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08.異臭騒ぎ

鷹の会とは

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「その次に、理事長室。タカ子たちも騒いでるけど、理事長室に現れたのは松本と足立だ。何も言っていないのにずっと見張っているみたいにタイミングよく乗り込んで来た。 予約した自分の共用スペースを勝手に使ったのは誰だ、とね。
  理事長も、あの時点では客が理事長室に来ているとは言っていないよね」
「だけど、ぼく達、放送しているじゃないか」

 まつりはチッチッと指を横に振った。
声がほわほわしてるせいなのか、幼い見た目のせいなのか、可愛らしい。
(――――とは、本人には言わないけど※子ども扱いしたと思われる)

「あの後すぐ、放送を聞いたささぎおねぇちゃんが、まつり達を追うのはやめるよう通達したはずなんだ。普通の生徒ならささぎおねぇちゃんの権限に逆らえない。別に罰則があるわけではないけど、彼女はカリスマだからね」

 つまり、それに従わないという事は、ささぎさんに関心が無いという事だ。
この学園内では先輩――――お姉様方は『井伊先生の盗作の問題』を知っていて、
ささぎさん派と、大導寺彩達、生徒間で対立していた。


「こう纏めると語弊があるが、ささぎお姉ちゃんの指示も聞かないで、理事長室に独断で乗り込んでくる――――スパイ側、というわけだ」
「……それで、足立と松本が、鷹の会の実行犯――――幹部の娘、ね」
「そ。寮で虫騒ぎを起こすにもテレビ局と連動しなちゃならない。
それでかつて鷹の会が起こしたテレビジャックを思い出したんだ」

 平然と話が進んでいるけど、よく考えるととんでもない話だぞ。
テレビの内容が、生徒たちの監視状態と連動してるだって!?
それって、総ての生徒たちもまた、衛星か何かで中継されて居るって事じゃないのか。
「地方局だけどね」
「……そんな。そんなバカな」
「まつりはあの寮の虫騒ぎを人為的な工作と判断した。 シーンに合わせて虫が用意されるには、虫とテレビ局の番組構成、両方が必要なんだ。だったら考え得る可能性はひとつだろう」
「えぇ……鍵売買の問題も、鷹の会の残党が残ってるって話と通じているもの」
ささぎさんがにんまりと笑う。
それから、やや寂しそうに言う。
「まだ彼らは活動を続けている――――そしてここからが本題なんだ。お姉ちゃんも、他の生徒も鷹の会の妨害を受けている」

「鷹の会って……なんなんだ?」
 ぼくが言うと、背後からきたダイヤさんが、「あのババアの両親が嵌っていた宗教」と答えた。
「ダイヤ、さん?」
「目的の為ならなんでもやるところ」
「―必要とあれば、虐待、誘拐、殺人……信じられないくらい、何にでも手を染める。その意味ではあの屋敷の方がまだ倫理観があったかも」
「倫理観、ね」
まつりが肩を竦める。
「そういえば、井伊先生の会社って、鷹の会傘下だよね、もしかして工作員の一部だったりして」
「目下の問題なのは、その傘下の傘下に居る綾里達かもしれないけど」
ささぎさんが真顔で何かを小さく呟く。


「私は、レポートを改竄されてもわかるようにノートの隅や端末、あちこちに、タイムスタンプを常に付けている……」


2023年7月23日 01:07‐2023年7月30日1時33分(7月時点では有料公開部分)
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