戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第78話 出来る事と出来ない事

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鍛冶屋・黒猫屋の借りている工房に戻ると、俺は早速シーランド銃の鋳型を
作り直す事に専念していた。銃身と銃底部分に新しい木材を新しく付ける為
に、鋳型を作り直す必要があったからである。

銃底は、木の棒でストックを止める為の穴を2ヶ所付けれる様にし、木の棒
を差し込むと動かなくなる為には、木の棒を差し込んだ後に鉄の杭を棒に差
し込めば、棒が穴の中で杭に広げられる事で、確り固定される様になるのだ
そうすれば、ストックは取れなくなるが、問題が1つあったのだ。

もしもストックが割れて、交換する時とかになった場合が、杭が抜けなくな
り、取り外しが困難になることだった。

そうなった場合の事も考えなければならず。作って終わりでは無いのだ!
そうなると、道具雑貨店・匠の店主さんに教えて貰った事で、1つ良い物
があったのだ。

それは、ネジと言う物を作る道具だった。それを使えば簡単に物を固定す
る事が出来る様になる。鋳型のストックを取り付ける部分の厚みを増やし
更には、鋳型が完成した後にネジ穴を開ければ、整備の事まで考えられた
シーランド銃が完成する事になる。

この発想は、オレーク銃には無い発想だったのだ。来式銃だけに与えられた
性能であった。それと銃身を長くした事で立ったままの射撃が、不安定にな
っており、その改善の為に銃身部分には、2本の棒を取り付けられる様にし
たのだった。

この2本の棒を取り付ける経緯と言うのは、3人娘に完成したばかりの来式銃
を試し撃ちさせたのだが、立ったままの状態での射撃が、3人娘は出来なくて
そこで、3人娘が考えた結果、出てきた案が銃身に2本の棒を取り付ける事で
射撃が出来る様にしたのだった。

来式銃は、ストック無しの来式銃とストック有りの来式銃に、分かれる事にな
ったのだった。どちらも、女性でも射撃が出来る事を考えて作ったのだが、最後
には、ストック有りの来式銃など、長くなり女性では持ち運びも難しくなってい
たのだった。

だが、ストック有りの来式銃は長くなったおかげで、射程距離が今までの倍は長
くなっていた。それを考えれば、少し位の取り扱いが難しくなった所で、射程を
稼ぐ為には仕方の無い事である。安全に魔獣や魔物を倒せるのだから、文句を言
えば罰があたる!

今回の来式銃の改善に要した日にちは、10日程であった。ストック無しとグローブ
式の量産も終わりに近づきつつあり、講習会もヤーコブとアントンが、今度は暇に
なっている状態であった。

暇になっている2人には、俺の手伝いをさせているのだが、2人は鍛冶仕事が
非常に不向きだったのか、何を遣らせても失敗を繰り返していたのだ。この
2人は、考えてみたら、裕福な家で育ったのだから、俺みたいに小さな時から
家の手伝いをしている者とは違い、何にも不自由なく育ったのだろうな!

別に不自由なく育った事が悪いとは言ってないが、これは、余りにも酷い!
酷すぎる!鍛冶仕事が出来ないから、来式銃の組み立てをさせても、組み立て
終わった来式銃を見ると、継ぎ目などが雑であり、手直しの方が時間を要した
程なのだ!

だから2人には、完成した来式銃を箱に入れさせて、在庫の管理を任せていた。
数を数得るのは得意な2人は、今までの書類を見返して、正確な数字を書いた
書類を製作してくれたのだった。逆に言うと、俺達は書類等と言う物は初めて
で、どうして良いか解らずに、適当に出来上がった数を書いていただけだった。
その書類を見た2人から、今度は俺が怒られてしまったのだ。

仕事には適材適所と言う言葉がある様だが、まさに、その言葉を俺達は実践し
て行ったのだった。俺は鍛冶は出来ても、書類仕事など出来ない!でも、2人
は書類仕事は出来るが、鍛冶仕事など出来ないのだ。

2人が鍛冶が出来なくても、ダーンが俺の手伝いをしてくれているので、問題
は無かったのだがな!ダーンは数年も鍛冶を続ければ、立派な鉄砲鍛冶になれ
るであろう!教えた事をどんどん吸収していき。今では俺がする事を解ってい
るので、先にいる物を用意してくれているのだ。そんなダーンに感謝である!

ヤーコブとアントンが、俺に書類を見せる為に工房に遣って来ていたのだ。

「好成さん、来式銃とグローブ式銃の目標であった数に、到達しましたよ!
いよいよ、奪還する為に動き出す時です!」

「此処まで来るのが、長かなった様で短かった。でも、やっと皆を迎えに行ける」

2人は、それぞれに思い思いの事を言いながら、目から汗を流していたのだった。
村の青年でしかなかった2人は、今では顔立ちは凛々しくなっていて、出会った
時よりかは、少しだけだが体つきも引き締まった感じがする。

2人は、1番最初に3人娘から、軍事訓練を教え込まれたのだ。それを毎日、
繰り返していれば、少しだが体付きも逞しくはなる。

残る問題は、何処まで訓練が済んでいるかである。芳乃達に今後の予定を訊いて
から、船に荷物を積み込む作業を進める事にする。

残り2ヶ月と数日、準備は着々と進み、残す所あと少しになったのだった。
後は現地で、半月程の作業と訓練をすれば、作戦開始を待つだけであるのだ!

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