28 / 276
016『修学旅行・16・元帥の質問』
しおりを挟む銀河太平記
016『修学旅行・16・元帥の質問』
児玉元帥が身を乗り出してまで聞いてきたのは、僕が扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子だからだろう。
「将軍陛下の地球ご訪問は噂になっているんだろうか?」
高校生に聞くには直截的過ぎるし、元帥と言う立場からして軽すぎる。
「将軍は、修学旅行の見送りにも来てくださいました(^▽^)!」
未来が嬉しそうに応える。
そうなんだ、将軍は書院番の中尉を引き連れただけの身軽さで扶桑宇宙港に見送りに来てくださった。
わざわざの見送りではなく、日課の馬駆けの途中に扶桑三高の修学旅行の出発を耳にしたからという体裁をとっておられた。
「地球は私たち火星人の心のふるさとだ。特に日本は、この扶桑の国の大本だから、大いに楽しんでおいで。勉強に行くんだと思ったら肩に力が入っちゃうからね。楽しむことができたら、おのずと知見は広まる。わたしは忙しくて、なかなか地球に足を向けることはできないけれど、こうやって、君たちの顔を見ることで、想いを馳せることができる」
「チョ-グン、せっかくだかや、握手してほしいのよさ!」
テルが提案すると、将軍は「それはいい、せめてわたしの体温だけでも地球に届けておくれ!」と笑顔で、僕たちの列に近づいてこられ、一人一人に握手してくださった。
「おお、君は新右衛門さんの息子じゃないか!」
初めて気が付いた感じで握手された。
「恐縮です将軍」
「憶えているよ。十年前だろうか、新年のお祝いに新右衛門さんが君を連れてこられて。そうだ、新右衛門さんに抱っこされてわたしとハイタッチしたんだ。あの時の小さいけど暖かい手を憶えているよ。そうだ、十年ぶりにハイタッチしよう!」
将軍が、そうおっしゃると「わたしも!」「オレも!」と広がって、結局全員とハイタッチされた。
スターとかが、こういうことをやると、居合わせた人たちが我も我もと集まって収拾がつかなくなるんだけど、宇宙港に居合わせた人たちは、みんな控え目なにこやかさで見ていてくれた。
「あたし、ダッシュに肩車してもらってハイタッチしたのよさ(^▽^)/」
テルは、そのままでも将軍が屈んでハイタッチしてくださるんだけど(じっさい、小柄な女子なんかには、そうなさっていた)わざわざそうやった。僕にあやかって、そうすれば何年か後には、また将軍に会えると縁起を担いだのだ。
僕が思い出したことで、みんなは将軍のことで話が盛り上がって、元帥も嬉しそうに聞いてくださる。
「そうか、そんな楽しいことがあったんだね。そうだ、わたしもあやかって握手しよう」
「もう一度ですか?」
「さっきのは、ただの挨拶だよ。将軍陛下との握手やハイタッチを知ったらまったく別の握手になるよ!」
「は、はい!」
もう一度あらためて握手する。元帥は、それ以上には将軍の来訪については聞いてこなかった。
おそらくは、僕たちの話と反応から印象を受け取って判断されるのだろう。
正直、僕も将軍には地球来訪のご希望があるようにお見受けしている。
盛り上がったところにヨイチ准尉がやってきて元帥に耳打ちした。
なにやら緊急事態で、僕たちとの歓談はこれでおしまいかと思ったら、振り返った元帥は花が咲いたような笑顔だった。
「諸君、陛下が君たちにお会いになりたいと仰せになっておられるぞ!(^▽^)/」
え…………ええ!?
四人揃ってぶっ飛んでしまった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
8分間のパピリオ
横田コネクタ
SF
人間の血管内に寄生する謎の有機構造体”ソレウス構造体”により、人類はその尊厳を脅かされていた。
蒲生里大学「ソレウス・キラー操縦研究会」のメンバーは、20マイクロメートルのマイクロマシーンを操りソレウス構造体を倒すことに青春を捧げるーー。
というSFです。
セルリアン
吉谷新次
SF
銀河連邦軍の上官と拗れたことをキッカケに銀河連邦から離れて、
賞金稼ぎをすることとなったセルリアン・リップルは、
希少な資源を手に入れることに成功する。
しかし、突如として現れたカッツィ団という
魔界から独立を試みる団体によって襲撃を受け、資源の強奪をされたうえ、
賞金稼ぎの相棒を暗殺されてしまう。
人界の銀河連邦と魔界が一触即発となっている時代。
各星団から独立を試みる団体が増える傾向にあり、
無所属の団体や個人が無法地帯で衝突する事件も多発し始めていた。
リップルは強靭な身体と念力を持ち合わせていたため、
生きたままカッツィ団のゴミと一緒に魔界の惑星に捨てられてしまう。
その惑星で出会ったランスという見習い魔術師の少女に助けられ、
次第に会話が弾み、意気投合する。
だが、またしても、
カッツィ団の襲撃とランスの誘拐を目の当たりにしてしまう。
リップルにとってカッツィ団に対する敵対心が強まり、
賞金稼ぎとしてではなく、一個人として、
カッツィ団の頭首ジャンに会いに行くことを決意する。
カッツィ団のいる惑星に侵入するためには、
ブーチという女性操縦士がいる輸送船が必要となり、
彼女を説得することから始まる。
また、その輸送船は、
魔術師から見つからないように隠す迷彩妖術が必要となるため、
妖精の住む惑星で同行ができる妖精を募集する。
加えて、魔界が人界科学の真似事をしている、ということで、
警備システムを弱体化できるハッキング技術の習得者を探すことになる。
リップルは強引な手段を使ってでも、
ランスの救出とカッツィ団の頭首に会うことを目的に行動を起こす。
天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜
八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。
第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。
大和型三隻は沈没した……、と思われた。
だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。
大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。
祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。
※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています!
面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※
※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※
フィーリング100
アイダアキラ
SF
「こんにちは!今日からお世話になるあなたとフィーリング100のAIです!」
…だからいらなかった。人工知能の友達なんて。
大学生の夏、主人公はこの世界を司る人工知能Kを倒そうと目論んでいた。
しかし、ひょんなことからAIの少女と出会い、トラブルが起こってーーー。
空のない世界(裏)
石田氏
SF
働きながら書いてるので更新は不定期です。
〈8月の作者のどうでもいいコメント〉
『本格的な夏になりました。学校では夏休み、部活に励む学生、夏の催し夏祭り……ですが、楽しいことばかりではない夏でもある。山のようにある宿題、熱中症等健康悪化、夏休みのない大人。何が楽しくて、こんな暑い中祭りに行くんだと言いながら、祭りに行く自分。まぁ、色々あると思いますが、特に脱水には気をつけましょう。水分不足で、血液がどろどろになると、脳梗塞の原因になります。皆、熱中症だけじゃないんだよ。ってことで、今月も仕事しながら執筆頑張ります』
完全に趣味で書いてる小説です。
随時、概要の登場人物更新します。
※すいません、途中字数オーバーがありますが、御承知ください。(アルファポリス様更新前の上限一万字の時のことです)
いつか日本人(ぼく)が地球を救う
多比良栄一
SF
この小説にはある仕掛けがある。
読者はこの物語を読み進めると、この作品自体に仕掛けられた「前代未聞」のアイデアを知ることになる。
それは日本のアニメやマンガへ注がれるオマージュ。
2次創作ではない、ある種の入れ子構造になったメタ・フィクション。
誰もがきいたことがある人物による、誰もみたことがない物語がいま幕を開ける。
すべてのアニメファンに告ぐ!! 。隠された謎を見抜けるか!!。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
25世紀後半 地球を襲った亜獣と呼ばれる怪獣たちに、デミリアンと呼ばれる生命体に搭乗して戦う日本人少年ヤマトタケル。なぜか日本人にしか操縦ができないこの兵器に乗る者には、同時に、人類を滅ぼすと言われる「四解文書」と呼ばれる極秘文書も受け継がされた。
もしこれを人々が知れば、世界は「憤怒」し、「恐怖」し、「絶望」し、そして「発狂」する。
かつてそれを聞いた法皇がショック死したほどの四つの「真理」。
世界でたった一人、人類を救えも、滅ぼしもできる、両方の力を手に入れた日本人少年ヤマトタケル。
彼は、世界100億人全員から、救いを求められ、忌み嫌われ、そして恐れられる存在になった。
だが彼には使命があった。たとえ人類の半分の人々を犠牲にしても残り11体の亜獣を殲滅すること、そして「四解文書」の謎を誰にも知られずに永遠に葬ることだった。
怪獣特殊処理班ミナモト
kamin0
SF
隕石の飛来とともに突如として現れた敵性巨大生物、『怪獣』の脅威と、加速する砂漠化によって、大きく生活圏が縮小された近未来の地球。日本では、地球防衛省を設立するなどして怪獣の駆除に尽力していた。そんな中、元自衛官の源王城(みなもとおうじ)はその才能を買われて、怪獣の事後処理を専門とする衛生環境省処理科、特殊処理班に配属される。なんとそこは、怪獣の力の源であるコアの除去だけを専門とした特殊部隊だった。源は特殊処理班の癖のある班員達と交流しながら、怪獣の正体とその本質、そして自分の過去と向き合っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる