戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第109話 娘の覚悟と父親の覚悟

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イオは目が覚めると朝になっていたのだった。意識が朦朧とした
後に記憶が曖昧になっていたが、確か昨日は昼食後にソファーに
腰掛けて居たまでは覚えて居たのだが、そこからは記憶が飛んで
しまい、目が覚めたらベッドの中で朝を迎えていたのだった。

「うっ......頭が痛い......誰か、誰か居らぬか?」

「はい殿下、お呼びですか?」

声が横からして来たので、イオは急いでベッドのシーツを剥ぎ取
ったのだが、そこには全裸で横になっているラウラが居たのであ
った。

イオはラウラに目を遣ると腰の辺りのシーツが赤く染まっている
事に気が付いたのだった。そしてイオ自身も全裸である事に、気
が付いたのだ。

「なっ......何なんだ此れは?どうして御主が余と此処に居るのだ?」

イオは動揺しているのか、声が引き攣っていたのだった。そして顔
は真っ青になり、今にも吐きそうな程に気分が悪かったが、ラウラ
を見ると、顔を真っ赤にしながらイオを無言で見詰めて居たのだっ
た。

そして、タイミングを計ったかの様に、部屋に入ってくるルート!
これは、まさに最初から狙ったかの様な行動であったのだ。その様
にルートが謀を企てたのだから、結果がこうなる事は最初から解っ
ては居たのだ!

「余は、今まで何をしていたのだ?今は何時だ?」

イオ殿下、今は朝です。そしてイオ殿下は昨晩、娘のラウラと
愛し合い結ばれたのです!これはもう、イオ殿下にラウラを嫁
に貰って貰わなければ示しが付きませんね!

ルートは、顔面蒼白なイオに止めの一撃を放つと、そのまま最後
まで行き着く所まで行こうと決めたのである。そして、イオはと
言うと、ルートの言葉で更に顔色が優れなくなり、今にも吐きそ
うになっていたのだった。

「イオ殿下、ラウラは殿下をお慕い申しております。これからも
ラウラの事を宜しくお願いしますね殿下!」

その言葉を訊いたイオは、何かが頭の中で壊れる音が聴こえたの
か、完全に自棄になりラウラを掴むと、そのままベッドに押し倒
したのだった。それを見たルートは直ぐに部屋を後にしていた。

うっふふふ!孫の顔が早く見れる何って素敵よね♪

などと、気楽な事を言いながら辺境伯の寝室に戻って行ったのだ
った。辺境伯の寝室に入るとルートは、辺境伯が寝ているベッド
に潜り込むと、辺境伯の服を脱がせ始めたのであった。

「んっ.....寒い.....寒いぞ?おっ生暖かな感触が手に伝わってくる
の?此れはなんじゃ?」

寝ぼけている辺境伯は、生暖かな感触を味わいつつも、まだ眠い
のか直ぐに眠りに付いたのだが、体が重い事に気が付き目を開け
るのだが、目の前にはルートの顔があったのだ。

「ルートか、どうしたのじゃ?もう朝になったのか?」

ルートは、無言で頷くと辺境伯の体の上で、1人激しく蠢いていた
のであった。

そして......

「ルートよ!朝から激し過ぎはしないか?儂も歳なのじゃから少し
は労わってくれぬかの?そうせねば、儂は孫の顔を見る事が無いま
ま、この世とおさらばせねばならぬ!」

辺境伯の泣き言をルートは無言で訊いていたが、ルートも辺境伯の
言う事には一理あると頷いたのだった。

旦那様、イオ殿下とラウラが昨夜遅くに、契りを交わしましたわよ!
そして、先程もイオ殿下がお目覚めになった後、昨夜の事を説明した
後に、またラウラを求めるかの如く、イオ殿下はラウラと激しく愛し
あって居らます。

「居られますって、今も最中なのか?」

はい、イオ殿下とラウラは、此の時も愛し合って居られますよ!
近い内に孫の顔も見れるかも知れませんね!

ルートは嬉しそうに辺境伯に報告するのだが、当の辺境伯は複雑な表情
をしていたのだった。それもそのはず、辺境伯に取っては2人の娘は目
に入れても痛くない程に、可愛がって育ててきた娘達だったのだ。それ
を王族とはいえ、1人の男に娘を盗られた気分になっていたのだ。

娘を思う男親など、この様な感覚でしか物事を考えられないのかとルート
は思ったのだが、旦那様が最初から考えた事なのに、今更、泣き言を言う
など、言語道断である!娘も家の為と思い、我慢して頑張っているのだか
ら、それを応援しないで、どうするのだとルートは内心で思って居たのだ。

だが、ルートの本心は隠したまま、辺境伯を宥めるルートは妻の鏡である
事は間違いなかった。旦那の行った事を守り、娘にも家の為と言って我慢
させたのである。それだけするのにルートが、どれだけの苦労をしたのか
辺境伯は解っておらず、今も泣き言を言っていたのだ。

だから、辺境伯が目を覚ます前に、ルートは体を張って辺境伯を諫めたの
だが、ルートの努力も辺境伯には通じなかったのだ。

ルートは泣き言を言い続ける辺境伯に抱き付くと、力強く辺境伯を抱きし
めていたのだった。それに気が付いた辺境伯もまた、ルートを力強く抱き
しめ、2人は漸く分かり合う事が、その瞬間に出来たのであった。

「ルートよ!儂は我が侭を言ったみたいじゃな!すまぬ。御主が辛いはず
がないのに、儂が取り乱してしまった。本当にすまぬ」

辺境伯は、そう言うとルートに優しく口付けをしたのだった。


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