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59〔ラブホ初体験!〕
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明神男坂のぼりたい
59〔ラブホ初体験!〕
連休を持て余していた中尾美枝から電話。
『ねえ、ラブホの探検に行こうよ!』
なんでも、ゆかりとの約束が流れてヒマなので、うちにお鉢が回ってきたらしい。
正直びっくり……なんだけど。
二つのミエで「NO」を言い損ねた。
ベランダから見える青空のようにアッケラカンとした『美枝』の言い回しと、部屋のどこかで聞いている居候への『見栄』で。
『遠足じゃ外回りしか分からなかったじゃん。やっぱ、こういうのは中身だしね。ググったら、いろいろアミューズメントパークかみたいなのがあって、面白そうでさ。本来の目的以外でも女子会で利用するのもあるんだって。ね、どうよ?』
「オンナ同士でも、変なことしない?」
そう確認すると「ガハハ」と愉快そうで健康的な笑い声が返ってきた。
『アハハ、ないない。せっかくの連休だし、ちょっと変わったこともしてみたいってノリ。じゃ、一時間後御茶ノ水駅集合ね!』
プツン
電話が切れると、油絵の明日香と目が合ってしまう。
一瞬さつきかと思ったけど、あいつの気配ではない。連休だから、さつきも出かけたかな?
で、一時間ニ十分後、山手線某駅で降りて、東京でも指折りのラブホ街に二人でおもむいた。
「なんかネオン点いてないと、普通のビジネスホテルみたいだね」
「こんな時間やだから、入れるんだね。昼過ぎたら、もう空室ないだろねえ」
「あ、フロントがある……」
「あれは、法律対策上。部屋はこっち」
やっぱ、美枝の方が詳しい。あたしは、こんなとこ来るのん初めてだし。
パネルにある部屋は、看板通り均一料金だった。で、半分以上が使用中なのには驚いた。
「ウワー、ショッキングピンク!」
部屋に入るなり、部屋のコンセプトがピンクなのにタマゲタ。
「やっぱり、趣味のいい部屋は使用中やだね。ま、基本的なシステムはいっしょだろから」
ウォーターサーバーもピンク色だったから、ピーチのジュースでも出てくるのかと思ったら、当たり前の水だった。
「明日香、なにショボイ水飲んでんの。こっち、飲み物は一杯あるよ」
コーヒー・お茶・紅茶・生姜湯・ココア・コンソメスープetc……。
「へえ、生姜湯だ……」
石神井のお祖母ちゃんを思い出す。
「なにしみじみしてんのよ。ご休憩だから、時間との勝負だよ。ホレ!」
美枝は、そう言うとクローゼットの上からお風呂のセットをとりだして、放ってよこした。
「せっかくだから、いっしょに入ろ」
美枝のノリで、そのままバスに。
「うわあ、同じだ」
「え、なにと?」
壁の色なんかは違うんだけど、お風呂自体は、去年お祖母ちゃんのお通夜で入った葬儀会館といっしょなので驚いた。
「ふうん、葬儀会館もラブホもアミューズメントパークのノリなんだねえ……」
二人で、ゆったり入れて、お風呂の中に段差がある。ガラス張りかと思ってたら、拍子抜けするほど普通のお風呂。
「これは、フロントといっしょで、警察うるさいし、女の子には、この方が喜ばれる」
「ふーん……キャ!」
油断してると、いきなり水鉄砲。
「アハハ、びっくりしただろ。こういう遊び心が嬉しいところさ」
「もう、とりあえずシャワーして、お風呂入ろ」
美枝のノリで、シャワーして、バスに浸かる。やっぱり女の子同士でも、変な感じ。ちょっとドキドキ。
「じゃあ、洗いっこしょうか」
前も隠さずに美枝が上がる。ボディーシャンプーやらリンスやら、わりといいのが二種類ずつ置いてあった。二人で違うのを使って感触を確かめる。違いはよく分からないけど、うちで使うてるのよりはヨサゲだった。
「ねえ、体の比べあいっこしよ」
「比べあい?」
「修学旅行とかでも、お互いの体しみじみ観ることってないじゃん。めったにないことだし、やってみよ!」
「え、ああ……え、鏡!?」
美枝が壁のボタンを押すと、それまで壁一面のガラスだったのが鏡になった!
なるほど、同じ歳の同じくらいの体格でも、裸になると微妙に違う。肩から胸にかけてのラインは負けてる。
「だけど、乳は明日香の方がかわいいなあ。あんまり大きくないけど、カタチがいい。ほら片手で程よく収まる」
そっと、美枝の手で両方の胸を覆われた。鏡に映すと、丸出しよりも色っぽいし、自分が可愛く見える。
それからは……中略……自分でも見たことのないホクロを見られてしまったりとか、後で考えると恥ずかしいんだけど、平気でやれたのは、美枝のキャラだと思う。
「明日香、ベッドにおいでよ」
髪の毛乾かし終わると、美枝がベッドに誘う。
「え、あんた裸!?」
掛け布団めくると、美枝はスッポンポン。
「明日香も……」
あっという間に、バスローブ脱がされてしまう。
「ちょっとだけ練習……」
言い終わらないうちに美枝が後ろから抱きついてきた。胸の先触られて、体に電気が走った。
「もう、びっくりするじゃんか!」
「今度は、明日香が」
そう言って、美枝は背中を向けた……。
やっぱ胸は触れなくて、背骨に沿って指でなぞってやる。
「うひゃひゃひゃ~~~(#'∀'#)」
「ちょ、なんて声出すのよ(^_^;)」
「明日香、上手いよ!」
「ちょ、なにがよ!?」
「女同士でも感じるんだねえ」
「もうヤンペ」
「こういう感覚、この感覚を愛情だと誤解せんことなんだよね」
「ったりまえでしょ!」
「だよね、Hの後にIがあるもんやけど、やっぱり愛が先にあらへんとねえ」
そういう女子高生らしい恋愛論の結論に達して、あたしらはご休憩時間ギリギリまで居て、ホテルを出た。
実は、美枝から、ある話を聞いたんだけど、女の約束で言えません。
ただ、外に出たとき、五月の風が、とても爽やかやったことは確かでした。
そういう女子高生の、ちょっとした冒険で締めくくろうと思ったら……帰り道、明神さまの大鳥居まで来て発見してしまった。
なんと、さつきが実体化して、だんご屋でアルバイトをやっているのを。
※ 主な登場人物
鈴木 明日香 明神男坂下に住む高校一年生
東風 爽子 明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
香里奈 部活の仲間
お父さん
お母さん 今日子
伯母さん
巫女さん
だんご屋のおばちゃん
関根先輩 中学の先輩
美保先輩 田辺美保
馬場先輩 イケメンの美術部
佐渡くん 不登校ぎみの同級生
将門さま 神田明神
さつき 将門さまの娘 別名滝夜叉姫
59〔ラブホ初体験!〕
連休を持て余していた中尾美枝から電話。
『ねえ、ラブホの探検に行こうよ!』
なんでも、ゆかりとの約束が流れてヒマなので、うちにお鉢が回ってきたらしい。
正直びっくり……なんだけど。
二つのミエで「NO」を言い損ねた。
ベランダから見える青空のようにアッケラカンとした『美枝』の言い回しと、部屋のどこかで聞いている居候への『見栄』で。
『遠足じゃ外回りしか分からなかったじゃん。やっぱ、こういうのは中身だしね。ググったら、いろいろアミューズメントパークかみたいなのがあって、面白そうでさ。本来の目的以外でも女子会で利用するのもあるんだって。ね、どうよ?』
「オンナ同士でも、変なことしない?」
そう確認すると「ガハハ」と愉快そうで健康的な笑い声が返ってきた。
『アハハ、ないない。せっかくの連休だし、ちょっと変わったこともしてみたいってノリ。じゃ、一時間後御茶ノ水駅集合ね!』
プツン
電話が切れると、油絵の明日香と目が合ってしまう。
一瞬さつきかと思ったけど、あいつの気配ではない。連休だから、さつきも出かけたかな?
で、一時間ニ十分後、山手線某駅で降りて、東京でも指折りのラブホ街に二人でおもむいた。
「なんかネオン点いてないと、普通のビジネスホテルみたいだね」
「こんな時間やだから、入れるんだね。昼過ぎたら、もう空室ないだろねえ」
「あ、フロントがある……」
「あれは、法律対策上。部屋はこっち」
やっぱ、美枝の方が詳しい。あたしは、こんなとこ来るのん初めてだし。
パネルにある部屋は、看板通り均一料金だった。で、半分以上が使用中なのには驚いた。
「ウワー、ショッキングピンク!」
部屋に入るなり、部屋のコンセプトがピンクなのにタマゲタ。
「やっぱり、趣味のいい部屋は使用中やだね。ま、基本的なシステムはいっしょだろから」
ウォーターサーバーもピンク色だったから、ピーチのジュースでも出てくるのかと思ったら、当たり前の水だった。
「明日香、なにショボイ水飲んでんの。こっち、飲み物は一杯あるよ」
コーヒー・お茶・紅茶・生姜湯・ココア・コンソメスープetc……。
「へえ、生姜湯だ……」
石神井のお祖母ちゃんを思い出す。
「なにしみじみしてんのよ。ご休憩だから、時間との勝負だよ。ホレ!」
美枝は、そう言うとクローゼットの上からお風呂のセットをとりだして、放ってよこした。
「せっかくだから、いっしょに入ろ」
美枝のノリで、そのままバスに。
「うわあ、同じだ」
「え、なにと?」
壁の色なんかは違うんだけど、お風呂自体は、去年お祖母ちゃんのお通夜で入った葬儀会館といっしょなので驚いた。
「ふうん、葬儀会館もラブホもアミューズメントパークのノリなんだねえ……」
二人で、ゆったり入れて、お風呂の中に段差がある。ガラス張りかと思ってたら、拍子抜けするほど普通のお風呂。
「これは、フロントといっしょで、警察うるさいし、女の子には、この方が喜ばれる」
「ふーん……キャ!」
油断してると、いきなり水鉄砲。
「アハハ、びっくりしただろ。こういう遊び心が嬉しいところさ」
「もう、とりあえずシャワーして、お風呂入ろ」
美枝のノリで、シャワーして、バスに浸かる。やっぱり女の子同士でも、変な感じ。ちょっとドキドキ。
「じゃあ、洗いっこしょうか」
前も隠さずに美枝が上がる。ボディーシャンプーやらリンスやら、わりといいのが二種類ずつ置いてあった。二人で違うのを使って感触を確かめる。違いはよく分からないけど、うちで使うてるのよりはヨサゲだった。
「ねえ、体の比べあいっこしよ」
「比べあい?」
「修学旅行とかでも、お互いの体しみじみ観ることってないじゃん。めったにないことだし、やってみよ!」
「え、ああ……え、鏡!?」
美枝が壁のボタンを押すと、それまで壁一面のガラスだったのが鏡になった!
なるほど、同じ歳の同じくらいの体格でも、裸になると微妙に違う。肩から胸にかけてのラインは負けてる。
「だけど、乳は明日香の方がかわいいなあ。あんまり大きくないけど、カタチがいい。ほら片手で程よく収まる」
そっと、美枝の手で両方の胸を覆われた。鏡に映すと、丸出しよりも色っぽいし、自分が可愛く見える。
それからは……中略……自分でも見たことのないホクロを見られてしまったりとか、後で考えると恥ずかしいんだけど、平気でやれたのは、美枝のキャラだと思う。
「明日香、ベッドにおいでよ」
髪の毛乾かし終わると、美枝がベッドに誘う。
「え、あんた裸!?」
掛け布団めくると、美枝はスッポンポン。
「明日香も……」
あっという間に、バスローブ脱がされてしまう。
「ちょっとだけ練習……」
言い終わらないうちに美枝が後ろから抱きついてきた。胸の先触られて、体に電気が走った。
「もう、びっくりするじゃんか!」
「今度は、明日香が」
そう言って、美枝は背中を向けた……。
やっぱ胸は触れなくて、背骨に沿って指でなぞってやる。
「うひゃひゃひゃ~~~(#'∀'#)」
「ちょ、なんて声出すのよ(^_^;)」
「明日香、上手いよ!」
「ちょ、なにがよ!?」
「女同士でも感じるんだねえ」
「もうヤンペ」
「こういう感覚、この感覚を愛情だと誤解せんことなんだよね」
「ったりまえでしょ!」
「だよね、Hの後にIがあるもんやけど、やっぱり愛が先にあらへんとねえ」
そういう女子高生らしい恋愛論の結論に達して、あたしらはご休憩時間ギリギリまで居て、ホテルを出た。
実は、美枝から、ある話を聞いたんだけど、女の約束で言えません。
ただ、外に出たとき、五月の風が、とても爽やかやったことは確かでした。
そういう女子高生の、ちょっとした冒険で締めくくろうと思ったら……帰り道、明神さまの大鳥居まで来て発見してしまった。
なんと、さつきが実体化して、だんご屋でアルバイトをやっているのを。
※ 主な登場人物
鈴木 明日香 明神男坂下に住む高校一年生
東風 爽子 明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
香里奈 部活の仲間
お父さん
お母さん 今日子
伯母さん
巫女さん
だんご屋のおばちゃん
関根先輩 中学の先輩
美保先輩 田辺美保
馬場先輩 イケメンの美術部
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将門さま 神田明神
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