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異次元からの侵略者

第165話 少し昔の話しをしよう

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の激戦に、ついに終止符が打たれる。
 北部戦線一帯を、突然覆った青いモヤ。
 この青いモヤの中では、いっさいの戦闘行為が不可能だった。
 そしてこの青いモヤは、あるひとつの武器を除いて、全ての存在を一光年ほど遠ざけた。
 この場に残された武器とは、コアブレイカーだった。
 そしてこのコアブレイカーにより、衛星基地ソゴムは破壊される。
 この戦場から、侵略者達の姿が消えた。
 誰を相手に、何を賭けて戦っていたのか。
 それに答えてくれる敵は、もうこの場にはいない。
 戦う相手がいなくなり、北部戦線の激戦は終わった。


 そんな北部戦線からは、時空を遠く離れたある星のある場所。
 湖畔に建つ別荘の一室で、ひとりの女性が目を覚ます。
「っ。」
 女性は身体を右にひねろうとしたが、身体は動かなかった。
 それに対して声が出る所だったが、うまく発音出来なかった。

「あら、眼が覚めたのね。」
 女性の動きを察知して、側にいた別の女性が声をかける。
 寝ていた女性は、その声のする方へと首を傾ける。
 しかし、身体はうまく動かせない。

「無理をしないで、ユア。あなたはずっと寝たきりだったんだから。」
「ユア?」
 側にいた女性は、自ら動いて、ユアと呼ぶ寝ている女性の視界に入る。

 グラマラスな女性。
 ユアと呼ばれた女性は、そのもうひとりの女性を見て、直感的にそう感じた。
 白衣を着たその女性は、見事な赤い髪をしていた。
 腰まで伸びたその赤い髪は、軽くウエーブがかかっている。
 普通はこの赤い髪に最初の印象がいきそうだが、グラマラスな体格に気がいったのは、何故だろうか。
 寝ている方の女性も赤い髪だったが、これほど見事な赤い色はしていない。

「私の名前は、ユアじゃないわ。」
 ユアと呼ばれた女性は、その名を否定する。
「あら、それなら、あなたの名前は、何かしら?」
 グラマラスな女性は、にっこりとユアと呼ぶ女性に問いかける。
「私の名前は、あれ、何故かしら、思い出せないわ。」
 ユアと呼ばれた女性は、自分の名前を思い出せなかった。

「お、お嬢さま。」
 丁度この時、寝室の扉が開かれる。
 この館のメイドが、ユアと呼ばれた女性が目覚めている事に驚く。
「ええ、お嬢さまにはまだ安静が必要だけど、眼が覚めたわ。」
 グラマラスな女性が、メイドに声をかける。
「はい。旦那さまがたに、お知らせして参りますわ。」
 メイドは喜びに涙を浮かべ、扉を閉めるとそのまま駆け出した。

「ねえ、お嬢さまって、私の事?」
 ユアと呼ばれた女性は、グラマラスな女性に問いかける。
「あら、自分がなんて呼ばれてたのかも、思い出せないのね。
 まだ記憶が混濁しているようね。」
 と答えるグラマラスな女性を、ユアと呼ばれた女性は、じっと見つめている。

「あなたには、会った事がある様な気がするわ。
 ねえ、あなたの名前を、教えてくださらない?」
 ユアと呼ばれた女性は、問いかける。
「私?私の名前は、ユウよ。」
「ユウ?あなたはあなた〔you)なの?」
「ええ、そうよ。私はユウ。」
 ユウと答えた女性は、ユアと呼ばれた女性の視線を、しっかりと受け止める。
 そして、優しく見つめ返す。

 そんな名前のはずがない。
 と思うのだが、何故かその名がしっくりときた。
 そして自分に対するユアと言う名前も、何故かしっくりくる。
「何故かしら、そんな気がしてきたわ。
 夢で会ったのかしら。」
 名前については全否定したいのだが、それを出来ない自分がいた。

「どんな夢を、見てたのかしら。」
 ユウと名乗るグラマラスな女性が、問いかける。
「夢?」
 ユアと呼ばれた女性は、夢の記憶をさかのぼる。
 そして、おもむろに右手を宙に伸ばし、虚空を掴む。
「剣で、戦ってた様な、気がするわ。」
「剣?」
「剣と言うか、剣は握りの部分しか無くて、刀身は自在に伸びてくる感じだったわ。」
 と、ユアと呼ばれた女性は、ふりかえる。

「まるで、ライトセイバーみたいね。スターウォーズの。」
 ユウと名乗る女性は、SF映画の名を口にする。
「ライトセイバー?」
「そ、知らない?スターウォーズ。」
「それは知ってるわ。」

 ユアと呼ばれた女性の、スターウォーズに対する知識。
 それは人類がまだ宇宙に飛び立てなかった原始時代、当時の妄想を元にして作られた、SF映画。
 その後の宇宙の知識が深まるたびに、映像技術が進歩するたびに、何度も創り続けられた作品だった。
 その映画に出てくるライトセイバーは、5000年以上経ったこの時代でも、再現不能だった。

「でも、ライトセイバーとは違ったわ。」
 ユアと呼ばれた女性は、伸ばした右手の握り方を、色々変えてみる。
「色んな武器に、変化したわ。
 光線銃なんかにも、形を変えたわ。」
「あら、それを実現出来たら、面白そうね。」
 とユウと名乗る女性は、相づちをいれる。
「そうね、これは何とかして、実現したいわね。
 それに、」
 ユアと呼ばれた女性は、ここでまた、記憶をたどる。

「戦闘機で宇宙を飛んでたけれど、あれ、普通に光速飛行してたわね。」
 ユアと呼ばれた女性は、少し考えこむ。
「これ、再現出来るんじゃないかしら。」


 この時代、突然寝込む女性が急増していた。
 そのまま衰弱死するのがほとんどだったが、目を覚ました患者も、少なからず存在した。
 ユアと呼ばれた女性は、超セレブなお嬢さまだった。
 夢で見た技術の再現に、費やす費用も莫大にあった。
 そしてこの謎の寝たきりを追う新聞記者の力をかり、回復した他の者達を集めた。
 とは言え、回復した者はごく僅か。
 さらに、夢の記憶を有している者は、ふたりしかいなかった。

 そしてこの新聞記者は、ケイと名乗ったという。
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