガシャガシャ揺すって笑った。
「優奈ちゃんも飲む?」
開演前、みんなで特製のジンジャエールをまわした。よく冷えていて、喉がスッキリする。
みんなのスッキリ顔を見て、自分も飲みたくなったのであろう、優奈は進んで手を出した。
「ぼんど、ズッギリじまず……」
「酷い声だなあ」
「あい、おどなじぐ、ごごで見でまず( ;∀;)」
「じゃ、わたしリハーサル室行ってるね。またあとで見に来るからね」
幸子と俺はリハーサル室へ向かった。
そして蟹江先生と加藤先輩には、ジンジャエールに薬を混ぜて優奈に飲ませたことを伝えた。二人とも驚いていたが、喜んでくれた。
「いっしょに苦労したんや、優奈が歌うのがベストやで!」
珍しく加藤先輩が目を潤ませた。
午前中の会場は、まだいくらか空席があったが、午後には強豪校の出場が目白押しなるので、満席になった。
「……声が出る!」
午前中最後の茶屋町高校の曲は、優奈の好きな曲だったので、口パクでナゾって、気づいたら自然に歌えたのである。
「優奈ちゃん、リハーサル室へ行って!」
チサちゃんが促す。ちょうど様子を見に来た俺といっしょになったので、足を弾ませてリハーサル室に向かった。
「なんで、そんなに楽しそうなの?」
出られることを知らない優奈には、俺は本番を前にハイテンションになったバカにしか見えなかっただろう。え、いつもバカみたいだから目立たなかっただろうって……はい、そのとおり(o^―^o)!
いよいよ、俺たち真田山高校の出番が回ってきた。
――さて、急遽予定を変更。ボーカルは、山下優奈さん回復して、もとの編成に戻り、真田山高校は審査対象になります――
幸子の出演を楽しみにしていたファンの中からはブーイングも起こったが、概ね会場の反応は暖かかった。
――なお、終演後ファンのみなさんのため、佐伯幸子の30分ミニライブをおこないま~す!!――
会場は、どよめきにつつまれ、あとのアナウンスは、ろくに聞こえなかった。
そして、これが大きな悲劇を生むことになるとは、誰も気づかなかった……。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?
水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。
日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。
そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。
一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。
◇小説家になろうにも掲載中です!
◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる