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51『再びジーナの庭へ』

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真夏ダイアリー

51『再びジーナの庭へ』    



 気が付くと、ジーナの庭にいた。

 そう、あの時空の狭間のような、穏やかでバーチャルな空間。
 
 わたしは、自然に、ジーナの四阿(あずまや)に足を向けた。

「……お久しぶりです」

「わたしには、ついさっき。ここは時間の流れ方がちがうから」
「すっかり、ジーナさんのナリが身に付いてきましたね」
「バカを待つには、この方がいいかなって……」
「バカって、わたしのことですか?」
「かもね……でも、あなたはフィオの役回り。ポルコ一人じゃ空中戦はできないわ」

「じゃ……」

「そう、省吾のやつ。危ないから一度引き戻したんだけどね」

「あ……昨日図書室で見たのが?」
「ええ、そのあとすぐに向こうに行っちゃったけど」
「え、また行っちゃったんですか!?」
「昭和15年から戻ったばかりだっていうのにね」
「昭和15年……限界を一年超えてる」
「三国同盟を阻止するんだって。あれがなきゃ、アメリカと戦争せずにすんだから……むろん失敗。戻ったところを、あなたに気づかれるようじゃね」

「じゃ、今度は?」

「昭和16年のアメリカ……」
「なにをやってるんですか?」
「さあ……連絡をとれないようにしているから、あの子」
「わたしは、なにを?」
「うん……その決心がつかないまま、あなたを呼んじゃった」
「じゃ……」
「お茶でも飲んで、わたしも考えるから」
「はい……」

 アドリア海は、どこまでも青かった……波音……紅茶のかぐわしい香り……。

 ふと我に返ると、ジーナさんの姿が無かった。
 テーブルの上に手紙があった。

――けっきょく決心がつきません。ラピスラズリのサイコロを振って、出た目に従ってください。

 わたしは、ラピスラズリのサイコロを振った。

 そんなに力を入れたわけじゃないのに、サイコロは、テーブルの上をコロコロと転げ回った。そして「赤い飛行機」という面で止まりかけて、コロンと転げた。

 サイコロは、1942年6月2日を指して止まった……。

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