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091『M資金・28 ハートの女王・4』
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魔法少女マヂカ
091『M資金・28 ハートの女王・4』語り手:ブリンダ
勅任議員に任ぜられると同時に名誉ある人質として女王の宮殿に送られることとなった。
「オレたちの車を使えよ!」
言ってみたが遅かった。T型フォードの高機動車はいつの間にか姿が見えなくなって、代わりに議会専用の車が用意された。
「一応の形式だから辛抱してくれ。宮殿に着くまではドアは開かない。自動運転になっているから運転手を買収することもできない。しかし、ガードが一人騎馬で同行するんで安心してくれたまえ。君たちが人質として宮殿に到着して初めて議会が開ける。くれぐれもよろしくな」
議長のおざなりな説明が終わると、オレたちを載せた護送車はゆっくりと動き出した。
「あ、あの護衛は!?」
議事堂の門を出たところで騎乗の護衛が待ち受けていたが、それは、オレたちを追いかけていたビーフイーターのキャロラインだ。てっきり撒いたつもりになっていたが、油断がならない。
「どうもハメられたような気がする……」
胸の谷間から首だけを覗かせたマヂカが眉を寄せる。
「同感だ、敵は女王なのか議会なのか、はたまたビーフイーターどもなのか……」
カオスにやってきて以来、いろんなことがあったが、その都度目の前の敵がコロコロ変わって、なんだか本質的なことを見落としているような気がする。
「やっぱ、チェシャネコでしょ!」
マヂカが右手と右の前足を挙げて言い切った。
「ああ、しかし、ここしばらく現れていないなあ」
「自分が出るまでもないとタカをくくってるのかなあ、護送車に載せられて手も足も出ないし」
『法の支配よ』
護送車が林の脇を通ると、陰になって車内が暗くなった。フロントガラスが半ば鏡になって、そこに半分透けた鏡の国のアリスが映ったのだ。
「アリス、無事だったんだな」
『一応ね、やっぱ、鏡からは出られないけど』
「で、法の支配というのはどういう意味だ?」
『チェシャネコは、常に最強のものに化ける。ハートの女王の世界は議院内閣制で、法の支配が徹底している。だから、魔法少女は本来の力が出せないのよ。法という形のないものに化けているから、姿そのものがないしね』
「姿のないものは、オレやマヂカの力をもってしても攻撃のしようがないぞ」
「わたしも、牛女の姿を解除してもらわなきゃ力の出しようもないんだけど」
『……リスクはあるけど、いい考えがあるわ』
「「なんだ!?」」
『それは……』
マヂカと身を乗り出すと、護送車は林の日陰から出て明るくなってしまって、フロントガラスのアリスの姿は消えてしまった。
ビーフイーターのキャロラインが手を挙げて、護送車が停止した。
「なんだ、もう着いたのか?」
だが、街道の途中で宮殿らしきものは、どこにも見えない。
―― 昼食休憩にする、シートの背もたれからランチが出てくるから食べろ ――
車内のスピーカーを通してキャロラインの声がした。
人質のランチだから期待は出来ない。
ズイーーーーーン
シートの背もたれから出てきたのは、超特盛の牛丼だった。
チープ感は否めないが、味とボリュームに問題は無い。
「牛丼だぞ、牛女は共食いにならないか?」
「胃袋は人の体の部分にあるからいいのだ(^_^;)」
都合のいいことを言う。
キャロラインはと見ると、四人前はあろうかと思われる牛丼のファミリーパックを食べている。
さすがは、ビーフイーターだ!
091『M資金・28 ハートの女王・4』語り手:ブリンダ
勅任議員に任ぜられると同時に名誉ある人質として女王の宮殿に送られることとなった。
「オレたちの車を使えよ!」
言ってみたが遅かった。T型フォードの高機動車はいつの間にか姿が見えなくなって、代わりに議会専用の車が用意された。
「一応の形式だから辛抱してくれ。宮殿に着くまではドアは開かない。自動運転になっているから運転手を買収することもできない。しかし、ガードが一人騎馬で同行するんで安心してくれたまえ。君たちが人質として宮殿に到着して初めて議会が開ける。くれぐれもよろしくな」
議長のおざなりな説明が終わると、オレたちを載せた護送車はゆっくりと動き出した。
「あ、あの護衛は!?」
議事堂の門を出たところで騎乗の護衛が待ち受けていたが、それは、オレたちを追いかけていたビーフイーターのキャロラインだ。てっきり撒いたつもりになっていたが、油断がならない。
「どうもハメられたような気がする……」
胸の谷間から首だけを覗かせたマヂカが眉を寄せる。
「同感だ、敵は女王なのか議会なのか、はたまたビーフイーターどもなのか……」
カオスにやってきて以来、いろんなことがあったが、その都度目の前の敵がコロコロ変わって、なんだか本質的なことを見落としているような気がする。
「やっぱ、チェシャネコでしょ!」
マヂカが右手と右の前足を挙げて言い切った。
「ああ、しかし、ここしばらく現れていないなあ」
「自分が出るまでもないとタカをくくってるのかなあ、護送車に載せられて手も足も出ないし」
『法の支配よ』
護送車が林の脇を通ると、陰になって車内が暗くなった。フロントガラスが半ば鏡になって、そこに半分透けた鏡の国のアリスが映ったのだ。
「アリス、無事だったんだな」
『一応ね、やっぱ、鏡からは出られないけど』
「で、法の支配というのはどういう意味だ?」
『チェシャネコは、常に最強のものに化ける。ハートの女王の世界は議院内閣制で、法の支配が徹底している。だから、魔法少女は本来の力が出せないのよ。法という形のないものに化けているから、姿そのものがないしね』
「姿のないものは、オレやマヂカの力をもってしても攻撃のしようがないぞ」
「わたしも、牛女の姿を解除してもらわなきゃ力の出しようもないんだけど」
『……リスクはあるけど、いい考えがあるわ』
「「なんだ!?」」
『それは……』
マヂカと身を乗り出すと、護送車は林の日陰から出て明るくなってしまって、フロントガラスのアリスの姿は消えてしまった。
ビーフイーターのキャロラインが手を挙げて、護送車が停止した。
「なんだ、もう着いたのか?」
だが、街道の途中で宮殿らしきものは、どこにも見えない。
―― 昼食休憩にする、シートの背もたれからランチが出てくるから食べろ ――
車内のスピーカーを通してキャロラインの声がした。
人質のランチだから期待は出来ない。
ズイーーーーーン
シートの背もたれから出てきたのは、超特盛の牛丼だった。
チープ感は否めないが、味とボリュームに問題は無い。
「牛丼だぞ、牛女は共食いにならないか?」
「胃袋は人の体の部分にあるからいいのだ(^_^;)」
都合のいいことを言う。
キャロラインはと見ると、四人前はあろうかと思われる牛丼のファミリーパックを食べている。
さすがは、ビーフイーターだ!
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