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10.前夜祭
理事長とささぎ 2
しおりを挟む「……事件でしたら」
と、ささぎは切り替えた。
「何件か、調べましたが。サロン時代に起きていた爆破事件は検索でヒットしています」
「そう」
「かつても爆破というのはあちこちでどこかのグループの意思表示として起きましたからね。その中に、サロン連中が居てもおかしくはない。殺人と、爆破事件関与。それに」
理事長は、深く事情は掘り下げず「それに?」と、相槌を打つ。
「いえ――――古い知り合いがちょうど先月、『爆発物がある』という趣旨の手紙を貰っているそうです」
「古い知り合い?」
「穂始上縞」
と、だけ述べると、彼女は唇を戦慄かせ、狼狽える。
「彼女」は、デザイン事務所の傍ら『趣味で探偵をやって居る者』の類なのだが……数年前まで消息不明だった。
大病を患い、長い間入退院を繰り返していたという話だ。
「最も、そのときの事件はぬいぐるみの首が並べられたり、爆発物のあると指定された場所で花火が打ちあがっただけだったりと、人命そのものに影響しなかった、とのことで事なきを得ましたが、犯人の目的そのものは分からず仕舞いのようでした」
まつりから、少し前に町で会ったという話も聞いたので、もしかしたらこの町にも何か事件を追ってきているのかもしれない。ただの依頼かもしれないが。
(余談。その時にカップ麺の話をうっすら聞いていて興味があったらしい)
「その犯人と、関りがあるかもしれない、と?」
「えぇ。恐らくは。少なくとも、日暮さんが『まつりと夏々都君に目を付けていて、脚本でなぞろうとしている』こと、『監視が継続している』ということは、実際、二人に会っても、『ネット小説』や、『ドラマの脚本』自体からもどことなくわかりましたし。ね」
まつりは、夏々都にはドラマを見せないようにすると言った。それを悟られぬようにしなくてはいけない、と。
監視が続いているというショックと、過去に起きたある事件を日暮さんが無断で晒上げているというショックが重なると、彼の精神に何が起こるか分からない。
ただでさえ、まだ『あの場所』から出てきたばかりの彼には負担がかかり過ぎる。
もし、彼らに勘付かれたら、その監視は、生徒だけでなく二人を追い詰める為にも使われるだろう。
(その為の工作くらい、あの人たちはやるでしょうね……)
手口そのものは昔から存在する。
立場を笠に着て、あとは相手を一方的に精神疾患だかなんだか責め立てるだけと言うもの。『強引にでも優位に立つ為』に、クレームを入れた人々の悪質さを訴え、個人的な人格や精神疾患の問題と思わせる必要があった。
よって、監視を強化しての荒探しをするのだ。政治家や芸能人の私生活ならより簡単に揺らぐだろう。
同じような手口は以前にも行われたし、現在も行われている。
(2022年6月12日3時47分ー2022年6月21日0時47分加筆―2022年7月1日6時13分)
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