35 / 68
35『幸子の変化・1』
しおりを挟む
妹が憎たらしいのには訳がある
35『幸子の変化・1』
その日は週間メガヒットの生放送の日だった。
19時局入りだったので、幸子は演劇部の部活もケイオンの練習もしっかりやって、18時過ぎに正門前で高機動車ハナちゃんに拾ってもらって帝都テレビを目指した。帝都テレビは東京の港区だ。1時間足らずで、500キロ以上移動しなくちゃならない。リニアでも無理だ。
ハナちゃんは、高速に入ると急加速し、気がついたら空を飛んでいた。
「ハナちゃん、空も飛べるんだ!」
お母さんが、無邪気に喜んだ。
『これでも甲殻機動隊の高機動車ハナちゃんで~す。マッハ3で飛びますよ~。今のうちに食事してくださ~い(^▽^)/』
ハナちゃんもウキウキして、お母さんは、用意しておいたハンバーガーをみんなに配りだした。
「マッハ3で飛んでるのに、衝撃もGも感じないね」
『エッヘン、衝撃吸収はバッチリ。最先端の旅客機並ですよ~』
「衝撃吸収装置って、小型自動車ぐらいの大きさじゃん。この小さなボディーに、よく収まったね」
『そこが、甲殻機動隊ですよ~』
「里中さん、しばらく会ってないけど、お元気?」
『ええ、こないだのねねちゃんの件、感謝してらっしゃいましたあ』
「なに、ねねちゃんの件て?」
「みんな、早く食べないと、もう浜松上空よ」
幸子が、あっさりと食べ終わって、チサちゃんがびっくりしている。チサちゃんも学校帰りに真田山にやってきて合流しているんだ。見学半分、家に帰ってもお父さんが帰ってくるまでは独りぼっちなんでついてきたのが半分。他にも佳子ちゃんが妹の優子ちゃんを連れて同席している。
「ハナちゃんが居るから大丈夫なんでしょうけど、ガードの方も大丈夫なんでしょうね」
『大丈夫、ハナを信じて。それに、もっと強力なガーディアンが……あ、これ内緒で~す。お母さん』
「え、どこ?」
お母さんは、窓から外を見渡した。車内にソレが居ることは俺にも分からなかった……。
難しいことなんか考えてるヒマもなく、ハナちゃんは帝都放送の玄関前に着いた。
『じゃ、終わる頃には、関係者出口の方で待ってます』
ハナちゃんは、みんなを降ろすと、さっさと駐車場の方へ行ってしまった。
「お母さん達はスタジオで待ってて。今日の準備は極秘なの」
幸子は、そういうとみんなを楽屋から追い出した。こんなことは初めてだったけど、これも幸子の自律回復の兆しと納得して、スタジオに向かった。
途中、お馴染みにになったAKRのメンバーと廊下ですれ違う。小野寺さんを始め、みんなキチンと挨拶してくれる。アイドルも一流になると、このへんの礼儀もちがう。
廊下を曲がるとき、小野寺さんがスタッフに呼ばれて別室に向かうのがガラス窓に映った。メンバーの総監督ともなると忙しいもんだ……その時は思った。
生放送だけどリハーサルめいたことは何も無かった。ディレクターからザッと進行の説明があったあと、出演者の立ち位置、フォーメーションやマイク感度、照明のチェックが行われただけ。AKRのメンバーはひな壇で雑談しながら並び始めた。副調整室とやりとりがあって、ADさんの手が上がる。
「じゃ、本番いきます。10秒前……5・4・3・2……」
Qが出て、テーマが流れ、みんなの拍手。
「週間メガヒットオオオオオオオオオオオ!! 今夜もみなさんにアーティストやその作品についての最新情報をビビットにお届けします!」
「さて、今夜はいきなり特別ゲストの登場です!」
スナップの居中・角江コンビのMCで、スタジオ奥のカーテンが開いた。
数秒の拍手……そして、スタジオはどよめいて、俺たちも驚いた!
出てきたのは、AKR総監督の小野寺潤。そして、横のひな壇にも小野寺潤が居た……。
35『幸子の変化・1』
その日は週間メガヒットの生放送の日だった。
19時局入りだったので、幸子は演劇部の部活もケイオンの練習もしっかりやって、18時過ぎに正門前で高機動車ハナちゃんに拾ってもらって帝都テレビを目指した。帝都テレビは東京の港区だ。1時間足らずで、500キロ以上移動しなくちゃならない。リニアでも無理だ。
ハナちゃんは、高速に入ると急加速し、気がついたら空を飛んでいた。
「ハナちゃん、空も飛べるんだ!」
お母さんが、無邪気に喜んだ。
『これでも甲殻機動隊の高機動車ハナちゃんで~す。マッハ3で飛びますよ~。今のうちに食事してくださ~い(^▽^)/』
ハナちゃんもウキウキして、お母さんは、用意しておいたハンバーガーをみんなに配りだした。
「マッハ3で飛んでるのに、衝撃もGも感じないね」
『エッヘン、衝撃吸収はバッチリ。最先端の旅客機並ですよ~』
「衝撃吸収装置って、小型自動車ぐらいの大きさじゃん。この小さなボディーに、よく収まったね」
『そこが、甲殻機動隊ですよ~』
「里中さん、しばらく会ってないけど、お元気?」
『ええ、こないだのねねちゃんの件、感謝してらっしゃいましたあ』
「なに、ねねちゃんの件て?」
「みんな、早く食べないと、もう浜松上空よ」
幸子が、あっさりと食べ終わって、チサちゃんがびっくりしている。チサちゃんも学校帰りに真田山にやってきて合流しているんだ。見学半分、家に帰ってもお父さんが帰ってくるまでは独りぼっちなんでついてきたのが半分。他にも佳子ちゃんが妹の優子ちゃんを連れて同席している。
「ハナちゃんが居るから大丈夫なんでしょうけど、ガードの方も大丈夫なんでしょうね」
『大丈夫、ハナを信じて。それに、もっと強力なガーディアンが……あ、これ内緒で~す。お母さん』
「え、どこ?」
お母さんは、窓から外を見渡した。車内にソレが居ることは俺にも分からなかった……。
難しいことなんか考えてるヒマもなく、ハナちゃんは帝都放送の玄関前に着いた。
『じゃ、終わる頃には、関係者出口の方で待ってます』
ハナちゃんは、みんなを降ろすと、さっさと駐車場の方へ行ってしまった。
「お母さん達はスタジオで待ってて。今日の準備は極秘なの」
幸子は、そういうとみんなを楽屋から追い出した。こんなことは初めてだったけど、これも幸子の自律回復の兆しと納得して、スタジオに向かった。
途中、お馴染みにになったAKRのメンバーと廊下ですれ違う。小野寺さんを始め、みんなキチンと挨拶してくれる。アイドルも一流になると、このへんの礼儀もちがう。
廊下を曲がるとき、小野寺さんがスタッフに呼ばれて別室に向かうのがガラス窓に映った。メンバーの総監督ともなると忙しいもんだ……その時は思った。
生放送だけどリハーサルめいたことは何も無かった。ディレクターからザッと進行の説明があったあと、出演者の立ち位置、フォーメーションやマイク感度、照明のチェックが行われただけ。AKRのメンバーはひな壇で雑談しながら並び始めた。副調整室とやりとりがあって、ADさんの手が上がる。
「じゃ、本番いきます。10秒前……5・4・3・2……」
Qが出て、テーマが流れ、みんなの拍手。
「週間メガヒットオオオオオオオオオオオ!! 今夜もみなさんにアーティストやその作品についての最新情報をビビットにお届けします!」
「さて、今夜はいきなり特別ゲストの登場です!」
スナップの居中・角江コンビのMCで、スタジオ奥のカーテンが開いた。
数秒の拍手……そして、スタジオはどよめいて、俺たちも驚いた!
出てきたのは、AKR総監督の小野寺潤。そして、横のひな壇にも小野寺潤が居た……。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる