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05.理事長

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「たぶん、関わってるんじゃない?」
「関わってる?」
「でも。お姉ちゃん、理事長とは、犬猿の仲だったはずなんだよね」
いまいち、まつりの言いたいことがわからない。
そんなぼくに、いらいらしたように、まつりは言った。
「金庫の警備を強化していて、その中身に、お姉ちゃんが関わっている、と考えてみたりして」
「……えっと、関わるって、研究とか?」
「そうそう。薬品とかね」

確かに薬品には取り扱い方によって爆発するものもある。
「大導寺の薬品工業会社が前にやらかしたりしてたね」



「例えばささぎさんが、猛毒を精製したけど、それが見つかり没取──もちろんその辺に棄てるわけにはいかないから、しかるべき処置──中和させるか、どうにかして処分をするまで、まだ保管していると?」


「……学校相手に派手なことをした前科があるからね、ありうる」
「それでいてなんでお前のお姉ちゃん、あんな尊敬されてるんだ。畏怖?」
「失礼な! 学校の購買から、フルーツクリームパンが消えるって聞いたから、同盟作って、テロることにしたり」
「とんでもないな……」
「パンは、結局製造終了したけどね。それから、なんだっけ……純愛小説じゃないものを没収されることに反発したり」
「例えば?」
「……言えないなあ。あんなのとか、こんなのとか」
「そんなに、そういう趣味の人が多いのか、なんか、意外だな」
「ん。まあ、これは緩和されたね。などなど、いろいろ、リーダー的存在だったんだね!」

なるほど、なんとなく、理解できた。つまりは、頼りにされる存在なのだ。みんなのささぎお姉さまといったところか。
「でも、校内に隠し持つって、意味があるのかな……」
「うーん……学校側が、利用を考えているという線もありそうだけれど」
まつりは、しばらく、すたすたと歩き、そして、はっとしたような顔をした。
「どうした?」
ぼくが聞く。まつりはなにも答えない。





 改めて、進む。
理事長室から少し行くと、職員室と、その向かいには休憩室があった。
自販機がずらりと並んでいて、ぼわー、と、低くて重い音が聞こえている。

「……鍵、鍵、鍵……」
「そもそも、ヒントが少ないよな。爆発を阻止するって言っても、爆弾がどこにあるのかもわからない」
「ヒントは、『フタツノカギヲミツケルコト』だよ」
「あ、そうか……」
そもそも、二つの鍵が、爆弾の停止スイッチだとは、向こうも言ってない。見つけることが大事だと、言っただけだ。

────それが、ヒント。
爆発物を仕掛けた、そのヒント。

「だから、もしかしたら、それが爆発物のある場所に関係あるのかも」
「全部がカタカナなのも、関係しているのかな」
「たぶん。でも、見えて来ないね」
このまま、見つからなかったら、全部がだめになる。いいや、まつりをぼくは、守りたい。
諦めそうになる心を、どうにか保ち、頷く。
指が、ふるえる。

「怖く、ない?」

思わず口に出すと、まつりは不思議そうだった。
「夏々都は怖いのかな?」
「だって……」

「まつりは平気だよ! なぜなら、まつり様はまつり様だからです」

強い言葉。
強い、意思。
まつりはまた、背を向けて歩き出す。


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