魔法少女マヂカ

武者走走九郎or大橋むつお

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111『勉強会スタート!』

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魔法少女マヂカ

111『勉強会スタート!』語り手:マヂカ 



 エレベーターで四階に着いた。

 四階は国会議事堂で言えば、真ん中のピラミッドのようになったところだ。終戦後進駐軍がやってきた時は、進駐軍専用のダンスホールになるという屈辱的な使われ方をしたが、議事堂の頭にあたる神聖な場所である。

「それは、リアル議事堂ね。ここは、単なる勉強部屋。ピラミッドの構造は、人間に集中力をもたらすのよ」

 サムが講釈してくれて、みんなジャージに着替えた。二泊三日の勉強会に耐えるためには、身体的に動きやすく、かつルーズにならないものが相応しい。

「さ、頑張ろう!」

 サムの掛け声で、十人掛けくらいの座卓に収まる。

 それぞれの席は座椅子型のアーロンチェアだ、適度に体重が分散されて、体に負担がかからない造りになっている。

「ゲーミングチェアに似てる!」

 ノンコが、真っ先に喜ぶ。こいつ、家でゲームばっかやってんじゃないかあ?

「あ、あ、勉強にも使ってっから(^_^;)」

 たぶん嘘だ。

「まず、各自、やりたい教科からやろう。一時間やって調子出なかったら、統一して同じのをやるかどうか、やり方も含めて検討」

「わたしもお?」

「ノンコは……」

 サムが言いよどんだのを友里が引き受けた。

「ノンコの欠点、国・数・英・社だからさ、取りあえず、みんなで試験範囲の単語とか述語とか書きだして、それを三回ずつ書き写すところからやってみよ。まずは頭つかわずに、作業的にやれるようなことからさ」

「あ、いいかも。理屈とか考えたら五分で熟睡する自信ある!」

「自慢になるかあ!」

 ポコンと友里が食らわせる。

「あいた!」

「じゃ、かかろ!」

 真面目の清美がスタートを宣言。

 いっぺんにやるとノンコがパニックになるので、範囲の半分を書き出したところで、ノンコに渡した。

「うえーー」

「文句言わずに、さっさとやる!」

「今日の友里、こわいよお」

「できなきゃ、ご飯ないよ」

「あー、それは御勘弁」

 
 そうして十分ほどが過ぎ、みんな集中しはじめた。

 ピラミッドの中は心地よい緊張感のうちに、シャーペンのサラサラいう音だけが響く。

 サラサラサラ サラサラサラ サラサラサラ サラサラサラ スースー サラサラサラ サラサラサラ スースー

 サラサラサラ サラサラサラ サラサラサラ サラサラサラ スースー サラサラサラ サラサラサラ スースー


「「「「ん?」」」」


 気づくと、ノンコが寝息を立てている。

「ノンコ」

「フ、フェ?」

「ほら、ヨダレ拭いて」

「あ、あ、ごめん」

 ヨダレを拭いて二分もすると、また寝息が聞こえる。

「ノンコ!」「フ、ファ、ごめーん」

 で、今度は一分で寝息。

 こんなことを四五回繰り返す。

「なかなかの強敵ねえ」

「どうしようもないなあ」

「どうしよう……」


 しばし、三人で腕を組む。このまま放置して、わたしたちだけ勉強するわけにもいかない。


「仕方だない、ノンコの頭の中に入って直してやろう」

 サムがすごいことを言う。

「頭の中に入るって?」

「友里と清美も魔法少女になって、ノンコの頭の中の敵をやっつける!」

「「わたしたちが!?」」

「魔法はダメだぞ」

「時空の狭間だから、ノープロブレム!」


 魔法少女が四人になった。

 この時空の狭間に居る間だけらしいけど。

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