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09.吉崎先生と知念先生
靴箱の入れ替え
しおりを挟む寮に戻ってみると、受付の奥の方の部屋で寮母さんが青ざめていた。
見知らぬ女子生徒たちが彼女に泣きついているのか、声が聞こえてくる。
「ママぁ、怖いよぉ」
「チャンママァ……」
どうやら寮母さんは一部の生徒にママとかチャン・ママと呼ばれているみたいだ。
……なんかそういう店みたいだな。とは言わないけれど。
彼女たちなりの仲のよさなのだろう。
「ロールケーキ、私が買ったんだけど、食べましょう?」
チャンママ――じゃなくて寮母さんがこっそりと言いながら宥めている。
「騒がしいね」
まつりがぼんやりと呟くと
さっきから、何処かと話をしていたささぎさんが「なんか、事件が発生したみたい」と電話で相談を受けたという階を教えてくれた。
「事件?」
まつりが何やらささぎさんに言っている。
とりあえず上階に話を聞きに行くことになりそうだ。
エントランスで、いつもの癖で下駄箱に向かって歩いていると、まつりが「おーい」と呼んできた。
「靴はそのままでいいんだよ」
「え?」
ぼくは咄嗟に周囲の下駄箱を見渡す。
多くの人が部屋に戻っているらしく、靴が置いてある。
……が、もちろんぼくたちのは無い。
「そうだった」
戻ろう、とぼくはまつりたちが進もうとしている階段の方に目を向け――る途中。
何気なく、隅の方にある下駄箱が目に付いた。
防犯上の理由なのか下駄箱自体には主に名前ではなく数字が描かれているだけなのだが……
一番右端にある、アルファベットのシールを使って「Aiko」と書かれた下駄箱が開いているのだ。
いけないと思いつつも、何気なく、鍵の掛かっていない靴箱を眺める。
その中には強引に「小室」と書かれたスニーカーが押し込んであった。
(飛び降りて死亡した小室さんが代わりに使っていたのかな……それとも――小室さんの下駄箱にはアイコさんの靴が入っているんだろうか。
……そもそも小室さんとアイコさんの立ち位置をわざわざ入れ替えておく必要、あるのか)
それよりも気にかかるのが、飛び降りのあった際にも落ちていた、鉛筆15本がこの下駄箱の脇にも置かれている事。
――でもあまりじっくり見ている場合ではないだろう。一旦その場を後にした。
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