戦国の鍛冶師

和蔵(わくら)

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第20話 初航海と初海戦

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根来衆の静と秋が、漂流していた丸太に、初手で砲弾を命中させた事に
対して俺は、対抗心を燃やしていたのだ。2人は扱いなれた鉄砲を撃つ
様に、いとも簡単に漂流してる丸太に砲弾を当てていたからである。

此処で鍛冶一族の来家の者としては、根来衆に負けるわけには行かない
根来衆も鉄砲が、南蛮人達により渡来してきてから、鉄砲の技を磨いて
来ただろうが、来一族もそれは同じである。試行錯誤しながら技を磨い
て来たのだ。

あんなに簡単に的に命中させられたら、俺としても燃えない訳には行か
なかったのだ。

そうして目標となる物を探しながら、町の沖合いを航行している。
探していると、中々に目標となる物が無いのだ!

そして2刻1時間程が経った時だった。
海面に、黒い平らな物が漂流しているのが見えた。

そこで俺は、ダーンに黒い平らな物が撃てる様にしてもらい、魔力大砲を
撃つ準備を始めたのだ。俺の横では、芳乃が魔力大砲を撃つ準備を進めて
いる。俺と芳乃は、魔力大砲の準備が終わり、後はダーンが船を旋回させ
て射撃位置に着いたら、目標に向けて砲撃するだけだった。

俺はじっくりと目標に狙いを付けて、撃つのだが.....俺の初手は目標手前で
海面に落ちてしまったが、芳乃は俺の後に撃った為に、目標との距離を掴め
たのだろうな、初手で目標に命中させていた。

そんな折に、ランメルトがダーンに向けて話しかけている。

「ダーンさん!あの黒い平らな物って動いてませんかね?」

「何だってランメルト君?」

俺は初手を外したので、次弾を撃つ為に狙いを付けていた時だ!
目標の黒い平らな物から、いきなり黒い水柱が上がったのだった。
此れには船に居た全員が、驚いて少しの間だが、誰も何も言わなかった。

俺がダーンに、あの黒い水柱の事を訊くと、ダーンは呆気顔から俺の方を見て
こう言ったのだ。

「あれは海の魔物・オクトパスだ!」

オクトパスと訊いたランメルトが、顔を真っ青にしながら話し出した。

「オクトパスは、墨を放水して船に攻撃してきます。それと触手も脅威です!」

「ランメルト君!この魔物は、放水と触手で攻撃する魔物なのだな?」

「好成さんその通りです!」

ランメルトに、放水の距離を訊くと、20m前後だと言っている。
魔力大砲の射程が、100mだからオクトパスの射程外からの攻撃で、
オクトパスを倒せると、ランメルト君が話してくれた。

ダーンに、オクトパスと船の距離に注意して貰いながらの、魔力大砲での
砲撃戦をすると伝えた!

静と秋も、左旋回中であるが、右舷の砲門に付いてもらっている。
念には念を入れて、戦いに望もう!

オクトパスからは、船を目掛けながら突進してきては、放水を繰り返し
ているが、ダーンの操船でオクトパスとの距離は、縮む所か魔帆のお蔭で
一定距離を保ちつつ、有利に戦闘を行なっている。

オクトパスに砲弾を撃ち込む隙があれば、それを見逃さずに俺達は魔力大砲
の砲弾を魔物に撃ち込み続けている。そのお蔭で、一刻30分後には魔物
は海面に浮かんできた。

海戦が始まってから、俺が放った砲弾は、全弾が魔物に命中していた。
先程の初手を外したのは、魔物が動いて目算を誤ったせいだろう!
きっと.....そうに違いない!

ダーンは注意しながら、船をオクトパスに近づけだしていた。
死んだふりをしている可能性もあったので、船首にある大砲に
静と秋を配置して、俺と芳乃は長槍を構えていた。

俺が持っている長槍の先は特殊で、釣り針みたいになっており、海に漂流する
物を引っ掛けやすい作りをしていたのだ。そうしてオクトパスの横まで来た時
に長槍で、死んでるかの確認の為に、一突きしてみた。

オクトパスは、長槍に突かれても反応がなかった。

ダーンが、引っ掛けて船に寄せたオクトパスに、特殊な縄をオクトパスに結び
付けたのだ。この縄は魔法を編みこんで作った縄だそうで、切れにくいとか言っ
ているな!

こうして、俺達の初めての航海と初めての海戦は、オクトパスと言う名の魔物
を倒して終ったのだ。

町に持って帰ったら、オクトパスだと最低でも |1000~2000ベルク
《銀貨1~2枚》はすると訊いたので、俺達は少しだけ嬉しくなっている。

ダーンの余計な一言で、値切れなかった分が、オクトパスを売り払う事で儲けに
変わるのだから、俺達が喜ぶのも当然である!

因みにオクトパスを売れる場所は、港にある魚市場と言う場所で、売りさばく
とダーンが言っていた。

市がある町だったのか!朝市に最近は行ってないので、市に行って見たいな!
そう言うと、芳乃に静に秋も俺を見ながら。

≪好成様~私と一緒に朝市に行きましょう!≫

3人からのお誘いを受けてしまったのだ.......


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