魔法少女マヂカ

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
上 下
282 / 301

282『自然体・1』

しおりを挟む
魔法少女マヂカ

282『自然体・1』語り手:マヂカ 




 わ!?


 浴室を出るとお姉ちゃんの綾香が立っている。

「ごめん、ここで話がしたい」

「ちょ、あがるまで待ってよ。まだ裸だし(#-o-#)」

 トキワ荘から帰って、三姉妹の最後にお風呂に入って、やっと出てきたところ。裸どころか、湯気が立って水が滴っている。

「詰子に気付かれたくない、気づけば、詰子のことだ『あたしも連れてって』って言いだすからね」

「でも、こんな洗面所でなくても」

「トイレでもよかったんだけど」

「それは、ありえない!」

「ま、体拭いて、パジャマぐらい着なさい」

「そのつもりよ……ちょ、あっち向いててくれる」

「いいじゃないか、お互い義体だ」

「わたしは、昔からこれなの」

「千年も変化しないボディーなんてあるわけないじゃん」

「それは、わたしの魔力と、たゆまぬスキンケアとかが……」

「義体と同然でしょうが……しかし、いい体してるわよね。わたしなんか、義体なのに、ちょっと肌荒れっぽいし」

「ちょっとメタボかもね……あ、パンツ」

「忘れたんだ……お姉ちゃんの貸したげようか?」

「ちょ、いま穿いてるやつ!?」

「うん、スカート穿いてるから平気だし」

「そういう問題じゃなくて!」

「うそうそ、隠しといたのよ」

「もー!」

「上がりたてで、パジャマ着るのも暑いよね」

「誰のせいじゃ!」

「じゃ、涼しくしてあげる」

「ん?」


「明日、地獄に付き合って」

「え……?」



 いっぺんに涼しくなった。



「定期連絡なら、ヘルホ(ヘルホン=地獄スマホ)でもよかったんじゃないの?」

「「「今回は『出頭したうえで報告しろ』って条件が付いてるのよ」」」

「なにかやった?」

「「「ちゃんとやってるわよ」」」

「ちゃんとやってるのに召喚されるわけないでしょ」

「「「魔王の命令だから、しょうがないでしょ」」」

「どうでもいいけど、三つの頭で一度に喋るのはやめてくれる、耳がおかしくなる」

「「「これが本来のわたし、ケルベロスよ」」」

「だったら、綾香ネエの喋り方やめてよ、アンバランスでキモイ」

「「「あ……ああ、ごめん……いや、すまん。慣れ親しんでしまったもんだから」」」

「犬に戻ったら、肌荒れもメタボも直ってんのね?」

「「「本来の姿だからな」」」

「やっぱ、自然がいちばんなのかもね」

「「「そういう、マジカも」」」

「なによ」

「「「おまえ、言葉遣いが、オッサンの時と今みたいに女の子風の時とがあるぞ」」」

「え、そう?……あ、ああ……言われればそうかもしれない」

 思い返してみると、この令和の時代に目覚めたころは、ケルベロスとたいして違わない言葉遣いだった……それが、いつの間にか、調理研のみんなと変わらない女子高生の喋り方になっている。

「「「それだけ馴染んできたということだろうな、俺もマヂカも」」」

「でも、ブリンダなんか、いつもオッサン言葉でしょ?」

「「「奴はカンザスの田舎の出身だ、あれが地の言葉じゃないのか?」」」

「ドロシーなんかは、ちゃんと女の子言葉だよ」

「「「それは映画の中の話だ、リアルのカンザスは違うのかもしれんぞ」」」

「そう言えば、あいつは、ほとんどカンザスの話とかはしないよね」

「「「まあ、いいんじゃないか」」」

「ノンコも、こっちに戻ってからも京都弁のまま……楽みたいね、京都弁の方が」

「「「まあ、それもいいんじゃないか」」」

 大正時代では、事の成り行きで京都の野々村神社の出身ということになったけど、案外本当なのかもしれない。

「「「日本人の素性なんて、五代も遡れば、たいていはアヤフヤなもんだ」」」

「フフ、なんか、肯定しているような腹立ててるような」

「「「ほっとけ」」」

「そうね……自然がいいわよね……あれ、唐突に電柱が現れた?」

「「「ビールの飲み過ぎかなぁ」」」

「ちょっと、こんなところで用たさないでよ!」

「「「いいじゃないか……自然の摂理ってやつだ」」」

 ジョロジョロジョロ…………プル

「あはは、ケルベロスでも、おしっこの時はプルって震えるんだ( ´艸`)」

「「「自然の摂理だ」」」

「ねえ、ずっと三途の川の傍を歩いてるけど、魔王の城見えてこないわよ……こんなに遠かったっけ?」

 魔王は地獄の一角を借りて城を構えている。大昔に来た記憶をたどっても、三途の川から枝分かれした道が見えてこなければならない。

「「「あ、あそこで道が分かれてる」」」

「いよいよかな」

 

 ところが、行けども行けども一面の荒野で、魔王の城は見えてこない。

「「「もう日本列島縦断くらいの距離は歩いたなあ」」」

「あ、また電柱が見えてきた。ケルベロス、おしっこ近すぎ」

「べつにもようしてきてはいないぞ」

「え……ずっと電柱が続いて……これって、うちの近所じゃ?」

 薄暗いままなんだけど、周囲の景色が輪郭を持ってきて、その角を曲がったら自分の家というところまで戻って来ていた。



 ズゥイン



 ゲームのセーブポイントのようなモニュメントが現れ、その上に、メッセージめいた文字が浮かび上がってきた……。


 これは……?




※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル        ブリンダの使い魔
サム(サマンサ)     霊雁島の第七艦隊の魔法少女
ソーリャ         ロシアの魔法少女
孫悟嬢          中国の魔法少女

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
春日         高坂家のメイド長
田中         高坂家の執事長
虎沢クマ       霧子お付きのメイド
松本         高坂家の運転手 
新畑         インバネスの男
箕作健人       請願巡査
ファントム      時空を超えたお尋ね者
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

魔術師の妻は夫に会えない

山河 枝
ファンタジー
 稀代の天才魔術師ウィルブローズに見初められ、求婚された孤児のニニ。こんな機会はもうないと、二つ返事で承諾した。  式を済ませ、住み慣れた孤児院から彼の屋敷へと移ったものの、夫はまったく姿を見せない。  大切にされていることを感じながらも、会えないことを訝しむニニは、一風変わった使用人たちから夫の行方を聞き出そうとする。 ★シリアス:コミカル=2:8

【完結】ゲーム転生、死んだ彼女がそこにいた〜死亡フラグから救えるのは俺しかいない〜

たけのこ
ファンタジー
恋人だったミナエが死んでしまった。葬式から部屋に戻ると、俺はすぐにシミュレーションRPG「ハッピーロード」の電源を入れた。このゲーム、なぜかヒロインのローラ姫が絶対に死ぬストーリーになっている。世界中のゲーマーがローラ姫の死なない道を見つけようとしているが、未だそれを達成したものはいない。そんなゲームに、気がつけば俺は転生していた。しかも、生まれ変わった俺の姿は、盗賊団の下っ端ゴブリンだった。俺は、ゲームの運命に抗いながら、なんとかこの世界で生き延び、死の運命にあるローラ姫を救おうとする。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...