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07.レタスと1月11日

1月11日

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焦げてないか聞かれる毎朝とか
朝はパンと決まってるんだ
此処には 姿見が無いので
僕はパンの事しか見えてない

いつからかそいつは其処に居たの
それは唐突に叫ぶんだ
だけれど 姿見えないので
僕は君のことしか見えてない


クーポンとかホワイトボードとか
夜はカバーがあるだけなら
どうして姿見がないのに
僕は何か口寄せてしまうよ


いつまでもそいつはそこにいるよ
だけどお前まで叫ぶんだ
けれどすがた見えないので
君は僕の事など見えてない



「どういう意味だろう?」
「さぁ?」
まつりもきょとんと、首を傾げた。
口寄せは霊を自分に憑依させ、霊の代わりに喋ることが出来ると言われる術だったはずだけど……
鉛筆15本、あるいは、この歌詞の曲が、彼女の死に関係するんだろうか。
端末を取り出してまつりが何やら入力する。
「さっきの歌を検索したんだけど」と、やがて画面を見せてきた。
そこには1月11日朝夕、と書かれたMVがあって――
歌の解説?があった。




『僕たちは見えない存在に監視されている。
だけど姿が無いので告発出来ないんだ。
此処には姿見が無いので、僕自身がどうなっているかわからないが、
僕の視力に頼らずとも、音の反響の中から君を探してみた。
不思議な事実が一つある。もう一つある。更に、三つある。

1.まず一つは、僕は一度音楽をかけて、外にどの程度聞こえるかを計った
2.まず二つは、僕は一度外で、君が来るのを待っていた
3.まず三つは、僕は、口寄せてしまうのを恐れて、
部屋では君とはヘッドセットを通した小声でしか話をしていない。
外にも内にも君は見えない。
『君が言う 「うるさい」は恐らく君の中にしかないだろう』

さて、この検証の結果、君は外と内の何処にいる?
この事実は・・・』


 続きが気になったが、文章は途中で途切れている。
コメント欄には生み出された悲しいキメラの歌ではないかとか、ストーカーの事で内外から自己を問われ正確な自認が出来なくなっている等の考察がされていたが、明確な答えは載っていなかった。
MVもほとんどキメラが歩いているだけの内容だ。

 この歌詞を、彼女が何か意味を持って置いて行ったのか、それとも偶然此処にあったのか……
「ノートの切れ端だとしたら、元になったノートとかあればいいんだけどね」
まつりが呟く。ぼくも、そうだね、と言った。
屋根から降りていると、遠くから救急車の音が聞こえてきた。



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