上 下
187 / 215
地球へ

第187話 戦闘は回避したが大切なモノを失った

しおりを挟む
 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 ここ数話、色々とキャラが出てきて、よく分からない読者さんもいると思う。
 なので軽く登場人物紹介をしようと思う。
 マイ
 西暦2020年頃からの召喚者。
 この物語の主人公。
 中身おっさんの設定だが、本人は召喚前の記憶がほとんど薄れてしまい、よく分からない。
 マイン
 西暦2300年頃からの召喚者。
 幼少期に受けた虐待により、大の男嫌い。
 マイと仲良しさんだったが、40話くらいから出番もなく、最近まで液体漬けだった。
 アイ
 マイのパートナーのサポートAI。
 マインの尋問を受けて、傷ついて寝てる。
 ミサ
 マインのパートナーのサポートAI。
 マインの復活を喜ぶ反面、マインがアイを傷つけるのを止められなかった事を、激しく後悔。
 アイツウ
 メドーラのパートナーのサポートAI。
 パートナーのメドーラは、単独行動中で、アイツウは暇してる。
 ナコ
 リムのパートナーのサポートAI。
 パートナーのリムは、神武七龍神のブルードラゴンの加護を受け、変わり果ててしまう。
 だからナコは現在、マイの部屋にテントを張ってふて寝中。
 ユアとケイ
 マイ達と同じ召喚者仲間。
 先の北部戦線にて離脱。
 おそらくふたり共、この後出番は無い。
 メカニックマンのジョー
 マイのアバター体を女性型に作った張本人。
 今は別区画で戦闘機用シミュレータの修理中で、ここにはいない。



 そんな感じで、マイの仲間達は、マイのそばから離れていった。
 残ったのは、長い事液体漬けだったマインのみ。
 しかしそんなマインは、復活早々、アイに深傷を負わせてしまう。
 それがマイにとって、凄くショックだった。

「そうだったの。ごめんなさいね。」
 マインは泣き崩れるマイの前にしゃがみ込み、マイの肩に手を置く。
「僕じゃなくて、アイに謝ってよ。」
 マイは涙をぬぐいながら、マインに言う。
「そうね。」
 と言ってマインは、眠っているアイを覗き込む。
 マインは気づく。
 アイは寝ていない。
 ただ目を閉じてるだけで、内心にやにやして、マインの行動を待っている。
 マインは思わずミサの方に視線を向ける。
 ミサは目を閉じてうつむくと、首をふる。

 それは、マイとアイの思い通りにしてやれと、マインに告げている。
 マインは内心嫌なのだが。

「ごめんなさい、アイ。」
 マインはアイに操る。
 寝たふりのアイは、笑いをこらえている。
「許さないよ。」
 そんなふたりを尻目に、マイがつぶやく。
「なんでこんなひどい事したのよ!」
 マインが態度を軟化させた分、今度はマイの怒りがふつふつとわいてくる。

 マイの身体が、ほのかに青白い光りを放ち始める。
「え?」
 マインはマイの発光に驚くが、まばたきと同時に、マイの放つ青白い光りは見えなくなる。
「マイ!」
 マイの青白い光りを感じたアイは、はね起きる。
 そしてマイの上半身に抱きつく。

「私は大丈夫だから!」
「え?」
「私は大丈夫だから、マイ、怒っちゃ駄目。」
 アイは、怒りの感情を顕にするマイを、なんとかなだめる。
「よかった。アイ、無事だったんだね。」
 マイはアイに対して、安堵の表情を見せる。
 だけど、マインに対しては違う。
「マイン、あんたは許さないよ。」
 マインをにらむマイの表情は、怒りに満ちている。

「だからマイ、私、マインの事怒ってないから!」
 アイは腰ほどの高さのあるベッドから飛び降りると、マイを前方から抱きしめる。
「何言ってんの、アイをこんなに傷つけたんだよ。
 許せる訳ないじゃん。」
 マイの感情を押し殺したその声は、マイの怒りの深さを感じさせる。
 このままではマイを止められないと判断したアイは、反転して、素早くマインに駆け寄る。
 そしてマインの両手を握る。

「ほら、私たちはこんなに仲良しなのよ。」
 とアイはニヤけるが、マインは突然の事に、きょとんとしている。
「何やってんの、あんたも合わせて。」
 アイはマインの耳元でつぶやく。
「あ、ああ。」
 マインもアイの意図を、なんとか理解する。
「わ、私もアイ大好きぃ。
 さっきはやりすぎちゃって、ほんとごめんねー。」
 マインも棒読みながら、アイとの仲の良さをアピール。

「ぷ。」
 その様子にミサもアイツウも、テント引き篭もるナコも吹き出した。
 だけどマイは、そんなふたりをまじまじと見つめている。

「も、もう。ほんと痛かったんだからね。」
「ごめんよ。愛情表現が、ちょっと過ぎちゃったかな。」
「もっと優しくしてくれても、よかったじゃない。」
「私も、やりすぎちゃった。今度から気をつけるから、許して。」
「ほんとに優しくしてくれる?」
「もちろんさ。私が大好きなアイに、嘘ついた事なんて無いだろ。」
「だったら、許そかな。」
 ちら。

 小芝居を続けたアイとマインは、マイの様子をちら見する。
 マイは、顔を真っ赤にしている。
「え、え?
 アイのその傷って、え、そゆ事?」
「そゆ事?」
 マインは、マイの言いたい事が分からなかった。
「ち、違うのよ。あ、違くないけど、違うのよ。」
 アイは、マイの勘違いに気がついた。
 だけど全否定は出来ない状況だった。

「あんたが変な事言うから、ややこしくなったじゃない。」
 アイは小声でつぶやく。
「え、あ、ち、違うんだマイ。勘違いするなよ。」
 マインも、マイの勘違いに気づく。
「も、もう、そんなに全否定しなくてもいいじゃない。」
 とマイは、勘違いを続ける。
「ふたりがそんな仲だったなんて、僕知らなかったよ。きゃ。」
 マイは顔をそらしながら、両手で顔を隠す。

 真顔で見つめあうマインとアイ。
「おい、どうするんだ、これ。」
「しばらく、勘違いは続きそうね。」
「しばらくで済むのか、これ。」
「ぷぷ、まあいいじゃないか、マイの怒りも治まった事だし。」
 ふたりの会話に、ミサも混ざった。
「それもそうね。」
 とアイは、マイの近くに歩み寄る。

「ねえ、勘違いしてる所、悪いんだけどさ。」
 とアイはマイに声をかける。
 顔を隠してたマイは、両手をどけて、アイを見る。
 アイはマイに尋ねる。
「あなたって、やっぱり男なの?」

 マイはばかツラのまま固まる。
「おい、その話しは、もういいだろ。」
 とミサが突っ込む。
「あら、私もこんな目にあったのよ。
 聞く権利くらいあるわよ。ねえ。」
 とアイはマインに話しをふる。
「あ、いや、それはもう、ね。」
 マインは少しきょどる。

「おまえだって分かってるだろ、事の真相くらい。」
「そうね、ついにこの時が来てしまったって事ね。」
「え?」
 思わせぶりなミサとアイの会話に、マインは少し驚く。
 その横に居るアイツウも、ふたりの会話に入れない。

「マイの変調。」
 ミサにそう言われて、マイのばかツラが元に戻る。
「マインへの精神干渉。」
 とアイは呼応する。
 ミサとアイは見つめあい、うなずく。

「来てしまったのね、歴史が動く、この時が。」
 アイはマイを見つめ、そう締めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

さっさと離婚したらどうですか?

杉本凪咲
恋愛
完璧な私を疎んだ妹は、ある日私を階段から突き落とした。 しかしそれが転機となり、私に幸運が舞い込んでくる……

戦国武将と晩ごはん

戦国さん
キャラ文芸
 ある地方都市で暮らす女子高校生・御角 倫(みかど りん)。  彼女の家には、なぜか織田信長を筆頭に、週に一度さまざまな武将が訪れてくる。  織田信長と伊達政宗との出会い。  真田兄弟の時空を超えた絆の強さ。  信長と敗走する明智光秀や関白・豊臣秀吉との邂逅。  時間も時空も超えて訪れる武将たちは、倫が振る舞う美味しい現代飯の虜になっていく。  今日も武将たちと倫の間に起こる日常の『飯』物語。

突然現れた自称聖女によって、私の人生が狂わされ、婚約破棄され、追放処分されたと思っていましたが、今世だけではなかったようです

珠宮さくら
恋愛
デュドネという国に生まれたフェリシア・アルマニャックは、公爵家の長女であり、かつて世界を救ったとされる異世界から召喚された聖女の直系の子孫だが、彼女の生まれ育った国では、聖女のことをよく思っていない人たちばかりとなっていて、フェリシア自身も誰にそう教わったわけでもないのに聖女を毛嫌いしていた。 だが、彼女の幼なじみは頑なに聖女を信じていて悪く思うことすら、自分の側にいる時はしないでくれと言う子息で、病弱な彼の側にいる時だけは、その約束をフェリシアは守り続けた。 そんな彼が、隣国に行ってしまうことになり、フェリシアの心の拠り所は、婚約者だけとなったのだが、そこに自称聖女が現れたことでおかしなことになっていくとは思いもしなかった。

異世界子ども食堂:通り魔に襲われた幼稚園児を助けようとして殺されたと思ったら異世界に居た。

克全
児童書・童話
両親を失い子ども食堂のお世話になっていた田中翔平は、通り魔に襲われていた幼稚園児を助けようとして殺された。気がついたら異世界の教会の地下室に居て、そのまま奴隷にされて競売にかけられた。幼稚園児たちを助けた事で、幼稚園の経営母体となっている稲荷神社の神様たちに気に入られて、隠しスキルと神運を手に入れていた田中翔平は、奴隷移送用馬車から逃げ出し、異世界に子ども食堂を作ろうと奮闘するのであった。

正妃に選ばれましたが、妊娠しないのでいらないようです。

ララ
恋愛
正妃として選ばれた私。 しかし一向に妊娠しない私を見て、側妃が選ばれる。 最低最悪な悪女が。

寵妃にすべてを奪われ下賜された先は毒薔薇の貴公子でしたが、何故か愛されてしまいました!

ユウ
恋愛
エリーゼは、王妃になる予定だった。 故郷を失い後ろ盾を失くし代わりに王妃として選ばれたのは後から妃候補となった侯爵令嬢だった。 聖女の資格を持ち国に貢献した暁に正妃となりエリーゼは側妃となったが夜の渡りもなく周りから冷遇される日々を送っていた。 日陰の日々を送る中、婚約者であり唯一の理解者にも忘れされる中。 長らく魔物の侵略を受けていた東の大陸を取り戻したことでとある騎士に妃を下賜することとなったのだが、選ばれたのはエリーゼだった。 下賜される相手は冷たく人をよせつけず、猛毒を持つ薔薇の貴公子と呼ばれる男だった。 用済みになったエリーゼは殺されるのかと思ったが… 「私は貴女以外に妻を持つ気はない」 愛されることはないと思っていたのに何故か甘い言葉に甘い笑顔を向けられてしまう。 その頃、すべてを手に入れた側妃から正妃となった聖女に不幸が訪れるのだった。

JK LOOPER

猫ノ謳
ファンタジー
【最初にドーン!】 現代の地球にて、突如、[神のデスゲーム]が執行されてしまいます。 日本の、とある女子高生が、ひょんなことから、タイムループしたり、ジョブチェンジしつつ、終末に挑んでいく事になりました。 世界中を巻き込んでの、異形の者たちや人類との戦いの果てに、彼女らは未来を変えられるのか?! それとも全滅してしまうのか?? といった、あらすじです。 【続いてバーン!】 本編は、現実世界を舞台にしたファンタジーです。 登場人物と、一部の地域や企業に団体などは、フィクションであり、実在していません。 出来るだけグロい描写を避けていますが、少しはそのような表現があります。 一方で、内容が重くならないように、おふざけを盛り込んだりもしていますが、やや悪ノリになっているのは否めません。 最初の方は、主人公が情緒不安定気味になっておりますが、落ち着いていくので、暖かく見守ってあげてください。 【最後にニャ―ン!】 なにはともあれ、楽しんでいただければ幸いです。 それではこれより、繰り返される時空の旅に、お出かけください。

平民と恋に落ちたからと婚約破棄を言い渡されました。

なつめ猫
恋愛
聖女としての天啓を受けた公爵家令嬢のクララは、生まれた日に王家に嫁ぐことが決まってしまう。 そして物心がつく5歳になると同時に、両親から引き離され王都で一人、妃教育を受ける事を強要され10年以上の歳月が経過した。 そして美しく成長したクララは16才の誕生日と同時に貴族院を卒業するラインハルト王太子殿下に嫁ぐはずであったが、平民の娘に恋をした婚約者のラインハルト王太子で殿下から一方的に婚約破棄を言い渡されてしまう。 クララは動揺しつつも、婚約者であるラインハルト王太子殿下に、国王陛下が決めた事を覆すのは貴族として間違っていると諭そうとするが、ラインハルト王太子殿下の逆鱗に触れたことで貴族院から追放されてしまうのであった。

処理中です...