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第7話 入学式にのぞんだ
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「新入生は講堂で式典が開催されまーす! 焦らず走らず、進んでくださーい!」
何年か上の先輩だろう、自分たちよりも大きな少年たちが、係を示すたすきを掛けて要所で新入生を誘導していた。
立て看板を持ちながら道案内をしてくれる人が曲がり角や分かれ道に、それとは別に、恐らく上位貴族なのだろう面々には個別の案内人が付いていた。いずれも全部在校生っぽい。多分下級貴族から平民までの子たちだろう。
僕とアレンにも、案内人がついていた。腐ってもけっこう上位の貴族だからだ。例え家では碌でもない扱いを受けていたとしても、外に出れば相応にされる。ギャップに戸惑う。
実際、恐らく下級貴族だろう案内人の女生徒は、アレンをみてほのかに頬を染め、僕を見てスン……っとした顔になった。顔だけは笑顔をキープしてたけど、目の温度がまるで違うのが笑える。
まぁ分かる。僕の顔はすごく微妙だ。同じ家の兄たちも皆美形だから、僕だけこれなのは期待をしてたらその分だけ詐欺かよって思うよね。
メガネ外したら少しはマシになるのでは……と思ったこともありました。でも外せないんだよなぁ、このメガネ。なぜか。……もうキャラデザがそうだからそうなっているとしか言いようがない。ワケが分からない。
名前も大概な感じだから、最初に呼ぶ時「これ本当にこの名前で呼んで良いのか……?」って戸惑いが顔に出ていた。仕方がないから自分から名乗った。間違いじゃないです、これが僕の名前です。ひっどいよね。笑う。
今も会話はほとんどアレンと彼女の間だけで成立している。絶妙に話しかけられないし、例えこちらから多少話しても話が全く膨らまない。全力で「あなたはお断り」「あなたには興味ないです」ってされてて傷つくけど逆にちょっとおもしろくなってきた。
「オランディオ子爵令嬢、案内ありがとうございました」
「いいえ、案内させて頂けましたこと、光栄に存じますわ」
無難な挨拶の後、何かを待つようにしばし佇む嬢をアレンはしらっと無視して講堂へ入っていった。
その背中を見送って、そして周囲をさらりと見回して、なるほどと思った。先導してきた先輩は案内した後輩が招いてくれたら中には入れるのか。大半がそうして先輩を招いて一緒に中に入っている。案内してくれている人も各派閥からの派遣だろうから、招き入れるのがそのままその派閥入りみたいなところもあるのかもしれない。
まぁ、だとしても別にどうでも良いけど。
これまでの冷淡さが嘘のように縋るような視線を向けられて、僕も彼女ににっこり笑顔でお別れを告げた。
これが兄達の派閥からの派遣案件だと後でお叱り受けそうだけど、それはそれで別に良いかなって。
アレンに追いついて横に並ぶと、彼が視線だけで「良かったの?」と聞いてきたから、僕も視線だけで「なんのこと?」と返してみた。……笑われてしまった。
入学式の後は懇親会。
ここで、ようやくのヒロインのご登場だ。
このゲームには、3人のヒロインがいる。
第1ヒロインは、登場自体はもう少し後。アレン的には幼馴染みの懐かしい少女になる。今時点では、彼女はきっと教会で聖女の歳に目覚めて修行を開始した頃合いだろう。
第3ヒロインは、登場は物語の最後の方になる。前魔王の娘で魔族の少女。現魔王に殺された前魔王の仇を討つため、主人公に協力してくれる子だ。仇討ちが目的のくせに自分の命や身体をはってアレンを助けてもくれる。
今回登場するのは第2ヒロインだ。
この国――ローレン王国の第三王女で、僕らと同学年の同級生。名前はイリス=ライン=ローレンアース。成績優秀、公正で優しい人柄の少女だ。
ゲームのスタートは学園卒業時だから、ゲーム内で彼女と共に過ごす時間があるわけじゃない。NPCとの会話の中で、優秀なのに兄弟から理不尽に虐げられるアレンを気に留め、不都合が生じ過ぎない様に気を配っていたことが分かる程度だ。
彼女の容姿はまさにザ・お姫様、という感じだった。金髪碧眼、ややスレンダーながらスタイルも良し。……まぁ最後までスレンダーのままではあるんだけど。
生徒代表として挨拶を述べる彼女を見ながら、こっそりとアレンの横顔を盗み見た。
物語の最後、アレンは3人のヒロインのいずれかと結婚する。最も、3人並べてさぁこの中の誰を選ぶ? というものではない。最終盤、魔王を撃破する際のアレンの行動によって誰と結ばれるかが変わってくる。そして、誰と結ばれたかにより、エンディングが分岐するのだ。
自分で止めを刺すことを選択した場合、アレンが新たな魔王となってしまう。この場合最後に色々と協力し続けてくれた第3ヒロインと結ばれ、新たな魔王として即位、ローレン王国とは第2ヒロインを通じて友好を結び、世界に平和がもたらされる。
第3ヒロインが止めを刺すように仇討ちを手助けすると、第3ヒロインが新たな魔王となる。魔国と休戦協定を結び、その功績を国から賞賛され、報奨の一環として第2ヒロインと結婚する。複雑な生まれのあれこれも解消され、やがて国王として即位する。
長らくともに旅した聖女の力によって魔王の根源たる『魔』を消滅させると、真エンドとして第1ヒロインの聖女と結婚できる。魔を滅すると同時に魔界そのものを浄化、魔国を聖国に変え国王となる。聖女には隠し要素の好感度があり、一定値を上回らないと選択肢が浮上しない仕様だ。その値はかなり高く設定されているので、難易度はそれなりに高い。
この世界で、アレンは誰と結ばれるんだろう。
すべては彼の選択だから、僕はただそれを物語に干渉しないように応援するだけなんだけど。どんな結末を選んだとしても、それが彼にとって後悔のないものならば、僕は全力で応援出来る自信がある。
だって僕は、アレンのことが大好きだからね。
何年か上の先輩だろう、自分たちよりも大きな少年たちが、係を示すたすきを掛けて要所で新入生を誘導していた。
立て看板を持ちながら道案内をしてくれる人が曲がり角や分かれ道に、それとは別に、恐らく上位貴族なのだろう面々には個別の案内人が付いていた。いずれも全部在校生っぽい。多分下級貴族から平民までの子たちだろう。
僕とアレンにも、案内人がついていた。腐ってもけっこう上位の貴族だからだ。例え家では碌でもない扱いを受けていたとしても、外に出れば相応にされる。ギャップに戸惑う。
実際、恐らく下級貴族だろう案内人の女生徒は、アレンをみてほのかに頬を染め、僕を見てスン……っとした顔になった。顔だけは笑顔をキープしてたけど、目の温度がまるで違うのが笑える。
まぁ分かる。僕の顔はすごく微妙だ。同じ家の兄たちも皆美形だから、僕だけこれなのは期待をしてたらその分だけ詐欺かよって思うよね。
メガネ外したら少しはマシになるのでは……と思ったこともありました。でも外せないんだよなぁ、このメガネ。なぜか。……もうキャラデザがそうだからそうなっているとしか言いようがない。ワケが分からない。
名前も大概な感じだから、最初に呼ぶ時「これ本当にこの名前で呼んで良いのか……?」って戸惑いが顔に出ていた。仕方がないから自分から名乗った。間違いじゃないです、これが僕の名前です。ひっどいよね。笑う。
今も会話はほとんどアレンと彼女の間だけで成立している。絶妙に話しかけられないし、例えこちらから多少話しても話が全く膨らまない。全力で「あなたはお断り」「あなたには興味ないです」ってされてて傷つくけど逆にちょっとおもしろくなってきた。
「オランディオ子爵令嬢、案内ありがとうございました」
「いいえ、案内させて頂けましたこと、光栄に存じますわ」
無難な挨拶の後、何かを待つようにしばし佇む嬢をアレンはしらっと無視して講堂へ入っていった。
その背中を見送って、そして周囲をさらりと見回して、なるほどと思った。先導してきた先輩は案内した後輩が招いてくれたら中には入れるのか。大半がそうして先輩を招いて一緒に中に入っている。案内してくれている人も各派閥からの派遣だろうから、招き入れるのがそのままその派閥入りみたいなところもあるのかもしれない。
まぁ、だとしても別にどうでも良いけど。
これまでの冷淡さが嘘のように縋るような視線を向けられて、僕も彼女ににっこり笑顔でお別れを告げた。
これが兄達の派閥からの派遣案件だと後でお叱り受けそうだけど、それはそれで別に良いかなって。
アレンに追いついて横に並ぶと、彼が視線だけで「良かったの?」と聞いてきたから、僕も視線だけで「なんのこと?」と返してみた。……笑われてしまった。
入学式の後は懇親会。
ここで、ようやくのヒロインのご登場だ。
このゲームには、3人のヒロインがいる。
第1ヒロインは、登場自体はもう少し後。アレン的には幼馴染みの懐かしい少女になる。今時点では、彼女はきっと教会で聖女の歳に目覚めて修行を開始した頃合いだろう。
第3ヒロインは、登場は物語の最後の方になる。前魔王の娘で魔族の少女。現魔王に殺された前魔王の仇を討つため、主人公に協力してくれる子だ。仇討ちが目的のくせに自分の命や身体をはってアレンを助けてもくれる。
今回登場するのは第2ヒロインだ。
この国――ローレン王国の第三王女で、僕らと同学年の同級生。名前はイリス=ライン=ローレンアース。成績優秀、公正で優しい人柄の少女だ。
ゲームのスタートは学園卒業時だから、ゲーム内で彼女と共に過ごす時間があるわけじゃない。NPCとの会話の中で、優秀なのに兄弟から理不尽に虐げられるアレンを気に留め、不都合が生じ過ぎない様に気を配っていたことが分かる程度だ。
彼女の容姿はまさにザ・お姫様、という感じだった。金髪碧眼、ややスレンダーながらスタイルも良し。……まぁ最後までスレンダーのままではあるんだけど。
生徒代表として挨拶を述べる彼女を見ながら、こっそりとアレンの横顔を盗み見た。
物語の最後、アレンは3人のヒロインのいずれかと結婚する。最も、3人並べてさぁこの中の誰を選ぶ? というものではない。最終盤、魔王を撃破する際のアレンの行動によって誰と結ばれるかが変わってくる。そして、誰と結ばれたかにより、エンディングが分岐するのだ。
自分で止めを刺すことを選択した場合、アレンが新たな魔王となってしまう。この場合最後に色々と協力し続けてくれた第3ヒロインと結ばれ、新たな魔王として即位、ローレン王国とは第2ヒロインを通じて友好を結び、世界に平和がもたらされる。
第3ヒロインが止めを刺すように仇討ちを手助けすると、第3ヒロインが新たな魔王となる。魔国と休戦協定を結び、その功績を国から賞賛され、報奨の一環として第2ヒロインと結婚する。複雑な生まれのあれこれも解消され、やがて国王として即位する。
長らくともに旅した聖女の力によって魔王の根源たる『魔』を消滅させると、真エンドとして第1ヒロインの聖女と結婚できる。魔を滅すると同時に魔界そのものを浄化、魔国を聖国に変え国王となる。聖女には隠し要素の好感度があり、一定値を上回らないと選択肢が浮上しない仕様だ。その値はかなり高く設定されているので、難易度はそれなりに高い。
この世界で、アレンは誰と結ばれるんだろう。
すべては彼の選択だから、僕はただそれを物語に干渉しないように応援するだけなんだけど。どんな結末を選んだとしても、それが彼にとって後悔のないものならば、僕は全力で応援出来る自信がある。
だって僕は、アレンのことが大好きだからね。
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