戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第81話 策士と政略結婚

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旦那様、一大事です!例の寝返り者の話は、どうやら真実のようですぞ!
数時間前に港の方で、例の人物の側近が船に乗り大陸に戻ったとの報告が
齎されています。そうなりますと、例のあの人物は大陸から傭兵を後150人
もシーランド本島に連れてくる腹なのでしょう!

「なんじゃと!それは真か!?奴等は本島に傭兵などを連れ込んで一体何をし
ようと言うのだ?」

それが、真に申し訳に難いのですが、特殊組合の創設者の来の者達が、奴等
に町中で絡まれまして、そして、奴等の側近の甥達を打ち倒してしまったの
ですよ!それを訊いた例の人物は、怒りに我を忘れてしまい、護衛で連れて
来ていた傭兵では足りないと判断したのか、大陸で待っている残りの傭兵を
呼びに戻ったと言う次第ですじゃ!

「うむ......それは災難だな!じゃが、もしも来の者達やオレークに、もしもの
時が会ってはならないのじゃ!あの人物がシーランド銃組合に手を出したのな
らば、儂が全て許すから全ての者を始末するのじゃ!」

そうなっては、大陸王国と内戦になるやもしれませんぞ!それではシーランド
本島の民達が戦火に巻き込まれてしまいまする!

「心配はするでない!前々から画策していた1件があるのじゃ!それを本島の
大司祭殿にお聞かせすれば、シーランド本島は大陸を敵に回したとしてもだ、
我々は決して負けはせぬ!信仰が厚きシーランド本島の民達も納得しようぞ!」

それは、もしや先代領主様が夢半ばで倒れた事に因り挫折していた。例のあの事
ですか?旦那様は、もしや陰でお動きになられておられたのですか?

「うむ!その通りじゃ!大陸の王国の成り上がりの貴族が、大臣になって好き
放題する様を見せ付けられれば、儂とて考える!」

もしも例のあの者をシーランド本島で、討ち取る事になったら、島に残されている
王弟殿下は、どの様になさるお積りなのですか?

「シーランド本島が、王国から無事に独立出来れば、怪我をする事無くお帰り頂く
が、もしも本国が武力で攻めて来るのであれば、その時は人質としての役割を全う
して頂く積りだ!」

それはつまり、王弟殿下を人質としての価値が無くなったと見なして、王弟殿下を
処刑すると言う事でしょうか?

「ちがぁ~~~~~うぅ!何を理解しているのじゃ!王弟殿下には儂の末娘を嫁が
せて婚姻を結び、更には王弟殿下、ご自身を神輿に担ぎ上げて、シーランド本島の
独立を促すのじゃ!これで内戦をするにしても、此方側としても角が立つと言う物
じゃな!」

なるほど!爺は旦那様のお考えに感服いたしましたぞ!あの幼かった旦那様が、
これ程の策士になられるとは、爺は夢にも思いませなんだ!

「そして、今回の内戦のポイントはココなんじゃがな!シーランド本島を精霊教の
総本山とする事にする!そうすれば、シーランド本島の人口が2万人にも満たない
状態が、精霊教を守護し、そして、精霊教の崇拝を死ぬまで続けられる島として、
大陸に知られわたる事になるであろう!そうすれば、シーランド本島には、大陸か
ら迫害されて逃げてきた精霊教の信徒達が集まり、島の総人口は10万人を軽く超え
るだろうよ!」

そうなれば、大陸の他の宗教団体から目を付けられる可能性がありますぞ!

「どうせ、放置していた所で、大陸の他の宗教団体は、精霊教を完全に潰す腹じゃ
そうなる前に、我々は生き残りを掛けて戦うしかないのじゃ!それとな!嬉しい事
が1つあるんじゃ!王弟殿下は、熱心な精霊教の信徒なんじゃよ!今の国王は、
帝国が怖いようで、精霊教が王国の国教だったのに、帝国の言い成りになりおってか
らに、国教は1つだけでは無く、何個もあっても良いと言い出しおったんじゃ!
もう儂は我慢の限界じゃ!」

旦那様、どうか落ち着いて下さい!

「いやいやいや!策を考えるのは貴族の嗜みであるぞ!儂の策は此れだけではない
1番上の娘は、どうやらオレークの息子に恋焦がれている様なのじゃ!此処で本家
の人間であるオレークの息子と縁談を結ぶ事で、隣国の本家からの内戦時に支援を
取り付ける事も可能となるかも知れぬ!」

旦那様、ダニエル様は今回の奪還作戦に、最前線で戦いになられる御様子で御座います。
もしもダニエル様に何かあれば、此の話は無かった事になりますぞ!

「なにぃ~~~~~!それは真か!?そうなれば、シーランド本島の独立も夢と終わ
る可能性もある!よし!メイド長の白の団500人に傭兵団の殲滅は任せて、爺の黒
の団には、ダニエルを陰から支える事を命ずる!これはシーランド辺境伯としての
勅命なるぞ!」

はっ!謹んでお受けいたします!

黒の団は、人員が少しばかり不足しておりまして、お許しを得れば、前団員を再度
加入できればと考えている次第です!

「黒の団の団員は、今で何人いるのじゃったか?」

黒の団は、今の段階で105人しま居ませぬ!前団員と、その家族を再度入団させれば
300人位にはなります!

「良かろう!黒の団の再建を急げ!時間は待ってはくれはせぬぞ!」

はっ!それでは早速にも、準備に取り掛かります!

「それと、メイド長には、王弟殿下と末娘の婚姻とダニエルと娘の婚姻も進める様にと
伝えて置いてくれ!頼んだぞ」

畏まりました。

そして、爺と呼ばれる初老の人物は、闇に透ける様に姿を消してしまったのだった。

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