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異次元からの侵略者

第150話 ロボットをどうやって操縦してるかは、気にするな

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 超高次元空間にいる神武七龍神ブルードラゴンのミズキと、北部戦線で暴れているブルードラゴン。
 暴れるブルードラゴンを止めるには、ミズキを説得しても意味のない事だった。
 本当に止めたいのなら、超高次元空間のミズキを倒すしかない。
 マイもその事に気がついた時、ミズキはその姿を龍神騎に変える。
 それは神武七龍神が理性を持って戦う姿。
 メカメカしい機体は、どこか神々しく、気品に満ちあふれていた。


 龍神騎に姿を変えたブルードラゴンの右側に、背丈ほどの槍が出現する。
 龍神騎が右手でその槍を掴むと、そのままオメガクロスに襲いかかる!

「くっ。」
 オメガクロスは上昇して龍神騎の攻撃をかわす。

 オメガクロスの操縦は、マイの思考で自在に操れる。
 ユアとメドーラは、マイの死角に注意を払い、その情報はマイと共有出来る。

 即座にオメガクロスを動かせたマイは、理解する。
 このオメガクロスに足りないものを。
 それは、サポートAIの存在。
 サポートAIの干渉も、今いる超高次元空間には及ばない。
 サポートAIの収まるその部分が、ぽっかり穴が空いてるように、マイは感じる。
 実際、立体映像を投影して、そこに質量持たせる事で実体化させて作り出す武器は、使用不能である。
 大きな長方形っぽい盾、ビームライフル、ビームサーベル。
 これらの武器は、サポートAIの手助けで、投影される。
 つまり、今は使用不能。

 今使える武器は、額にあるバルカン砲、腹部に内蔵されたミサイル二発、腰の右側に装着された、ソーサラーボム。
 そして両脚のふくらはぎの後ろに装着された、二本のナイフだけである。
 これらの武器は、合体する前の戦闘機のどこにあったのかは、不明。
 つか、不毛な議論である。
 元々、戦闘機の容積を無視した合体である。
 原子レベルまで破壊されても、元に戻るような戦闘機だ。
 合体に即して、形状を変えてるのだろう。

 マイは、左右のふくらはぎにあるナイフを、両手に装備する。
「ユア、サポートお願い!」
「よっしゃ、まかせろ!」
 ユアの思考が、マイの身体に流れ込む。
 ユアの思考をトレースして、マイがオメガクロスを動かす。
 ユアがソウルブレイド戦に長けた召喚者である事は、何度も書いている。
 つまり、白兵戦はユアの独壇場とも言える。

「ブラッディースクリュー!」
 ブルードラゴンの龍神騎が、槍をドリルの様に回転させて突いてくる。
 オメガクロスは右側にかわすと、そのまま攻撃に転じる。
 しかし、龍神騎は槍を横に薙ぎ払う。
 オメガクロスは両手のナイフで、この攻撃を受け止める。
 龍神騎はそのまま槍を振り払う。
 後方へと吹っ飛ぶオメガクロス。

「ランサーレイン!」
 オメガクロスが吹っ飛ぶ最中、龍神騎は槍を上空高く放り投げる。
 上空の一点が光るとともに、無数の槍が雨の様に降りそそぐ!

「くっ」
 オメガクロスは体勢を整えると、降りそそぐ槍の雨をかわしまくる。
 ここで、オメガクロスは判断に迷う。
 搭乗する三人の考えが、バラバラだからだ。
 メドーラはその場で8の字を描きながらかわす事を考える。
 ユアは龍神騎に突っ込む事を考える。
 マイは、上空の光る一点を攻撃しようと考える。

 基本、オメガクロスを操縦するのはマイだ。
 だからマイの考えが優先される。
 しかし、ユアとメドーラの思考も同時に、マイの中に入ってくる。
 他の対処法もあるのかと、マイは迷う。
 オメガクロスは上空を見上げたまま、動きが止まる。

 迫り来る槍の一本を、右手のナイフを手放して、咄嗟に掴む。
 その槍の勢いに押され、オメガクロスはその場で一回転。
 そこから素早く体勢を立て直すと、その槍で降りそそぐ槍を叩き落す。
「うおおお!」
 持っている槍を、上空の光る星めがけて投げつける。
 槍が光る星を貫くと、槍の雨がやんだ。

 オメガクロスは素早く龍神騎の方に向き直る。

「ほう、ランサーレインを無傷で切り抜けるとは、やるな。」
 龍神騎は余裕の笑みを浮かべる。
 対してオメガクロスはクタクタだ。
 龍神騎は右手に持つ槍を振り回す。
 右斜め下方に槍先を向け、素振りをやめる。
 そしてマイ達に話しかける。

「どうやらそのマシン、面白い操縦方法なんだな。」
 龍神騎は、オメガクロスの弱点を見抜く。
「どう言う事?」
 マイが聞き返すと、龍神騎は素早く槍を投げつける!
 対応するオメガクロスの反応が鈍る。
 三人の考える対処法が、バラバラだからだ。
「くっ」
 最終的に、左手のナイフで槍を払いのける。

「は、は、は。
 そんなザマで我を倒そうとは、片腹痛いわ!」
 龍神騎は右手に槍を持って突っ込んでくる。
 オメガクロスは上空へと逃げる。
「我を楽しませる事も、出来ぬのか!」
 龍神騎はオメガクロスを追いかける。

「ユアお姉さま、マイお姉さまに任せましょう!」
 オメガクロスのコックピット内で、メドーラはユアに呼びかける。
「それが、得策のようだな。」
 ユアもメドーラの意見に同意する。
 自分達の思考が、マイの操縦の邪魔をしてるのは、明確だ。

「ちょ、ちょっと。僕なんかに任せて、それでいいの?」
 だけど、マイは戸惑う。
 マイはこのふたりには劣ると、自覚してるからだ。
 そして白兵戦なら、ユアを頼るべきだ、と思っている。
 だけどユアは首を振る。
「この機体を動かしてるのは、マイなんだ。
 マイの思うがままに、動かしてみせろ。」
 ユアは右手の親指を立てて、ニカッとほほえむ。

「でも。」
 それでもマイは、にえくりかえらない。
「マイお姉さま、しっかりして下さい!」
 ここでメドーラも、しびれをきらす。
「私とユアお姉さまが、今無事でいられるのも、マイお姉さまのおかげなのですよ。
 もっと自信を持って下さい!」
 と言われても、マイは自信なさげにうつむいたままだ。

「マイ!」
 ユアは、追ってくる龍神騎が槍を投げつけてきた事を、マイに感覚として伝える。
「くっ」
 マイはオメガクロスを振り返らさると、額辺りに装備されたバルカン砲を連発。
 飛んでくる槍の威力を落とす。
 そして目の前に迫った槍を、左手に持ったナイフで叩き落す。

 この間、ユアもメドーラも、対処法を考えなかった。
 マイが自分の意思で行動した。

 オメガクロスが足を止めた事で、龍神騎に追いつかれてしまう。
「くらえ、サウザンドスピアー!」
 龍神騎は槍を乱れ突く!
 その名の通り、一秒間に千発の突きだ。
「ああああああ!」
 マイは、その全ての突きを見切り、かわし続ける!

 数秒槍を突きまくった龍神騎は、突くのをやめる。
 オメガクロスに見切られてるのに気づいたからだ。
 このまま突きまくっても、意味がない。
「サウザンドスピアーを見切るとは、やるじゃねーか。」
 龍神騎はマイの健闘を誉める。

「す、凄いですわ、マイお姉さま。」
 メドーラもマイを誉める。
 だけど、一秒間に千発もの突きをかわしまくった、その機体の中に居たのである。
 激しく身体をシェイクされ、メドーラも少し気分が悪い。
「ぐは、ま、マイがやったのか?
 あ、あれを無傷で切り抜けるなんて、信じられない。」
 ユアもメドーラ同様、少し気分が悪い。
 だけどユアには見えていた。
 龍神騎の突きが。
 だけど、それをかわしきれるかは、正直自信はない。
 つか、この速度で操縦しても、しっかり反応してくれるのかと、オメガクロスの性能にも驚く。

「はあ、はあ。」
 マイはうつむいて、息をきらす。
 その顔をあげると、前方の龍神騎をにらむ。
「分かったよ、メドーラ、ユア。
 僕、頑張るよ!」

 マイは迷いを振り切り、攻勢に転じる。
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