2 / 161
02『お屋敷の中へ……』
しおりを挟むやくも・02『お屋敷の中へ……』
お風呂掃除をかってでた。
お爺ちゃんもお婆ちゃんも、お母さんだって「なにもしなくていいよ」と言ってくれた。
でも、こんなに立派な家に住まわせてもらって、何もしなくていいというのはかえって気づまりだ。
それで、頭をグルンとめぐらせて「お風呂掃除をやらせて」と頼んだんだ。
お風呂掃除なら学校が終わった夕方で間に合う。庭とか家の周りの掃除も考えたんだけど、近所の人と顔を合わせたくなかったし、外回りの掃除は雨が降ったら大変だ。お風呂ならお天気に左右されないし、毎日同じダンドリでやればいいんだし。
でも、お爺ちゃんが晩ご飯の前に風呂に入る習慣だということには思い至らなかった(^_^;)。
遅くとも五時には帰って風呂掃除しなくちゃならない。
図書委員の仕事が遅くなって、焦っていた。
普通に帰ったら五時を回ってしまう。
だから、あのお屋敷の崖下で脚が停まった。
あのお屋敷は、もうだれも住んでいない。生け垣の隙間から見えた一階も雨戸が閉められている。
四日前からは工務店の工事に関する看板みたいなのが掛けられ、昨日は取り壊しのための足場が運び込まれ、今朝は工事機材を運び込むために門扉が外されていた。
ここを抜けたら二百メートルの近道だ。
そう思ったけど、裏の出入り口が閉まっていたら元も子もない。
その裏口も開いている!
わたしは、ドキドキしながら階段を駆け上がった。
裏木戸を潜ると猛々しく草が茂った庭。モワっと湿っぽい土の匂い、ちょびっとかび臭い。たぶん、取り壊すにあたって中の荷物を出したりしたんだろう。
土蔵の脇を周って広い庭。
お母さんとチラ見したお厨子が静もっている。
ソーラーかなにかでオートなんだろう、お厨子の中のお燈明が点いているよ。
―― すみません、通らせてもらいます ――
ペコリと頭を下げて通り抜けようとしたら、お厨子の下に光るもの……え、スマホ?
こちらに来るのあたってスマホを買ってもらった。
「好きなの選びな」
お母さんは言ってくれたけど、離婚したてで大変なのわかってるから、指さしたのはキッズスマホ。
「これでいいの?」
「うん、いろいろ付いてても使いこなせないから」
ほんとはカタログの表紙を飾っていた最新型。見ないようにするのに苦労した。見れば、お母さんが気を遣う。
その表紙を飾っていたのと同じスマホが落ちている!
わたしは、視界の中心を外してモノを見るのが得意。
スマホ屋さんで、憧れのスマホはしっかり目に焼き付けてある。
家の人か工事関係の人が落としたんだろう……思わず手に取ってみた。
手に取ると、それまで暗かった画面がパッと明るくなった。
静電気かジャイロのセンサーが付いているんだろう。ま、このくらいでは驚かない。
―― いらっしゃい ――
声がすると同時に、画面にも「いらっしゃい」が現れる。
やばい、どこか触っちゃったかな。
うろたえると、文字が消えて鳥居が現れてズンズン大きくなっていき、いつの間にか画面からはみ出した。
……目の前に鳥居が現れた。
首を巡らせると、鳥居を囲んでボンヤリと長方形の枠が滲んでいる。
これって……わたし、スマホの画面の中にいるの!?
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
巡(めぐり)型落ち魔法少女の通学日記
武者走走九郎or大橋むつお
ファンタジー
時司巡(ときつかさめぐり)は制服にほれ込んで宮之森高校を受験して合格するが、その年度から制服が改定されてしまう。
すっかり入学する意欲を失った巡は、定年退職後の再任用も終わった元魔法少女の祖母に相談。
「それなら、古い制服だったころの宮の森に通ってみればぁ?」「え、そんなことできるの!?」
お祖母ちゃんは言う「わたしの通っていた学校だし、魔法少女でもあったし、なんとかなるよ」
「だいじょうぶ?」
「任しとき……あ、ちょっと古い時代になってしまった」
「ええ!?」
巡は、なんと50年以上も昔の宮之森高校に通うことになった!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
モブキャラ異世界転生記~モブキャラに転生しちゃったけど従魔の力で何とかなりそうです~
ボルトコボルト
ファンタジー
ソウタは憧れた異世界転移をしていた。しかし、転生先は勇者の隣に住むモブキャラ、俺TUEEEにはならず、魔法無しスキル無し、何の取り柄も力も無いソウタが、従魔の力で成り上がりざまぁしていく予定の物語。
従魔の登場はちょっと後になります。
★打たれ弱いので批判はご遠慮ください
応援は是非お願いします。褒められれば伸びる子です。
カクヨム様にて先行掲載中、
続きが気になる方はどうぞ。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる