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二章 獣人の国

54 治験開始

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 ナラタさんの病室で2人の協力を取りつけた後、私は2階の病室を回って治験に協力していただける患者さんを探し、結果ナラタさん含め計7人が治験に協力してくれることになった。
 私は病室に戻ってさすぐに誰にどのような薬を処方するか考え始めた。
 私は持ってきたカバンから紙束を取り出し書きつける。



患者A
病状 胃がん 転移なし 薬物投与なし
計画 ノッカクを全量処方

患者B
病状 膵臓がん 肺に転移あり
   医師からは痛み止めパルファルリン処方
計画 オシアツを全量処方

患者C
病状 脾臓がん 胃に転移あり
   医師から消化不良にナシアトン
   吐き気止めメロトクロプラミ
   痛み止めの処方
計画 ソレリナを全量

患者D
病状 肺がん 転移なし
   痛み止めの処方
計画 エヴァリスを全量

患者E
病状 脳腫瘍 転移なし
   抗炎症薬メタテキタゾン
   痛み止め処方
計画 ノッカクとオシアツを1:1

患者F
病状 乳がん 周辺のリンパ節に転移あり
   痛み止めと抗不安薬の処方
計画 ノッカク、オシアツ、ソレリナ1:1:1

患者G
病状 大腸がん 転移なし
   下痢止めナグオリエス処方
計画 全種類を1:1:1:1



 (まずはこれで進めていこう)

 薬草の投与は最初は1週間。それから治療魔法をかける。
 効かなければ追加で1週間ずつ投与期間を伸ばす。
 薬草の血中濃度は投与から数日で一定になるはずなので、4週で効果がなければ処方を見直すことにする。
 これを成功するまで繰り返す。
 紙に書きまとめたものをナラタさんの棚の一角しまい、付き添い家族用の狭いベッドに横たわる。
 そして翌朝、治験スタートさせた。



8日目 治療魔法を実施
起動詞は消滅治療エクスティンクティオで無事発動

患者A   消滅治療エクスティンクティオを施術
    がんが1ミリ増大
患者B 原発巣に 消滅治療エクスティンクティオを施術 1ミリ増大
    肺転移巣に影響なし
患者C 施術部のがんが1ミリ増大
患者D 同上
患者E 同上
患者F 同上
患者G 同上

考察・結果
薬草の効果は出ていないと思われる。
患者が飲んでいる他の薬は影響しないと思われる。
再生治療プロモーティオががんに作用した時、増大は一律1ミリ程度となるが、 消滅治療エクスティンクティオも同じようにがんが1ミリ増大した。
新魔法の発動を確認。
再生治療プロモーティオを元にしているため同じようにがんが増大したと考えられる。
 消滅治療エクスティンクティオをかけなかったがんには影響しない。
起動詞は古ジルタニア語の祖先の言葉に由来しているのではないかと仮定したが、さらなる研究が求められる。



15日目
患者Aに 消滅治療エクスティンクティオを施術
がんが1ミリ増大

全患者、結果は昨週と変わらず。

考察・結果
効果出ず。



22日目
結果は先週と変わらず。



29日目
全員が施術後にがんが増大。
今日から処方を変更する。

患者A ノッカクとソレリナを1:1
患者B ノッカクとエヴァリスを1:1
患者C オシアツとソレリナを1:1
患者D オシアツとエヴァリスを1:1
患者E ソレリナとエヴァリスを1:1
患者F ノッカクとソレリナを2:1
患者G ノッカクとソレリナを1:2



36日目
全患者に施術。がんが増大。



43日目
同上



50日目
同上



57日目
結果は変わらず。
本日から処方を変更。

患者A ノッカクとエヴァリスを2:1
患者B ノッカクとエヴァリスを1:2
患者C オシアツとソレリナを2:1
患者D オシアツとソレリナを1:2
患者E ソレリナとエヴァリスを2:1
患者F ソレリナとエヴァリスを1:2
患者G ノッカク、オシアツ、ソレリナ2:1:1



64日目
効果なし



 ナラタさんの病室の隣に入所しているテネラさんの病状が深刻になってきた。
 膵臓にあるがんは治療魔法のせいもありかなり大きくなり慢性的に強い痛みに苛まれるようになった。
 私は彼女のベッド脇に立ち、看護師が痛み止めの点滴を投与するのを片目で見ながら今後の話をする。

 「これ以上の治験は本当に命に関わります」
 「……そうか。じゃあ続けてくれ」
 「っ! どうしてっ」
 「このまま生きていても点滴に繋がれて痛みに苦しみながら天井を眺めるだけ。だったらいっそ早く楽になりたい」

 私も同じことを考えたことがあった。
 同じように病院のベッドの上で。
 どんどん思い通りにならなくなる体が厭わしかった。
 この人の今は私がかつて通った道。そして今からゆくのも私が通った道__

 「……やり残したことはないですか?」
 「うーん……いや、ないな。ここに入る前にそういうのは済ませてきた」
 「そうですか。……では明日以降も同じようにやっていきますね」
 「……人殺し……」

 点滴の処理を終えた看護師が去り際にボソリと呟いた。

 「気にするな。私は同意の上なんだから。人殺しと言うんなら病気が悪い」
 「すみません……」

 私はただ頭を下げるしかできなかった。
 私には何を言ってもいいが入所者さんに要らぬ心労はかけないでもらいたい。
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