上 下
3 / 7

第3話 友人

しおりを挟む
私は未来からの私が友人の危機を教えてくれたことは話さなかった。

鏡も怖くなって、再び封印、つまり箱に入れて押入れの隅に置いといた。

数日が経ち、私は気晴らしにバスケットボールの練習をしようと、体育館へ向かった。

屈子も珍しく付き合うという。
屈子はあまり運動が得意ではなく、普段はこういう時は付いてきてくれないことが多い。

私は着くなりバスケットのゴールリングにボールを投げ込んだ。

1回2回と、ゴールを決めて、3回目をとボールを持ったところで、
屈子が叫んだ。

「投げないで! もっとゴールリングから離れて!」

その時、誰かが体育館の扉を開けた。

開けた瞬間、ビューと強い風が入ってきた。
ちょうど外で突風が吹いた感じだった。

その瞬間、バスケットボールのゴールポストが
ドスンと落ちてきた。

「ひぃ。」と私は思わず声を上げた。

屈子はこのようになることを知っていたような顔だった。


その日の夜。

屈子は今日の出来事は知っているようだったけど、本当にそうなのだろうか。
鏡はここにあるのに……
私は不思議に思っていた。


「ピーンポーン」
玄関のチャイムが鳴り、屈子が来た。

「今日、あったことだけど……」
私がそう言いかけたとき。

「それはね。これだよ。」
屈子は鏡を出してきた。

「えっ?」と思い私は奥に封印していた箱を開けた。

「こちらにもある!」
「未来を映し出す鏡が2つあるってこと?」

「そうみたい。」
屈子は鏡を持ちながら言った。

屈子は未来の自分を見たときに、気になって鏡を拾った場所へ行ったらしい。
どうやら、そこにもう一つ鏡があって、拾ってきたようだ。
未来の自分屈子とも話したらしい。
そこで、私の危機のことも知ったらしい。

「鏡を鏡で映したらどうなるかな。ちょうど月も出ているし。」
屈子はちょっとワクワクしながら言った。

「合わせ鏡ってこと?」

「それだと、ちょっと、いやかなり怖いから。斜めにして、ちょっと映してみよう。」
「5+5で10年後かな。」
屈子が自分の鏡をもって見つめている。

私は屈子の鏡に、私が持っている鏡が映るように、位置と角度を調整した。
私の鏡には私が映るようにして。

「どう?」
私が聞くと、屈子は驚いた表情をした。

「どうしたの?」

「映ってない……」
屈子はボソッと言った。


これは半分推測だけど、この鏡は月が明かりを照らしているときだけ、未来が見える。
未来のその空間に対象の人物(例えば未来の私)が居なければ、
単に今ここにいる人物の5年後の人物の姿が映るだけで、話しかけられたりはしない。
その人物が笑えば、鏡に映っている人物も笑うし、こちらが怒ればあちらも怒る。

未来のその空間に対象の人物(例えば未来の私)が居れば、
純粋にその時の5年後の人物が映る。こちらに向かって、話しかけたりもする。

ここまでのことがわかっている。半分は推測だけど。


つまり、鏡に映っている私が、もう一つの鏡に映らないということは、
10年後の私はいないと思われる。

そうこうしているうちに就寝時間になった。

屈子に何と言って、別れたのかも覚えてない。



翌日。

屈子のほうから、話しかけてきた。

「私、昨日、未来の自分に話を聞いてみたんだ。」
「ほら、鏡の映るところに、未来の自分がその場所にいれば、未来の自分と話すことができるでしょ。」

「10年後じゃなく、5年後の自分なので、もちろん10年後のことは分からなかった。」
「でも、この鏡に手を触れて目を閉じると、映っている未来に行けるみたいだよ。」

私は本当にそんなことができるのかと屈子のほうを見た。

「でも、2枚の鏡を使って10年後に行っても私はすでにいない可能性があるし。」


屈子はなにやらビニールのようなものを取り出した。

「これよ。この低反射フィルムを鏡に貼るのよ。そうすれば、10年後よりちょっと前に戻るかもしれない。」


当日の夜。

月が出ている状態で、ちょっとずらした合わせ鏡風にして、そのうち1枚には低反射フィルムを貼って、
まずは屈子が手を合わせて、目を閉じた。
ちょっとしたら、そのまま鏡に吸い込まれた。
驚いたけど、私も手を合わせて目を閉じて、そのまま吸い込まれた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

体内内蔵スマホ

廣瀬純一
SF
体に内蔵されたスマホのチップのバグで男女の体が入れ替わる話

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

処理中です...