上 下
23 / 161

23『体重大事件・3』

しおりを挟む

やくも・23『体重大事件・3』   

 

 永遠の十七歳、アキバのメイドだよ……わたし。

 
 そいつはニッコリ笑って、人差し指で自分を指しながら言った。

 付喪神(つくもがみ)どころか、とんでもない妖怪!?

 ピュ――――――!!

 一目散に逃げた(;゜Д゜)。

 アキバのメイドなんてあり得ない。だってアキバに行ったことなんてないんだもん、アキバ関連のグッズだって持ってない。行ったこともグッズも持っていなくて、その付喪神が出るなんてあり得ない。きっと、ほかのアヤカシが図書室に現れたりペコリお化けの定位置を乗っ取って出てきたんだ。ああいうアヤカシは悪さをするんだ。

 体力ないから家までは走れない。

 途中の袋小路にお地蔵さんの祠があったことを思い出した。越してきて間が無いので、わざわざ袋小路に入って手を合わせたことは無いけど、そこしかないと思った。

 ほんとうは、祠の前できちんと手を合わせなきゃならないんだろうけど、そんなことをしていたら追いかけてくるあいつに見つかってしまう。

 わたしは祠の陰に隠れた、土台に背中を預け、しゃがんで手を合わせた。

 お地蔵さんの功力だろうか、あいつが追いかけてくるような気配は無かった。

 五分……十分たっただろうか、祠の陰から、そっと顔を出す。あいつが追ってくる気配はしなかった。

 安心すると、目のピントが手元の祠にあう……小さな賽銭箱の横に『お守り石』と墨で書かれた箱がある。

 なんだろう?

 腰を上げて小さくひっくり返ってしまった。

 ダッシュしたせいか増えた体重のせいか、ぶざまに後ろに手を突く。

 ヨッコラショ、

 小箱の上に短冊大の張り紙。

――身を護って下さったり、願い事を叶えてくださいます。願い事が叶ったらお返しください――

 箱の中には親指の先ほどの大きさの真っ白い石が数十個入っている。祠のくたびれ方とは対照に、とても清げ、いかにも霊験あらたかな気がする。

 こういうのって、ただで持ってちゃうといけないよね。

 しかし、中坊の悲しさ、お財布には三十円しか入っていない。いくら気は心とは言え三十円はね……せめて百円はしなくっちゃ。

 閃いた!

 お財布の中にはスイカとテレホンカードが入っている。

 スイカは越してくる前に時々使っていた。テレホンカードは万一の時に使いなさいと離婚する前のお父さんがくれたものだ。

 どちらも、いまは使わない。

 ちょっと迷ってスイカを置いて手を合わせる。

――明日にでもお賽銭持ってきますから、スイカでお願いします――

『お守り石』を一つ、一番大きい奴……は置いといて、二番目に大きいのをハンカチに包んで、心を込めて手を合わせた。

 

☆ 主な登場人物

やくも       一丁目に越してきた三丁目の学校に通う中学二年生
お母さん      やくもとは血の繋がりは無い
お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
杉野君       図書委員仲間 やくものことが好き
小桜さん      図書委員仲間 杉野君の気持ちを知っている
霊田先生      図書部長の先生
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

あまたある産声の中で‼~『氏名・使命』を奪われた最凶の男は、過去を追い求めない~

最十 レイ
ファンタジー
「お前の『氏名・使命』を貰う」 力を得た代償に己の名前とすべき事を奪われ、転生を果たした名も無き男。 自分は誰なのか? 自分のすべき事は何だったのか? 苦悩する……なんて事はなく、忘れているのをいいことに持前のポジティブさと破天荒さと卑怯さで、時に楽しく、時に女の子にちょっかいをだしながら、思いのまま生きようとする。 そんな性格だから、ちょっと女の子に騙されたり、ちょっと監獄に送られたり、脱獄しようとしてまた捕まったり、挙句の果てに死刑にされそうになったり⁈ 身体は変形と再生を繰り返し、死さえも失った男は、生まれ持った拳でシリアスをぶっ飛ばし、己が信念のもとにキメるところはきっちりキメて突き進む。 そんな『自由』でなければ勝ち取れない、名も無き男の生き様が今始まる! ※この作品はカクヨムでも投稿中です。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...