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異次元からの侵略者

第153話 愛車を誰かに運転させるのって、なんかドキドキするよね

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 超高次元空間にてブルードラゴンの龍神騎を撃破した、オメガクロス。
 だがその事で、ブルードラゴンの逆鱗に触れてしまう。
 ブルードラゴンは怒りに我を忘れ、超巨大な姿で顕現してしまう。
 その巨体であるが故に、満足に動けないブルードラゴン。
 その隙を突いて攻撃するが、ブルードラゴンの強靭な鱗の前に、オメガクロスの装備ではなす術が無かった。
 そんな中、ケイのアドバイスを思い出す。
 弱点はここ。
 そこを突くためのビームサーベルを作るためには、設計図が必要になる。
 マイは設計図のイメージに集中するため、オメガクロスの操縦をユアとメドーラに託す。
 ブルードラゴンも己れの弱点を、克服しつつあった。
 操縦者の変わったオメガクロスを見据えると、そのまま氷のブレスを吐きつける!


 オメガクロスの操縦は、三体合身の基盤になるシリウスアルファーシリーズのパイロットの思考コントロールにて行われる。
 つまり、四体存在するアルファーシリーズ同士が合身すれば、操縦権は四人が持つ事になる。
 マイは、自分の思考に介入させる事で、ユアとメドーラにオメガクロスの操縦権を渡した。

「く」
 ユアはオメガクロスを上昇させ、氷のブレスをかわす。
 ブルードラゴンも頭を上に向ける事で、オメガクロスを追従した氷のブレスをはく。
 ここで、更に上昇させてかわそうとするが、マイの思考がそれを邪魔する。
「だめ。ミズキから距離をとらないで。」
 マイの思考が、ユアとメドーラに流れ込む。
「で、ですがマイお姉さま。」
 メドーラは反論を口にする。

 ブルードラゴンの激しい攻撃。
 発するプレッシャー。
 とてもじゃないが、近づけない。

「そう言う事か。」
 ユアはマイの言葉の意味を理解する。
 ユアは氷のブレスを左方向にかわして下降する。
「ちょ、ちょっとユアお姉さま。危険ですわ。」
 メドーラはユアの行動を非難する。
 メドーラには、あえて危険をおかす意味が分からない。
 氷のブレスの射程外で、マイがビームサーベルを完成させるのを待つ方が、得策だと思っている。

「な、何言ってんだ、メドーラ。」
 ユアは逆に、メドーラの言葉に驚く。
 先ほどのマイの「」は、マイの思考。
 その意味する事も、なんとなくだが伝わってくる。
 つまり、ユアが感じとったマイの真意を、メドーラは感じ取れなかった事になる。

 メドーラは、マイの事をお姉さまと慕っている。
 その絆のおかげで、過去の自分との呪縛から解放された。
 そしてメドーラがユアやケイをお姉さまと呼ぶのは、マイのついでにしかすぎない。
 と、ユアは理解している。

 そんなメドーラが、ユアにも読み取れたマイの真意に、気づく事が出来なかった。
 それとここ数話のメドーラのマイに対する態度。
 これにはユアも、メドーラがマイに対しての感情に、なんらかの変化を感じとる。
 だけど、その事を詮索する余裕は、今はない。

「メドーラ、ブルードラゴンから距離をとる事は、ヤツに超巨大化に対応する余裕を与える事になるの。」
「そ、そんな事」
 ないと、メドーラは言いたかった。
 だけど、上空で左旋回してかわすオメガクロスへのブレス攻撃は、絶える事がない。
 その事は、メドーラにも見てとれた。
 ブルードラゴンは背中の翼を大きく動かす事で、自身の向きを変える基盤にしている。
 翼の動きで崩れたバランスを、両手両足をその方向の地につかせ、踏ん張る。
 この事で、休みのない連続攻撃が可能となっている。
 今はバランスを取るために広げている、ブルードラゴンの翼。
 これが飛翔のために使われるのも、時間の問題だろう。

「だから、その時間を与えないために、攻め続けるの!」
 ユアはオメガクロスを、ブレス攻撃の周りを回らせながら下降させる。
「天翼心拳奥義、スパイラルキック!」
 オメガクロスは急降下してブルードラゴンの左肩に蹴りをぶち込む。
「ぐぎゃああ」
 ブルードラゴンは自らの左肩に乗るオメガクロスに、自らの鋭い牙をあびせる。
「遅い!」
 ユアはオメガクロスを前方宙返りさせて、ブルードラゴンの攻撃をかわす。
 その宙返りした状態のまま、右脚を伸ばす。
「天翼心拳奥義、回転かかと落とし!」
 オメガクロスの右脚のかかとが、ブルードラゴンの背中にめり込む!
「ぐぎゃああ!」
 だがブルードラゴンも、間髪入れずに尻尾の一撃をオメガクロスに叩き込む!
 吹き飛ばされるオメガクロスも、一定距離で踏ん張る。

「だんだん、巨大な身体に慣れてきたようね。」
 ブルードラゴンが反射的にとった、今の攻撃。
 それの意味する事は、ユアの言葉の通りだった。
 今はその場で向きを変えるくらいだが、その場から動けるようになるのも、もはや時間の問題。
 そうなったら、いかにオメガクロスといえど、勝ち目はない。

「だったら、攻め続けるのみ!
 幸いこの機体は、天翼心拳に対応している!」
 ユアはオメガクロスを突っ込ませて接近戦を挑む。

 天翼心拳。
 これは、人型機体、いわゆるロボットを操って闘う拳法の一種。
 思考コントロールの歴史は結構古く、西暦2200年には、その片鱗が見てとれる。
 とは言っても当時の思考コントロールは、脳への影響もあり、単純な反応しか出来なかった。
 それも、短時間しか対応出来なかった。
 時が経つにつれ、反応出来る内容も増えていき、対応時間も長くなった。
 それでも高度な戦闘には耐えられなかった。
 そんな限られた反応で、最大限の能力を引き出す為に、様々な拳法が編み出された。
 天翼心拳も、そのひとつ。
 西暦7300年頃に編み出された天翼心拳は、飛翔する人型機体と一体化する事で、その真価を発揮する。

「はあ!」
 ユアはオメガクロスを操り、ブルードラゴンを翻弄する。
 ブルードラゴンの足元から突然飛び上がり、首筋に蹴り叩き込む。
 そうかと思えば、上空から急降下してブルードラゴンの脳天に蹴りを叩き込む!

「はあ、はあ。」
 次第に、ユアの呼吸が乱れてくる。
 天翼心拳の乱発は、操縦者の負担が大きかった。
 それは、ユアが元居た時代よりも、はるか未来の機体であるオメガクロスでも、同じだった。
「まだまだぁ!」
 ユアの操縦も単調なモノになっていく。
 それでも、近距離に張りつき、ブルードラゴンを怒らせる。
 超巨大化への対応をブルードラゴンに取らせない、一定の効果を上げていた。

「ユア、ごめん。最後のイメージが、どうしても分からない。」
 ビームサーベルの設計図をイメージしていたマイの思考が、この場にいる操縦者、ユアとメドーラに流れ込む。
「分かった。協力する。」
 ユアには、マイがどこまで完成させたのか、どこで行き詰まったのか、すぐに理解出来た。
「メドーラ、後はお願い。
 この距離をキープしてればいいから。」
 ブルードラゴンは、身近をうるさく飛び回る蚊をウザがるように、オメガクロスを叩き落す事に躍起になっている。
 この距離をキープし続ければ、ブルードラゴンの超巨大化への対応も、後回しにされるだろう。

「わ、分かりましたわ。」
 メドーラはユアから操縦を引き継ぐ。
 実際メドーラには、ユアの様な操縦は出来なかった。
 大雑把な動きしか、出来なかった。
「メドーラ、ごめん。もう少し耐えて。」
 マイのその思考も、今のメドーラには届かなかった。

 マイは左手にソウルブレイドのクダを持ち、ユアの方に差し出す。
 ユアはそのクダに、そっと手をそえる。
 マイには、ソウルブレイドがクダ状の状態から、どうやって武器に展開されるのか、そのイメージがつかめなかった。
 そこでユアが実際に展開させて、その過程をマイが感じとる。

「いくよ、マイ。」
 ユアの言葉に、マイはうなずく。
 ユアはソウルブレイドを武器に展開させる。
 しかし今回は、その過程重視のため、実際の武器化には至らない。
「ありがとう、ユア。おかげでイメージ出来たよ。」
 今のマイには、それで充分だった。

 オメガクロスの左腰に、ソウルブレイドのクダが装着される。
 その長さは、オメガクロスの手首から肘くらいの長さだった。
 比率で言えば、従来のソウルブレイドより、僅かに短いと言える。

「メドーラ、ありがとう。後は僕に任せて。」
 マイは今回初めて、言葉を発した。
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