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05.理事長

対話

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 理事長室の隣は、空き部屋なのだろうか。何もなかった。さっきよりは狭いくらいだが、一人部屋にするには、なかなか広い。入口と窓があるくらいだ。
「……大丈夫?」
震えが止まらなくて、俯いたまましゃがんだぼくに、まつりが聞いてくる。
「何が」
「熱が出て倒れないために、見える景色を覚えないようにしてるんだね」
「え──」
 言われて見れば、そうだ。今日ぼくは、体調に関してはすごく良い。
熱も出ないし、前回のような──まつりに寄りかかるように歩くこともしていなかった。新しい場所に来たのに、全く、景色について覚えようとしていない。むしろ、まつりばかり見ていたのだ。

「倒れることに、抵抗感があるんだね。こんな格好で倒れたりしたら、いつもに増して恥ずかしい思いをすると考えてしまう」
「……」

いや、半分くらいはお前がさせた気もするが。
まあ、ぼくも着たけれど。

「でも覚えてない、よくわからない空間を、漂ってるみたいに、曖昧な認識で進むのは──それはそれで怖いんじゃないかな」
確かにそうかもしれない。
それに、情緒不安定でこいつのそばに居ても、足手まといだ。

「でも……」
「覚えていい」
「まつり──」
「必要になるかもしれないから。ちゃんと、いつも通りに、覚えたらいい」
「ぼく、は──」
「怖い? 泣きたければ、今だけ、泣いてもいいよ」
「……まつり。まつり。まつり、まつり、まつりまつりまつり」
「もし、倒れたりしても、大丈夫。絶対まつりにしか、さわらせないから。安心して」
「お前もさわるな」
「夏々都はなつかないなあ」

まつりは楽しそうに笑う。
──そうして、ぼくを甘やかす。

ドロドロに溶けて、もともとの形も既に分からなくなってしまった、ぼくの異様なまでの執着を、まつりは何事もないかのように、たやすく受け入れるから、ぼくも甘えてしまう。

本当は、わかっている。まつりが居なくても、いつか、自立して生きられなくてはならない。
でも、今だけは。
子どもで居られる間だけは──



4章202004121834加筆、再掲載




















メモ


 私の発表と同時に、私を利用していたらしい人物の学歴があらわになった。
学歴の件の発表は、避けられない現実だった。
タイムリーに『学歴を調べるのに何年もかかりませんよね?』という事実を突いてしまったから大変だ。
オリンピック期間中、にしおの学歴が判明していたらしい。
声が国内外から出てるみたい。
上層部は、国民、世界の皆々様へ、迫害は犯罪行為と認識しながら、事実とは違う対応で、それを無かったかのように、知ら示し、をやってきてしまった。
推薦対応は、隠ぺい目的。


吐く報道が続いているが……
リボンのデザイナーは、ライターに火が付くことを知っていると思われる。
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