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第207話 アルファポネ男爵の研究成果
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これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
この時代に召喚されたマイは、自分のクローンが支配しているという、この時代の地球へ行く事を決意する。
ただ、地球へ向かうには準備が必要で、その間マイとマインは10日間のバカンスを楽しむ事になった。
急なバカンスと言う事もあり、ふたりにはこれと言って行きたい所なんてなかった。
とりあえず、メドーラに会いに行ってみる事にした。
しかしふたりの機体は、地球行きの準備の為、整備中だった。
仕方ないので、ガンマツーの機体で、メドーラに会いに行く。
そしてこのガンマツーの機体の整備を担当するのが、子猫ロボットだった。
その子猫ロボットが、とある惑星に興味を持ったため、マイ達はその惑星に立ち寄った。
子猫ロボット達は、とある放置されたお屋敷の隠し階段を駆け降りる。
その先には、隠し部屋があった。
その部屋の椅子には、ひとりの男が座っていた。
と言ってもこの男は、すでに死んでいて、骨だけになっていた。
その服装から、男と推測される。
机の上には小さな箱と日記帳らしきものがあった。
子猫ロボットが興味引かれるその箱には、二本の緑色のスティックが入っていた。
それは、マイ達の戦闘機を変形合身させる為の物だった。
なぜそんな物がここにあるのだろう?
日記帳によれば、この男は、アルファのクローンらしかった。
マイ達は、隠し部屋から引き揚げる。
隠し階段を登り、出口へ向かう。
「なるほど、これで私達の戦闘機が変形合身するのか。」
マインは緑色のスティックの一本を手に取り、まじまじと見つめる。
「でも、何でこれが、こんな所にあるんだろ。」
マイも、もう一本のスティックを指先でもて遊ぶ。
「その手帳には、何か書いてなかったの?
手がかりになる様な事が。」
マインは、マイが持ち帰った手帳を話題にする。
この手帳は、なぜか日本語で書かれていた。
しかし、大分劣化していて、文字がかすれていた。
最初のページに、『この部屋を見つけた知恵ある者にこれを託す』みたいな事が書かれてあった。
と言っても、この文章の文字のほとんどは欠損したりかすれたりで、マイがこう書いてあるであろうと、解釈した。
その先のページには、日付けらしき数字と、文章が綴られている。
この事から、マイはこの手帳を日記帳と判断した。
そしてこの日記帳は今、保存ケースに入れてマイのマジカルポシェットの中だ。
基地の宇宙ステーションに帰ったら、アイ達に解析してもらうつもりだ。
「なーんにも。」
マイは先ほどのマインの質問に答える。
「だって、劣化が激しすぎて、読めたもんじゃないわ。」
「そっか。この時代に日本語で残すなんて、マイへのメッセージとしか、考えられないのにね。」
マインはちょっと残念そうに、スティックをいじくる。
そんなマインの表情が、隠し階段の出口にさしかかると、突然引き締まる。
「どったの、マイン?」
「しっ。」
馬鹿づらで尋ねるマイの口を、マインは右手で押さえる。
「囲まれてるわ。」
マインは小声でマイに伝える。
「囲まれてる?誰に?」
マイも小声で聞き返す。
「分からないわよ、そんな事。」
と言いながら、マインは本棚から一冊の本を手に取る。
そしてそのまま、外から見られない様に注意して、窓際に向かう。
そっと窓を開けると、その隙間から本を外に放り投げる。
ズダダダダー!
突然、放り投げた本が銃撃を受ける。
マインの言う通り、この屋敷は何者かに包囲されていると、マイも悟る。
「もう、一体なにが起きてるの?」
マイは小声でマインに尋ねる。
「だから、分からないわよ、そんな事。」
マインも小声で返す。
自分にも分からない事を二度も聞かれ、マインはちょっと怒り気味。
マイはちょっとびくつく。
「ほ、ほんと、この屋敷の詳細くらい、分かればいいんだけどね。」
そんなマイを見て、マインは何とか場を和ませ様とする。
「ここって、なんかヤバい所だったのかな?」
マイはマインの意図を知ってか知らずか、普段のふたりの会話に戻る。
「それも、ミサが一緒なら、すぐ分かるのに。
なんでこんな時に限って、こうなるのかしら。」
マイの疑問に答えられないマインは、そんな自分に少しいらだつ。
ミサは、マインのパートナーのサポートAIだ。
普段は遠く離れた宇宙ステーションに居て、マインが額に巻くはちまきに仕組まれたチップを通じて、色々やりとりが出来る。
今の状況も、ミサが一緒なら、すぐに分かるはず。
それに慣れてるからこそ、マインは今の状況を腹立たしく思う。
そう、今のマインとマイは、パートナーとつながっていない。
ふたりのパートナーは、今は整備中だった。
「ねえ、他に情報を知る事は出来ないの?」
マイはそんなマインに聞いてみる。
最近召喚されたマイよりも、マインははるかに先輩だ。
マイよりも色々詳しいはず。
「有ったら、苦労しないわよ。」
そう、それが無いから、マインはいらだっている。
「そっか。スマホでも有ればいいのに。」
当てが外れて、しょんぼりするマイ。
「すまほ?」
マインは、マイの言った単語を聞き返す。
「そ、スマホ。」
「だから、何よそれ。」
「え、知らない?ほらこうやって、」
マインは、マイより三百年後の未来から召喚されている。
その三百年の間に、スマホは廃れたのか、別の呼び名になったのか。
マイは左手にスマホを持ち、右手をしゃっしゃするジェスチャーを見せる。
「それよ!」
マインはマイのジェスチャーを見て、何かをひらめく。
そしてマジカルポシェットから、タブレット端末らしき物を取り出す。
「いつもはミサが居るから、存在自体忘れてたわ。」
マインは少し照れた表情を浮かべる。
「なんなの、これ。」
マイのマジカルポシェットにも、同じ物が入っていた。
「これは、、名前は忘れたけど、色々調べものが出来る端末よ。」
マインはタブレットを起動させる。
メイン画面になるまで、しばらくかかる。
「これに私達の額のチップをマッチングさせれば、私達の知りたい情報にアクセス出来るのよ。」
「ふーん。」
マイもマインを真似て、タブレットを起動させてみる。
「ミサが居れば必要ないから、私も使うのは初めてなんだけどね。」
マインのタブレットは、メイン画面を表示する。
マイのタブレットは、『使用者登録をして下さい』と表示される。
マイはまだ、額のチップとのマッチングを済ませていなかった。
そんなやり方を知らないマイは、ここで行き詰まる。
タブレットの電源を落とすしかなかった。
そんなマイの横で、マインのタブレットは何かを表示する。
マイも覗き込むが、表示された内容は、マインにしか分からない。
「なるほど、この屋敷の持ち主は、アルファポネ男爵って言うのね。」
「男爵?」
「この惑星イプビーナスの植民事業に携わった、三人のリーダーのひとりですって。」
マインは、タブレットに表示される情報を読み上げる。
「植民事業がひと段落ついた頃、郊外の屋敷に引き篭もり、何かの研究に没頭。
そんな彼は、今から93年前辺りから、音信不通になる。
彼は屋敷を去ったのか、それとも屋敷内で冷たくなってるのか。
彼の安否は、不明のままである。
彼の屋敷には特殊な結界が張られていて、関係者以外入れないのである。
ですって。」
マインとマイが見た、隠し部屋の遺体。
彼がおそらく、アルファポネ男爵なのだろう。
そして彼の研究成果が、おそらくこの緑色のスティック。
マイ達の戦闘機を変形合身させるスティックを、彼がなぜ研究してたのだろうか。
そして、マイ達はなぜ、この屋敷に入れたのだろうか。
「そもそも、結界ってなんなのよ。」
色々疑問に思うマイだったが、一番の疑問は、これだった。
「結界。
ここで言う結界とは、特殊なセキュリティシステムを指す。
条件を満たせば、中に入る事は可能。
解除方法は、行方不明のアルファポネ男爵にしか分からない。」
マインはタブレットに表示される情報を読み上げる。
「条件?私達は、その条件を満たしてたの?」
「ぷ。」
聞き返すマイを尻目に、マインは吹き出す。
「ここ、召喚者なら、誰でも入れるそうよ。」
「えー、何それ。」
マイは少しがっかり。
隠し部屋にあったスティックと手帳。
これは自分達に宛てた物らしいので、自分達が特別の存在。
自分達にしかその結界は、突破出来ないと思ってたからだ。
「なるほど、90年前に一度、大規模な調査が行われてるのね。
そこでは、何の成果も挙げられず。
以降、何度か召喚者が調査に入るも、何も分からないですって。」
「ふーん。」
マインの読み上げを聞いて、マイは本棚に視線を向ける。
隠し階段を塞いでた本棚。
あの仕掛けを、90年以上の間、誰も分からなかったのだろうか。
本を一冊づつ調べれば、分かりそうなものである。
とマイは思うのだが、時代によるものなのか、他の召喚者達には、その発想が無かったのだろう。
「あら、この屋敷に有る物は全て、重要文化財ですって。」
「ふーん。」
本棚に想いを馳せるマイは、マインの発言を聞き流す。
それは、この屋敷に有る物は、持ち出し禁止を意味している。
マイ達が隠し部屋で見つけたそれは、しかるべき所への、提出義務があった。
でなければ、この屋敷の探索任務など存在しない。
この探索任務は、今も一応継続している。
ただ、召喚者とは本来、戦争の為にこの時代に召喚された存在。
この任務に割り当てられる人材が、たまたま居なかっただけである。
「あ、」
「どったの?」
マインは、何かに気づく。
「本を一冊、ぶち壊してしまったわ。」
「あ、そう言えば。」
そう、マインが外に投げた本は、銃撃されてしまった。
「これ、謝れば許してくれるかな。」
「無理でしょ。
この星の司法に正論が通じないから、私達は密入国したんでしょ。」
マインは、マイの申し出を否定する。
「そっか、僕達が密入国者である以上、まともな話し合いは、出来ないって訳ね。」
マイも、マインの意見に納得する。
「つまり、ここを出るには強行突破しかないんだけど、」
と言ってマインは、ソウルブレイドのクダを手にする。
「取り囲んでるヤツらを切り抜ける自信はある?」
「当然。」
マイもソウルブレイドのクダを手にする。
マイ達は、屋敷を飛び出す覚悟を決める。
その覚悟を決めた時、ふとマイは思った。
「ねえ、そのタブレットがあれば、僕達も密入国しなくて済んだんじゃない?」
「あ」
マインも、マイのその言葉に、初めてその事に気がつく。
「てへ。」
マインはそう言って、ベロを出すしかなかった。
この時代に召喚されたマイは、自分のクローンが支配しているという、この時代の地球へ行く事を決意する。
ただ、地球へ向かうには準備が必要で、その間マイとマインは10日間のバカンスを楽しむ事になった。
急なバカンスと言う事もあり、ふたりにはこれと言って行きたい所なんてなかった。
とりあえず、メドーラに会いに行ってみる事にした。
しかしふたりの機体は、地球行きの準備の為、整備中だった。
仕方ないので、ガンマツーの機体で、メドーラに会いに行く。
そしてこのガンマツーの機体の整備を担当するのが、子猫ロボットだった。
その子猫ロボットが、とある惑星に興味を持ったため、マイ達はその惑星に立ち寄った。
子猫ロボット達は、とある放置されたお屋敷の隠し階段を駆け降りる。
その先には、隠し部屋があった。
その部屋の椅子には、ひとりの男が座っていた。
と言ってもこの男は、すでに死んでいて、骨だけになっていた。
その服装から、男と推測される。
机の上には小さな箱と日記帳らしきものがあった。
子猫ロボットが興味引かれるその箱には、二本の緑色のスティックが入っていた。
それは、マイ達の戦闘機を変形合身させる為の物だった。
なぜそんな物がここにあるのだろう?
日記帳によれば、この男は、アルファのクローンらしかった。
マイ達は、隠し部屋から引き揚げる。
隠し階段を登り、出口へ向かう。
「なるほど、これで私達の戦闘機が変形合身するのか。」
マインは緑色のスティックの一本を手に取り、まじまじと見つめる。
「でも、何でこれが、こんな所にあるんだろ。」
マイも、もう一本のスティックを指先でもて遊ぶ。
「その手帳には、何か書いてなかったの?
手がかりになる様な事が。」
マインは、マイが持ち帰った手帳を話題にする。
この手帳は、なぜか日本語で書かれていた。
しかし、大分劣化していて、文字がかすれていた。
最初のページに、『この部屋を見つけた知恵ある者にこれを託す』みたいな事が書かれてあった。
と言っても、この文章の文字のほとんどは欠損したりかすれたりで、マイがこう書いてあるであろうと、解釈した。
その先のページには、日付けらしき数字と、文章が綴られている。
この事から、マイはこの手帳を日記帳と判断した。
そしてこの日記帳は今、保存ケースに入れてマイのマジカルポシェットの中だ。
基地の宇宙ステーションに帰ったら、アイ達に解析してもらうつもりだ。
「なーんにも。」
マイは先ほどのマインの質問に答える。
「だって、劣化が激しすぎて、読めたもんじゃないわ。」
「そっか。この時代に日本語で残すなんて、マイへのメッセージとしか、考えられないのにね。」
マインはちょっと残念そうに、スティックをいじくる。
そんなマインの表情が、隠し階段の出口にさしかかると、突然引き締まる。
「どったの、マイン?」
「しっ。」
馬鹿づらで尋ねるマイの口を、マインは右手で押さえる。
「囲まれてるわ。」
マインは小声でマイに伝える。
「囲まれてる?誰に?」
マイも小声で聞き返す。
「分からないわよ、そんな事。」
と言いながら、マインは本棚から一冊の本を手に取る。
そしてそのまま、外から見られない様に注意して、窓際に向かう。
そっと窓を開けると、その隙間から本を外に放り投げる。
ズダダダダー!
突然、放り投げた本が銃撃を受ける。
マインの言う通り、この屋敷は何者かに包囲されていると、マイも悟る。
「もう、一体なにが起きてるの?」
マイは小声でマインに尋ねる。
「だから、分からないわよ、そんな事。」
マインも小声で返す。
自分にも分からない事を二度も聞かれ、マインはちょっと怒り気味。
マイはちょっとびくつく。
「ほ、ほんと、この屋敷の詳細くらい、分かればいいんだけどね。」
そんなマイを見て、マインは何とか場を和ませ様とする。
「ここって、なんかヤバい所だったのかな?」
マイはマインの意図を知ってか知らずか、普段のふたりの会話に戻る。
「それも、ミサが一緒なら、すぐ分かるのに。
なんでこんな時に限って、こうなるのかしら。」
マイの疑問に答えられないマインは、そんな自分に少しいらだつ。
ミサは、マインのパートナーのサポートAIだ。
普段は遠く離れた宇宙ステーションに居て、マインが額に巻くはちまきに仕組まれたチップを通じて、色々やりとりが出来る。
今の状況も、ミサが一緒なら、すぐに分かるはず。
それに慣れてるからこそ、マインは今の状況を腹立たしく思う。
そう、今のマインとマイは、パートナーとつながっていない。
ふたりのパートナーは、今は整備中だった。
「ねえ、他に情報を知る事は出来ないの?」
マイはそんなマインに聞いてみる。
最近召喚されたマイよりも、マインははるかに先輩だ。
マイよりも色々詳しいはず。
「有ったら、苦労しないわよ。」
そう、それが無いから、マインはいらだっている。
「そっか。スマホでも有ればいいのに。」
当てが外れて、しょんぼりするマイ。
「すまほ?」
マインは、マイの言った単語を聞き返す。
「そ、スマホ。」
「だから、何よそれ。」
「え、知らない?ほらこうやって、」
マインは、マイより三百年後の未来から召喚されている。
その三百年の間に、スマホは廃れたのか、別の呼び名になったのか。
マイは左手にスマホを持ち、右手をしゃっしゃするジェスチャーを見せる。
「それよ!」
マインはマイのジェスチャーを見て、何かをひらめく。
そしてマジカルポシェットから、タブレット端末らしき物を取り出す。
「いつもはミサが居るから、存在自体忘れてたわ。」
マインは少し照れた表情を浮かべる。
「なんなの、これ。」
マイのマジカルポシェットにも、同じ物が入っていた。
「これは、、名前は忘れたけど、色々調べものが出来る端末よ。」
マインはタブレットを起動させる。
メイン画面になるまで、しばらくかかる。
「これに私達の額のチップをマッチングさせれば、私達の知りたい情報にアクセス出来るのよ。」
「ふーん。」
マイもマインを真似て、タブレットを起動させてみる。
「ミサが居れば必要ないから、私も使うのは初めてなんだけどね。」
マインのタブレットは、メイン画面を表示する。
マイのタブレットは、『使用者登録をして下さい』と表示される。
マイはまだ、額のチップとのマッチングを済ませていなかった。
そんなやり方を知らないマイは、ここで行き詰まる。
タブレットの電源を落とすしかなかった。
そんなマイの横で、マインのタブレットは何かを表示する。
マイも覗き込むが、表示された内容は、マインにしか分からない。
「なるほど、この屋敷の持ち主は、アルファポネ男爵って言うのね。」
「男爵?」
「この惑星イプビーナスの植民事業に携わった、三人のリーダーのひとりですって。」
マインは、タブレットに表示される情報を読み上げる。
「植民事業がひと段落ついた頃、郊外の屋敷に引き篭もり、何かの研究に没頭。
そんな彼は、今から93年前辺りから、音信不通になる。
彼は屋敷を去ったのか、それとも屋敷内で冷たくなってるのか。
彼の安否は、不明のままである。
彼の屋敷には特殊な結界が張られていて、関係者以外入れないのである。
ですって。」
マインとマイが見た、隠し部屋の遺体。
彼がおそらく、アルファポネ男爵なのだろう。
そして彼の研究成果が、おそらくこの緑色のスティック。
マイ達の戦闘機を変形合身させるスティックを、彼がなぜ研究してたのだろうか。
そして、マイ達はなぜ、この屋敷に入れたのだろうか。
「そもそも、結界ってなんなのよ。」
色々疑問に思うマイだったが、一番の疑問は、これだった。
「結界。
ここで言う結界とは、特殊なセキュリティシステムを指す。
条件を満たせば、中に入る事は可能。
解除方法は、行方不明のアルファポネ男爵にしか分からない。」
マインはタブレットに表示される情報を読み上げる。
「条件?私達は、その条件を満たしてたの?」
「ぷ。」
聞き返すマイを尻目に、マインは吹き出す。
「ここ、召喚者なら、誰でも入れるそうよ。」
「えー、何それ。」
マイは少しがっかり。
隠し部屋にあったスティックと手帳。
これは自分達に宛てた物らしいので、自分達が特別の存在。
自分達にしかその結界は、突破出来ないと思ってたからだ。
「なるほど、90年前に一度、大規模な調査が行われてるのね。
そこでは、何の成果も挙げられず。
以降、何度か召喚者が調査に入るも、何も分からないですって。」
「ふーん。」
マインの読み上げを聞いて、マイは本棚に視線を向ける。
隠し階段を塞いでた本棚。
あの仕掛けを、90年以上の間、誰も分からなかったのだろうか。
本を一冊づつ調べれば、分かりそうなものである。
とマイは思うのだが、時代によるものなのか、他の召喚者達には、その発想が無かったのだろう。
「あら、この屋敷に有る物は全て、重要文化財ですって。」
「ふーん。」
本棚に想いを馳せるマイは、マインの発言を聞き流す。
それは、この屋敷に有る物は、持ち出し禁止を意味している。
マイ達が隠し部屋で見つけたそれは、しかるべき所への、提出義務があった。
でなければ、この屋敷の探索任務など存在しない。
この探索任務は、今も一応継続している。
ただ、召喚者とは本来、戦争の為にこの時代に召喚された存在。
この任務に割り当てられる人材が、たまたま居なかっただけである。
「あ、」
「どったの?」
マインは、何かに気づく。
「本を一冊、ぶち壊してしまったわ。」
「あ、そう言えば。」
そう、マインが外に投げた本は、銃撃されてしまった。
「これ、謝れば許してくれるかな。」
「無理でしょ。
この星の司法に正論が通じないから、私達は密入国したんでしょ。」
マインは、マイの申し出を否定する。
「そっか、僕達が密入国者である以上、まともな話し合いは、出来ないって訳ね。」
マイも、マインの意見に納得する。
「つまり、ここを出るには強行突破しかないんだけど、」
と言ってマインは、ソウルブレイドのクダを手にする。
「取り囲んでるヤツらを切り抜ける自信はある?」
「当然。」
マイもソウルブレイドのクダを手にする。
マイ達は、屋敷を飛び出す覚悟を決める。
その覚悟を決めた時、ふとマイは思った。
「ねえ、そのタブレットがあれば、僕達も密入国しなくて済んだんじゃない?」
「あ」
マインも、マイのその言葉に、初めてその事に気がつく。
「てへ。」
マインはそう言って、ベロを出すしかなかった。
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