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143『人事を尽くして……』
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銀河太平記
143『人事を尽くして……』
一度ならず二度までも!
漢明は洛陽号を自爆させて西之島のせいにした。それに飽き足らず、こんどは輸送船を自爆させよった!
むろん、漢明艦隊は大慌てを装い、黒煙を吐く輸送船を囲みながら、はるか沖合まで避難した。
漢明艦隊は一切の報復攻撃も挑発行動もしてこなかった。漢明艦隊はあくまでも洛陽号爆発の真相を探るために来た調査船と、その護衛であるという姿勢を崩さなかった。
その代わり、第二軍区の即応師団が暴発したように見せかけて機動艦隊五隻を発向させた。
「ご丁寧に、即応師団の暴発という形をとってるよ」
「でしょうね、指鉄砲で輸送船が爆発するわけありませんから」
それでも、及川市長はなだめるように右手をポケットに突っ込み、左手首のハンベに語り掛ける。
「直ぐに戻ります、おそらく空港に敵が強行着陸してくるでしょうが、抵抗はしないで。市民には、外に出ないように繰り返し広報してください。取りあえず、第一級防災体制を維持。都と国には繰り返し救援依頼を続けてください!」
パシ!
音を立ててハンベのカバーを閉めると、一礼して岩頭の社長のところに駆けていった。
気持ちは分かるよ。市長一人で、この漢明の理不尽には立ち向かえない。
戦争状態になったら、実質的な指導者を立てなければならない。それには、能力的にも人望的にも血統的にも島のみんなが従えて、気持ちが一つになる人物を選ばなければならない。このお岩が考えても、あんたしかいないさ、社長。
「お岩さん」
ゴミ収集の打合せをし終えたような気楽さで社長が寄って来る。
「すぐに動かなくっていいの?」
「もう、手は打ってあります。万全というわけにはいきませんけどね」
「で、どうすんの?」
「まずは、ロボットさんたちが頼りです。そのために並列化を解いてもらいました。漢明との折衝は主席にお願いしてあります。まあ、出番はちょっと先になりますけどね。島内の通信は酋長のマヌエリトがやってくれます。全てアナログでね、島のあちこちでナバホ語の囁きが聞けると思いますよ」
「ナバホ語……ハンベの翻訳機能には対応してないんじゃないのかい?」
「だからこそ、いいんです。漢明も理解できません。漢明は自国の少数民族も数段下に見ています。ましてナバホインディアンなどは眼中に有りませんからね。それから、島にはガラクタがいっぱいありますからね、デジタル、アナログの両面からゲリラ的な武器や戦法をメグミさんにお願いしています」
「それなら大丈夫……と言ってあげたいけど、みんな小手先でだろ、大丈夫?」
「アハハ、容赦ないなあお岩さんは」
「それと」
「なんですか?」
「社長は、いつも丁寧な物言いするけど。ちょっと丁寧過ぎない? このお岩にまで敬語使ってるよ」
「実は……」
「実は?」
「めちゃくちゃ緊張してるんです(#`□´#)!」
「……じゃあ、神社もすぐそこだし、お参りして行こうか、一応社長のご先祖が御祭神なんだし」
「そ、そうですね、それがいい!」
シゲジイの神主とハナの巫女さんじゃ効き目は怪しいけど、二礼二拍手一礼する。
「そうだ!」
「お、なにかご託宣かい!?」
「落盤事故のときの御遺骨、まだ食堂でしょ?」
「うん、寂しくないようにね」
「避難させましょう、あ、ここの御神体も!」
「それはもう、用意してある」
振り返るとシゲジイが白木の箱を捧げ持った。
シゲジイの後ろ、鳥居のところには、島の住民百人余りが、寄り添って手を合わせていた。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
143『人事を尽くして……』
一度ならず二度までも!
漢明は洛陽号を自爆させて西之島のせいにした。それに飽き足らず、こんどは輸送船を自爆させよった!
むろん、漢明艦隊は大慌てを装い、黒煙を吐く輸送船を囲みながら、はるか沖合まで避難した。
漢明艦隊は一切の報復攻撃も挑発行動もしてこなかった。漢明艦隊はあくまでも洛陽号爆発の真相を探るために来た調査船と、その護衛であるという姿勢を崩さなかった。
その代わり、第二軍区の即応師団が暴発したように見せかけて機動艦隊五隻を発向させた。
「ご丁寧に、即応師団の暴発という形をとってるよ」
「でしょうね、指鉄砲で輸送船が爆発するわけありませんから」
それでも、及川市長はなだめるように右手をポケットに突っ込み、左手首のハンベに語り掛ける。
「直ぐに戻ります、おそらく空港に敵が強行着陸してくるでしょうが、抵抗はしないで。市民には、外に出ないように繰り返し広報してください。取りあえず、第一級防災体制を維持。都と国には繰り返し救援依頼を続けてください!」
パシ!
音を立ててハンベのカバーを閉めると、一礼して岩頭の社長のところに駆けていった。
気持ちは分かるよ。市長一人で、この漢明の理不尽には立ち向かえない。
戦争状態になったら、実質的な指導者を立てなければならない。それには、能力的にも人望的にも血統的にも島のみんなが従えて、気持ちが一つになる人物を選ばなければならない。このお岩が考えても、あんたしかいないさ、社長。
「お岩さん」
ゴミ収集の打合せをし終えたような気楽さで社長が寄って来る。
「すぐに動かなくっていいの?」
「もう、手は打ってあります。万全というわけにはいきませんけどね」
「で、どうすんの?」
「まずは、ロボットさんたちが頼りです。そのために並列化を解いてもらいました。漢明との折衝は主席にお願いしてあります。まあ、出番はちょっと先になりますけどね。島内の通信は酋長のマヌエリトがやってくれます。全てアナログでね、島のあちこちでナバホ語の囁きが聞けると思いますよ」
「ナバホ語……ハンベの翻訳機能には対応してないんじゃないのかい?」
「だからこそ、いいんです。漢明も理解できません。漢明は自国の少数民族も数段下に見ています。ましてナバホインディアンなどは眼中に有りませんからね。それから、島にはガラクタがいっぱいありますからね、デジタル、アナログの両面からゲリラ的な武器や戦法をメグミさんにお願いしています」
「それなら大丈夫……と言ってあげたいけど、みんな小手先でだろ、大丈夫?」
「アハハ、容赦ないなあお岩さんは」
「それと」
「なんですか?」
「社長は、いつも丁寧な物言いするけど。ちょっと丁寧過ぎない? このお岩にまで敬語使ってるよ」
「実は……」
「実は?」
「めちゃくちゃ緊張してるんです(#`□´#)!」
「……じゃあ、神社もすぐそこだし、お参りして行こうか、一応社長のご先祖が御祭神なんだし」
「そ、そうですね、それがいい!」
シゲジイの神主とハナの巫女さんじゃ効き目は怪しいけど、二礼二拍手一礼する。
「そうだ!」
「お、なにかご託宣かい!?」
「落盤事故のときの御遺骨、まだ食堂でしょ?」
「うん、寂しくないようにね」
「避難させましょう、あ、ここの御神体も!」
「それはもう、用意してある」
振り返るとシゲジイが白木の箱を捧げ持った。
シゲジイの後ろ、鳥居のところには、島の住民百人余りが、寄り添って手を合わせていた。
☆彡この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥(児玉隆三) 地球に帰還してからは越萌マイ
孫 悟兵(孫大人) 児玉元帥の友人
森ノ宮茂仁親王 心子内親王はシゲさんと呼ぶ
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室(氷室 睦仁) 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
村長(マヌエリト) 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
及川 軍平 西之島市市長
須磨宮心子内親王(ココちゃん) 今上陛下の妹宮の娘
劉 宏 漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
王 春華 漢明国大統領付き通訳兼秘書
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
パルス鉱 23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
氷室神社 シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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