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異次元からの侵略者

第147話 超高次元空間なんて、何が起きるか分かりません

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 神武七龍神ブルードラゴンの居る超高次元空間にたどり着いた、マイとユアとメドーラの三人。
 神にしか存在を許されないこの空間で、ユアとメドーラは過去の惨劇映像を見せつけられる。
 それは、神の空間に立ち入った者への罰かのように。
 そんなふたりを救うためには、三身合体しかなかった。
 この場でも正気でいられるマイと、一緒になるために。
 ちなみにこの変形合体、普通に戦闘機を変形させたのではない。
 戦闘機の容積を無視した変形だった。
 このシリウスシリーズの戦闘機のプラモデルが販売されても、この三身合体オメガクロスは再現出来ない。
 そしてこの変形合体に使われたスティックは、他に六種類が確認されている。
 つまり合体パターンは、オメガクロスだけではない。
 合体の条件は、シリウスアルファーシリーズを起点にする事だけ。
 起点となる機体があれば、二機での合体も可能。
 四機五機と、増やす事も可能である。


 超高次元空間で立ち尽くす、マイ達三人の機体が変形合体したオメガクロス。
 この機体についての説明が欲しいところだが、サポートAIとの通信は、この空間にはおよばなかった。
 そう、説明出来る存在が、いなかった。
 それでもマイには、なぜかオメガクロスの動かし方が分かった。

 ユアとメドーラには、過去の惨劇映像が見えていた。
 だけど合身する事で、マイと同じ景色が見れる様になった。
 どこまでも広がる、果てしない暗闇空間。
 だけどちょっぴり明るさがある。

 オメガクロスの近くまで来た青い光は、その中心の密度を高める。

「来てくれたんだ、マイちゃん。」
 青い光の中心から、声がした。

「ケイ、なの?」
 マイには、その声に聞き覚えがあった。
「そうだよ、久しぶり、マイちゃん。」
 密度を増した青い光は、女性らしいシルエットを浮かび上げる。
 だけどそれは、あくまでシルエットであって、それが誰かを特定するには至らない。
「本当にケイなの?」
 マイは目を凝らして、シルエットを見つめる。

「ユアに、それにメドー?
 あなた達も来てくれたんだ、ありがとう。」
 ケイはマイを無視して、残りのふたりにも声をかける。
「ああ。おまえとはじっくり話しがしたかったぜ、ケイ。」
「えー、私と話す事なんて、何も無いよー。」
 ユアは少し残念に思う。
 ケイとじっくり話せない事を。

 ケイはどこかおちゃらけて、その場をにごすのが常だった。
 だけどそれなりの実力を持っていた。
 惑星ドルフレアで、勇者の子孫に伝えた、八極陣なる奥義。
 そこからもケイの実力が、垣間見える。

「ケイお姉さま、なぜ私がメドーだと分かったのですか?」
 メドーラはユアに尋ねる。
 メドーラの今の姿は、メドーの成長した姿。
 その姿を、ケイは見ていない。
 今の自分をメドーに見立てられるのは、どこか疑問だった。

「私の事、お姉さまって呼んでくれるんだ、うれしー。」
 ケイはその事に感動するが、メドーラの聞きたかった答えは、これではない。
 メドーラは聞き直そうとするが、ケイはそんなメドーラの意思を察する。
「ねー、僕の話しも聞いてよー。」
 自分を無視されたマイが何か言ってるが、やはりこれも無視される。

「以前は抱きしめる事が出来たのに、こんなに大きくなったら、ちょっと難しそうね。」
「ケイお姉さま。」
 メドーラは、ケイに会うたびに抱きしめられ、胸の谷間に顔を埋められて息苦しかった事を思い出す。

「やめてよ、ケイ。」
「あは、メドーったら、かわいすぎるー。」
 会うたびにそんなやりとりをしていたが、その回数自体は、数えるほどしかなかった。

「私も今は、こんな存在だからね。分かるのよ。」
 ケイはメドーラの疑問に答える。
 お姉さまと呼ばれて、嬉しかったのだ。
 だからお姉さまらしい行動をとってしまう。
 本当は深入りした話しは、したくないのが本音だった。

「メドー、ユア、それにマイちゃん、よく聞いて。」
 おちゃらけた感じのケイだったが、その口調は突然ひきしまる。
「ブルードラゴンを止めるには、倒すしかないわ。」

「倒せるのか、神武七龍神を。」
 その疑問を、ユアは口にする。
「倒せるわ。」
 ケイは右手の人差し指と中指とを重ね、左胸をトントン叩く。
「弱点はここ。ここを叩けば、現世に干渉するチカラを失うわ。」

「なに?」
 ユアはその場所が気になった。
 そこは丁度、オメガクロスのユアのコックピットがある位置だった。

「そんな事をしたら、ケイ、あなたはどうなるの?」
「私?さあ?どうなるんだろ。」
 マイの疑問に、ケイはすっとぼける。
「ケイお姉さま、まさか。」
 メドーラは勘づく。
 その場所は、ブルードラゴン内でケイが位置する場所。
 その場所を突けば、ブルードラゴンは依代を失う。
 この世に干渉する事が、出来なくなる。

「私は、千年前に死んだ身よ。
 私の事は気にしないで。」
 勘づいてしまったメドーラに、ケイは答える。
「嫌だよ!」
 そんなケイに、マイは反論する。
「やっと会えたんだよ、死んでるなんて、言わないでよ!」
「マイ。」
 今のケイは、生きてると言えるのかは、疑問である。
 青い光の中で、ぼんやりとした存在のケイを、生きてると言えるのだろうか。
 この疑問をユアもメドーラも持つのだが、マイは違う。

「ねえ、一緒に帰ろうよ、ケイ。
 死んでるなんて、死んでるなんて、言わないでよ。」
 マイは涙で声がかすれる。

「マイちゃん、ごねんね、私は帰れないよ。」
 そう言うケイの声が、どこか遠くなる。
 マイが顔を上げると、青い光でモヤモヤしていたケイの輪郭が、何やら歪み出している。
「そっちにはもう、ミイは、私を待っているミイはいないから。」
「え、でも。」
 マイは反論しようとするが、言葉が出ない。

 ミイはいる。
 巨大な円筒形をしたマザーコンピュータに姿を変えて。
 でもそのミイは、ブルードラゴン側についている。
 あれをミイと言っていいのかは分からんが、ミイは今のケイに近い所にいる。

 そんなマイの葛藤を、ケイは察する。
「マイちゃん、聞いて。
 今のミイは、私とのつながりに縛られてるだけの、コンピュータにすぎないの。
 だから、ミイをその呪縛から解放してあげて。
 弱点は、ここよ。ここだからね、マイちゃん。」
 まくしたてるケイの声は、青い光のモヤモヤの輪郭が崩れるとともに、かき消された。

 そして青い光のモヤモヤは、新たな輪郭を形作る。
 そう、今こそここに、神武七龍神ブルードラゴンが降臨する!
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