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267『明神四巫女の決意』

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魔法少女マヂカ

267『明神四巫女の決意』語り手:マヂカ  




 ご無沙汰いたしております、いつぞやは、日光街道の妖退治にご尽力いただき、誠にありがとうございました。


「は、はあ……」

 丁寧なあいさつをされて、ちょっと面食らってしまう。

 神田明神は、関東一円の総鎮守で、その歴史は、このわたし、魔法少女マヂカのそれを超える。

 お遣いの巫女とは言え、慇懃に過ぎるし、何よりも……日光街道の件は、令和の時代の話だ。

 この大正時代の神田明神は知るはずがないのだが。

「順序が合わないと思われるのですね?」

「あ、いや……」

「もっともなことですが、将門さまの御業は時空を超えます。大正のこの時代にあっても、令和での御助力を失念するものではありません」

「そうなのか、いや、そうだろうね。このマヂカも時代を遡っているんだからね。将門さまの力なら、不思議がることも無いよね。それで、ご用件は?」

「はい、すでにご存じの通り、虎の門事件は史実よりも半月早く起こります」

「やっぱり……」

「実は、マヂカさんたちのお働きで、かなりの方々の命が救われました。それに伴い、時の流れそのものが力を増して、歴史は良い方向に向かおうとしています。しかし、それに背こうという力も育ってしまい、虎ノ門の一件は、史実のそれを超えて大きくこじれようとしています」

「うん、わたしも、そう思う」

「将門さまは、今度の虎ノ門事件では正面に立とうとなされています」

「将門さまが?」

「はい、帝都の総鎮守。摂政の宮様の一大事を人任せにしておくことはできぬと仰せられて」

「それは、天晴れなお覚悟だけれど、この大震災で、相当に被害を被られておられるのでは……」

「はい、長年お仕えしてきた我々には、よく分かっております」

 クロ巫女が我々と言って、その姿が四つになった。

 クロ巫女の他に、アカ巫女、シロ巫女、アオ巫女。

 それぞれが太刀や槍や弓矢の得物を手にしてまなじりを上げている。

「失礼だけど、あなたたち、戦った経験は?」

「大丈夫です、元亀天正の昔には、太田道灌や徳川の軍勢に混じって戦ったこともあります!」

 キリ!

「クロ巫女!」「アカ巫女!」「シロ巫女!」「アオ巫女!」

「「「「我ら、神田明神巫女レンジャー!」」」」

 四人揃って戦隊ものめいた決めポーズをとる……まあ、いいんだけどね(^_^;)。


 その夜は、いっしょにお風呂に入って高揚したのか、霧子の部屋でパジャマパーティーのようになった。

 
 三人の中では、いちばん先に風呂からあがった霧子が、わたしの部屋から漏れる声を不信がったが「腹話術で独り言」と苦しい言い訳をしておく。


 夜半、一面の星空に満月が上っているというのに、突然風が強くなった。

 バタバタン!

 半端に閉めておいた窓が開いたかと思うと、月の逆行を受けて真っ黒なものが飛び込んできた。

 ムギュ!

 風切丸を実体化させる間もなく、そいつは、わたしの顔の上に落ちてきた!

 ああ、いてててててて……

「痛いのはこっちだ!」

 怒りに震えて目を開けると、ブリンダがわたしの上で目を回していた。

 

※ 主な登場人物

渡辺真智香(マヂカ)   魔法少女 2年B組 調理研 特務師団隊員
要海友里(ユリ)     魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
藤本清美(キヨミ)    魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員 
野々村典子(ノンコ)   魔法少女候補生 2年B組 調理研 特務師団隊員
安倍晴美         日暮里高校講師 担任代行 調理研顧問 特務師団隊長
来栖種次         陸上自衛隊特務師団司令
渡辺綾香(ケルベロス)  魔王の秘書 東池袋に真智香の姉として済むようになって綾香を名乗る
ブリンダ・マクギャバン  魔法少女(アメリカ) 千駄木女学院2年 特務師団隊員
ガーゴイル        ブリンダの使い魔

※ この章の登場人物

高坂霧子       原宿にある高坂侯爵家の娘 
春日         高坂家のメイド長
田中         高坂家の執事長
虎沢クマ       霧子お付きのメイド
松本         高坂家の運転手 
新畑         インバネスの男
箕作健人       請願巡査

  

 
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