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地球へ

第169話 ルールを守っても楽しくないデュエルもある

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の激戦が終わった。
 仲間が減った事により、落ちこむマイ。
 そんなマイの横で、パートナーの居なくなったナコとアイツウは、カードゲームに興じる始末。
 おこたでシッティングデュエルをしていたふたりは、ゲームセンターにある様な固定されたバイクを出すと、そのままライディングデュエルに興じる。
 ふたりの固定されたバイクの前には、ゲームセンターの様なモニターが設置されている。
 それでコースが表示されてるようだった。
 マイは思った。
 パートナーの居ないサポートAIって、暇なんだな。
 つか、なんでマイの部屋でやるのだろうか。
 余所でやってくれ。


「む。」
 ライディングデュエルを楽しんでいたナコの表情が、突然引き締まる。
 ナコはそのままサレンダーし、デュエルを終える。
 と同時に、ライディングデュエルセットの筐体が、姿を消す。
「マイ、リムが会いたいそうよ。」
「え?」
 突然話しかけられて、マイは困惑。
 マイの部屋の片隅で、好き勝手やってるナコとアイツウに、マイは何も言えないでいた。
 そんなヤツらにいきなり話しかけられても、マイは戸惑うだけだ。

「どうする、マイ。」
 望む答えを返さないマイに、ナコは再び話しかける。
「つなぐけど、話してみる?」
 答えを迷うマイに、アイが助け船を出す。
「う、うん。」
「分かったわ。」
 マイの言葉に、ナコはうなずく。

 パートナー持ちの召喚者同士なら、サポートAIを介する事で、離れていても会話は可能だった。

「はあい、マイ。久しぶり。元気してた?」
「リム、久しぶり、」
 久しぶりに聞く、リムの声。
 マイは思わずウルっときて、言葉が続かない。
「どうしたの、マイ。泣いてるの?」
「な、泣いてないよ。ぐすん、ぐすん。ちょ、ちょっと待って。」
 言葉の出ないマイを気づかうリム。
 気丈に振る舞いたいマイだが、それは無理のようだった。

「ちょっと、どうしちゃったのよ、マイ。」
 リムは自分のパートナーであるナコに、尋ねる。
「なんだか、あなたとメドーラと別れてから、元気なくて。」
 ナコは自分の知りうる現状を説明する。
「私とアイツウとで、マイを元気づけようと楽しく遊んでても、ノってこないのよ。」
「え?」
 ナコのその言葉に、アイは思わずナコを見る。
 ナコとアイツウは、そんな理由で、ここで遊んでたのだろうか。
 アイは、視線をアイツウに向ける。
 アイツウは慌てて首をふる。
 どうやら、アイツウにはそんな気はなかったらしい。

「あなたねえ、それでどうやって、マイを元気づけるのよ。」
 リムはナコに聞き返す。
「え?
 目の前で楽しそうに遊んでたら、一緒に遊ぼって、笑いながら言ってこない?」
 ナコにとって、リムの聞き返しは意外だったらしい。
「確かに、ひとりぼっちはつまらないわ。」
 リムも、ナコのパートナー。
 ナコのいい分に、理解を示す。
「でしょ?
 誰とでも友だちになって、仲良くなるべきでしょ?」
 ナコも意気投合するリムに、自論を続ける。

「でも、そこにマイの入ってくる場所は、あったのかしら?」
 と、リムはナコの自論の問題点をつく。
 ナコは、ハッとする。
「そ、そうでした。あれだと、私とアイツウとのふたりで完結する世界…!」
 ナコは、自論の問題点に気がつく。
「あれだと、マイも一緒にデュエルしようぜって、言えないわ!
 そうね、アイを先に誘って、タッグデュエルしたいなあって、マイをちらちら見るのが正解だったんだわ!」
 ナコはその場に両手をついて崩れた。

「だったら、最初から素直に誘ってほしいな。」
 と、マイはつぶやく。
 リムとナコとの会話。
 ふたりにはその気はなかったが、ふたりの会話は、この場の全員に伝わっている。
「そ、そうね。」
 ナコは何事も無かったかのように立ち上がるが、表情は恥ずかしさに歪んでいる。
「こ、今度は4人で、バトルロイヤルモードで、デュエルしましょうか。」
 ナコは、改めてマイをデュエルに誘う。
「え、やだよ?」
 マイは普通に拒否する。
「微ショック。」
 ナコは少し、ショックを受ける。

 相手はサポートAI。
 プレイングミスと言うものは、絶対発生しない。
 ほとんど勝ち目の無いデュエルを、誰がやりたいのか。

「あは、マイも少しは元気でたみたいね。」
「お、お陰さまで、少しは。」
 リムに言われて、マイは少し照れる。

「で、マイには、私の手伝いをしてもらいたいんだけど、駄目かな?」
 リムは、いきなり本題に入る。
「て、手伝い?」
「って、話しが急すぎたかな。」
「うん。」
 マイにとって、リムの話しが見えてこない。
 少し説明が必要だった。

「えと、私は今、新人チームの教官をしてるんだけどね。」
 リムは、順を追って説明する。
「この子達が、生意気なのよ。」
 と言われても、それがマイに手伝わせる事になるのか、マイには分からない。

「北部戦線の戦闘を終わらせたマイ。
 でも、そんなの戦闘機の性能と、サポートAIが優秀だったからでしょ、って言うのよ。」
「え?」
 リムの言葉に、マイは少しショックを受ける。
「そ、うね、僕がしっかりしてれば、ユアも、死ななかった。」
 マイの身体が震えだす。
 マイは両手で二の腕を掴むが、震えは止まらない。
「マイ、しっかりしなさい!」
 そんなマイに、リムは叫ぶ。
「ユアもケイも、死んでないでしょ。
 元の時代に、還っただけでしょ!」
「でも。」
 元の時代に還ったと言っても、この時代から居なくなった事、もう会えない事には、変わりない。

「ああ、もう。」
 リムは思い出す。
 マイは、ねちねちと暗い後ろ向きなヤツだったと。
 超高次元空間での神武七龍神との会合を経て、少しはマシになったかと思ったけど、根本的な所は変わらないようだ。
「私は、悔しいのよ。」
 そんなマイをよそに、リムは自分語りをはじめる。

「私のベータエックスはね、私の為に作られた機体なのよ。
 つまり、マイのアルファーワンより、性能と相性は上なのよ。」
 と言われても、マイにはピンとこない。
「ここの子達はね、私をこの時代の人間って認識してるようだけどね、マイを馬鹿にするって事は、私も馬鹿にしてるって事なのよ。」
「ぼ、僕の事はともかく、リムを馬鹿にするなんて、許せないな。」
 リムの言葉に、マイも少し怒りがわいてくる。

「あなたねえ、自分の事でも少しは怒りなさい。」
 リムはマイに対して、少し呆れてしまう。
「で、来てくれるわよね、あの子達の鼻をあかしに。」
「うん。僕行くよ。」
 リムの言葉に、マイは力強くうなずいた。
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