7 / 15
いざ潜入
しおりを挟む
転校の準備は一両日中に整えられた。正規の手続きを踏まなかったことは勿論だろう。どんな手を使ったのやら。
「俺の元の学校からの転出には、親の許可とかいるんじゃねぇの?」
「そこは、長老会がお前の親に話をつけた」
静彦は淡々と言うが、耀は口元を歪めた。それは、耀の両親がどこまでも耀を見放し、どこで何をしようと構わないと判断したということだ。
「まぁいいや。……雫、さっさと食べちまいな」
「ちょっとまって」
雫は耀の作ったフレンチトーストの最後の一切れを名残惜しそうに口に入れると、牛乳で流し込み、立ち上がると、赤茶のベレー帽を被る。今日の彼女の姿は、白いシャツに赤茶のプリーツスカート、同じ色のベレー帽。制服の学校ではないが、制服風を意識してみたという。幼いとは言え、女の考えることはわからん、と耀は思考を放棄する。あるいは、制服というものへの憧れがあったのかもしれない。
耀はフード付きのスエットとジーンズ。静彦は白シャツと黒のコットンパンツだ。目立たないことを最優先にした格好だが、こいつはどうしたって目立ってしまうかもな、と静彦の横顔の長い睫毛を見て思う。
まぁ、仕方ない。出たとこ勝負である。
「ほら雫、行くぞ」
耀が差し伸べた手を、雫が取って、玄関を出る。鬼退治などという物騒な生業をしていようと、朝というのはおしなべて忙しないものなのだな、と耀は妙な感慨を覚えた。
登校した校門前には、三人を──正確に言えば耀を待ち構えている人物がいた。
「あーっ、耀! LINEはもらってたけど、マジで本当に嘘じゃなく転校してきたの!?」
ヒロカだ。今日はオフショルダーの薄手のニットに黒い革のショートパンツ、花模様の編まれた薄いタイツという格好だ。
「おい耀。誰だ、この頭の軽そうな女性《にょしょう》は」
「美少年が増えた!? でもめっちゃ失礼! あっ、雫ちゃんおはよう、そのお洋服めっちゃ可愛いね!」
「どうも……」
せわしなく騒ぐヒロカに、雫はまた耀の背に隠れてしまう。どうもヒロカのことが苦手なようだ。
周囲の注目を集めた事に気づいた一行は、とりあえずヒロカの案内で小等部の職員室に向かう。小学生たちの中に、静彦と耀、ヒロカの身長はぴょこんと抜きん出いて、指を指されて噂されているのが分かる。
「ヒロカ。なんでいんだよおまえ。不登校のヒッキーのくせに」
「あっひど。これでも心配したんだからね、突然転校してくるとかいう耀のこと」
「……悪かったよ」
耀はヒロカの髪をグシャグシャと撫で、ヘアセットをめちゃくちゃにするな、と怒られた。
そんな耀のスエットの裾を、雫がクイクイと引いた。耀が振り返ると、雫は妙に拗ねたような、怒ったような顔で耀を見上げていた。
「……耀」
「? なんだよ」
「耀は、私の従者なんだからね。私を一番にしなきゃいけないんだから」
わけがわからないまま耀が頷くと、雫は満足そうな笑顔になった。それを見ていた静彦がため息を付いた。
小等部の職員室に入って中を見回せば、眼鏡をかけたひょろりとした若い男性が立ち上がった。
「ああ、今日転校してきた神木《かみき》雫さんだね。君たちは──」
「兄の静彦です」
「従兄弟の耀です」
同居を合理的に説明するため、そういうことにしてある。
「付添のヒロカでぇす」
とヒロカがピースサインをするが、それは全員が無視する。
「そうですか。僕が雫さんの担任になる、藤村《ふじむら》芳雄《よしお》です。後は任せて、君たちは高等部の方へ行ってください」
「ありがとうございます。先生、雫をよろしくお願いします」
静彦は折り目正しく頭を下げ、耀も見様見真似でそれに倣った。
雫に手を振ると小等部の校舎を出て、高等部へ向かう。
「藤村先生てねぇ、去年よそから赴任してきた先生なんだけど、優しくって面倒見が良いって評判いいよ。雫ちゃんも安心だねぇ」
ヒロカはのんびりと言うが、静彦の目は鋭くなる。『去年から』、というところに反応したのだ。藤浪学園で異変が起き始めたのも去年からだった。
「他に、去年から赴任してきた教師は?」
「え? えっとぉ、スクールカウンセラーの皆木聡子《みなきさとこ》先生とぉ、他に誰かいたっけ──中等部と少等部はわかんないなぁ」
「藤村先生のことは、なんで知ってたんだ?」
「藤村先生は情報科学の先生で、パソコン操作とかプログラミングとか教えてるの。高等部でも授業してるから、それでね」
藤村芳雄と、スクールカウンセラーの皆木聡子が、静彦の中で容疑者として数えられたのが分かる。
「……まだ、教師と決まったわけじゃないんじゃね?去年から入ったってなら、今年の二年生も同じ条件だろ」
「ああ。だが、覚えておくに越したことはない。中等部と小等部の方も調べさせる」
そう言う静彦はどこまでも冷静で、その表情は冷徹といってもいいほどだ。今朝の朝食の時の少し幼い表情が幻だったかのようだ。
耀と静彦は同じクラスだったが、ヒロカとはクラスが別れた。ヒロカが腕を大きく振って廊下を去っていくのを見送った後、静彦は周囲に聞こえないよう密やかな声で耀に話しかけた。
「今のところ鬼の気配はないが、ボーッとするんじゃないぞ。感覚は常に研ぎ澄ましていろ」
その上からの物言いに、耀はかちんと来る。
「うっせぇな、どんな感覚か、説明くらいしろよ──」
そう言ったとき、チリ、と肌を焦がすような感覚があった。これが『鬼の気配』なのだと、理屈ではなく理解する。
「静彦」
「行くぞ!」
二人は同時に駆け出す。廊下を歩く他の生徒達が目を丸くして二人の背を見送った。
たどり着いたのは人気のない校舎裏だ。そこには二人の男子生徒がいた。もう一人は尻餅をついて、必死に後ずさろうとしていた。
そしてもう一人、うつぶせに地に伏している方に見覚えがあった。
「──山田……」
先日耀が校門前で声をかけた少年だ。苦しげに呻くその肩には、折れた木の枝が突き刺さっていた。そして、その枝には、濃く黒い靄が纏わりついていた。
「耀、見ろ」
静彦に言われて見上げれば、山田のそばに植えられた木の上、途中でぽきりと折れた枝があり、あれが山田に突き刺さったのだろう。そして、その枝に絡みつくように、黒く長い蛇がいた。大きく口を開け、こちらに牙を向けて、シャーッと威嚇してみせる。
静彦が蛇に向けて何か札のような物を投げつければ、あっという間に霧散した。再び形を作る様子も見せない。静彦は舌打ちする。
「弱すぎる。本体じゃないな──分霊か」
耀と静彦は、尻餅をついている生徒の方を振り向く。彼はガクガクと震えていた。
「ぼ、僕は、僕は、何も……っ!」
彼の見開かれた目から、黒い靄が涙のように流れ出す。口が開かれ、その口内も黒い靄で真っ黒に染まっていた。そして、凄まじい咆哮とともに、黒い靄が噴水のように、彼の中から溢れてくる。
「うおっ
耀は思わず一歩引く。静彦は冷静に護符を構えた。
「憑いていた分霊が離れようとしているんだ──祓うぞ」
黒い靄が護符に祓われるのと、先程の咆哮を聞きつけたらしい教師たちがやって来るのは、ほとんど同時だった。
「おい、何をしている!!」
「うわ、やべ」
逃げるかどうか迷う耀だったが、静彦は涼しい顔で教師らに向き直る。
「事故が起きたようです。今、先生たちを呼びに行こうかと」
教師たちは、平然とそう言う静彦の顔と、倒れた山田、座り込んでいる少年の顔を見比べる。座り込んだ少年は、今やぽかんと口を開け、目を見開いていた。
「……僕、なんでここに?」
教師たちは顔を見合わせた。
「俺の元の学校からの転出には、親の許可とかいるんじゃねぇの?」
「そこは、長老会がお前の親に話をつけた」
静彦は淡々と言うが、耀は口元を歪めた。それは、耀の両親がどこまでも耀を見放し、どこで何をしようと構わないと判断したということだ。
「まぁいいや。……雫、さっさと食べちまいな」
「ちょっとまって」
雫は耀の作ったフレンチトーストの最後の一切れを名残惜しそうに口に入れると、牛乳で流し込み、立ち上がると、赤茶のベレー帽を被る。今日の彼女の姿は、白いシャツに赤茶のプリーツスカート、同じ色のベレー帽。制服の学校ではないが、制服風を意識してみたという。幼いとは言え、女の考えることはわからん、と耀は思考を放棄する。あるいは、制服というものへの憧れがあったのかもしれない。
耀はフード付きのスエットとジーンズ。静彦は白シャツと黒のコットンパンツだ。目立たないことを最優先にした格好だが、こいつはどうしたって目立ってしまうかもな、と静彦の横顔の長い睫毛を見て思う。
まぁ、仕方ない。出たとこ勝負である。
「ほら雫、行くぞ」
耀が差し伸べた手を、雫が取って、玄関を出る。鬼退治などという物騒な生業をしていようと、朝というのはおしなべて忙しないものなのだな、と耀は妙な感慨を覚えた。
登校した校門前には、三人を──正確に言えば耀を待ち構えている人物がいた。
「あーっ、耀! LINEはもらってたけど、マジで本当に嘘じゃなく転校してきたの!?」
ヒロカだ。今日はオフショルダーの薄手のニットに黒い革のショートパンツ、花模様の編まれた薄いタイツという格好だ。
「おい耀。誰だ、この頭の軽そうな女性《にょしょう》は」
「美少年が増えた!? でもめっちゃ失礼! あっ、雫ちゃんおはよう、そのお洋服めっちゃ可愛いね!」
「どうも……」
せわしなく騒ぐヒロカに、雫はまた耀の背に隠れてしまう。どうもヒロカのことが苦手なようだ。
周囲の注目を集めた事に気づいた一行は、とりあえずヒロカの案内で小等部の職員室に向かう。小学生たちの中に、静彦と耀、ヒロカの身長はぴょこんと抜きん出いて、指を指されて噂されているのが分かる。
「ヒロカ。なんでいんだよおまえ。不登校のヒッキーのくせに」
「あっひど。これでも心配したんだからね、突然転校してくるとかいう耀のこと」
「……悪かったよ」
耀はヒロカの髪をグシャグシャと撫で、ヘアセットをめちゃくちゃにするな、と怒られた。
そんな耀のスエットの裾を、雫がクイクイと引いた。耀が振り返ると、雫は妙に拗ねたような、怒ったような顔で耀を見上げていた。
「……耀」
「? なんだよ」
「耀は、私の従者なんだからね。私を一番にしなきゃいけないんだから」
わけがわからないまま耀が頷くと、雫は満足そうな笑顔になった。それを見ていた静彦がため息を付いた。
小等部の職員室に入って中を見回せば、眼鏡をかけたひょろりとした若い男性が立ち上がった。
「ああ、今日転校してきた神木《かみき》雫さんだね。君たちは──」
「兄の静彦です」
「従兄弟の耀です」
同居を合理的に説明するため、そういうことにしてある。
「付添のヒロカでぇす」
とヒロカがピースサインをするが、それは全員が無視する。
「そうですか。僕が雫さんの担任になる、藤村《ふじむら》芳雄《よしお》です。後は任せて、君たちは高等部の方へ行ってください」
「ありがとうございます。先生、雫をよろしくお願いします」
静彦は折り目正しく頭を下げ、耀も見様見真似でそれに倣った。
雫に手を振ると小等部の校舎を出て、高等部へ向かう。
「藤村先生てねぇ、去年よそから赴任してきた先生なんだけど、優しくって面倒見が良いって評判いいよ。雫ちゃんも安心だねぇ」
ヒロカはのんびりと言うが、静彦の目は鋭くなる。『去年から』、というところに反応したのだ。藤浪学園で異変が起き始めたのも去年からだった。
「他に、去年から赴任してきた教師は?」
「え? えっとぉ、スクールカウンセラーの皆木聡子《みなきさとこ》先生とぉ、他に誰かいたっけ──中等部と少等部はわかんないなぁ」
「藤村先生のことは、なんで知ってたんだ?」
「藤村先生は情報科学の先生で、パソコン操作とかプログラミングとか教えてるの。高等部でも授業してるから、それでね」
藤村芳雄と、スクールカウンセラーの皆木聡子が、静彦の中で容疑者として数えられたのが分かる。
「……まだ、教師と決まったわけじゃないんじゃね?去年から入ったってなら、今年の二年生も同じ条件だろ」
「ああ。だが、覚えておくに越したことはない。中等部と小等部の方も調べさせる」
そう言う静彦はどこまでも冷静で、その表情は冷徹といってもいいほどだ。今朝の朝食の時の少し幼い表情が幻だったかのようだ。
耀と静彦は同じクラスだったが、ヒロカとはクラスが別れた。ヒロカが腕を大きく振って廊下を去っていくのを見送った後、静彦は周囲に聞こえないよう密やかな声で耀に話しかけた。
「今のところ鬼の気配はないが、ボーッとするんじゃないぞ。感覚は常に研ぎ澄ましていろ」
その上からの物言いに、耀はかちんと来る。
「うっせぇな、どんな感覚か、説明くらいしろよ──」
そう言ったとき、チリ、と肌を焦がすような感覚があった。これが『鬼の気配』なのだと、理屈ではなく理解する。
「静彦」
「行くぞ!」
二人は同時に駆け出す。廊下を歩く他の生徒達が目を丸くして二人の背を見送った。
たどり着いたのは人気のない校舎裏だ。そこには二人の男子生徒がいた。もう一人は尻餅をついて、必死に後ずさろうとしていた。
そしてもう一人、うつぶせに地に伏している方に見覚えがあった。
「──山田……」
先日耀が校門前で声をかけた少年だ。苦しげに呻くその肩には、折れた木の枝が突き刺さっていた。そして、その枝には、濃く黒い靄が纏わりついていた。
「耀、見ろ」
静彦に言われて見上げれば、山田のそばに植えられた木の上、途中でぽきりと折れた枝があり、あれが山田に突き刺さったのだろう。そして、その枝に絡みつくように、黒く長い蛇がいた。大きく口を開け、こちらに牙を向けて、シャーッと威嚇してみせる。
静彦が蛇に向けて何か札のような物を投げつければ、あっという間に霧散した。再び形を作る様子も見せない。静彦は舌打ちする。
「弱すぎる。本体じゃないな──分霊か」
耀と静彦は、尻餅をついている生徒の方を振り向く。彼はガクガクと震えていた。
「ぼ、僕は、僕は、何も……っ!」
彼の見開かれた目から、黒い靄が涙のように流れ出す。口が開かれ、その口内も黒い靄で真っ黒に染まっていた。そして、凄まじい咆哮とともに、黒い靄が噴水のように、彼の中から溢れてくる。
「うおっ
耀は思わず一歩引く。静彦は冷静に護符を構えた。
「憑いていた分霊が離れようとしているんだ──祓うぞ」
黒い靄が護符に祓われるのと、先程の咆哮を聞きつけたらしい教師たちがやって来るのは、ほとんど同時だった。
「おい、何をしている!!」
「うわ、やべ」
逃げるかどうか迷う耀だったが、静彦は涼しい顔で教師らに向き直る。
「事故が起きたようです。今、先生たちを呼びに行こうかと」
教師たちは、平然とそう言う静彦の顔と、倒れた山田、座り込んでいる少年の顔を見比べる。座り込んだ少年は、今やぽかんと口を開け、目を見開いていた。
「……僕、なんでここに?」
教師たちは顔を見合わせた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
若蕾燦華
tib
ファンタジー
異世界からの触手型生命体イノスと人の戦争を終結させた魔法少女と呼ばれる者達。
彼女らの献身と犠牲によって、今日までイノスと人は辛うじてではあるが、共存を続けていた。
正義感の強い女子高生、宇津木 京香はリェズィユと魔法少女として世界を守る契約を結んでいた。
それがどんなに過酷な道行きになるとも知らず。
京香は平和の為に戦い続けるのだが次第に身も心も蝕まれていく…。
タイトル付けました。
ブラフマン~疑似転生~
臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。
しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。
あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。
死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。
二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。
一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。
漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。
彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。
――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。
意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。
「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。
~魔王の近況~
〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。
幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。
——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる