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異次元からの侵略者

第140話 主人公の居ない所でも戦闘は起きる

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 これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
 北部戦線の総攻撃まで、10時間をきった。
 北部戦線の侵略者達は、四日間休みなく攻めてきたのち、三日間完全に姿を消した。
 このサイクルが、長らく続いている。
 相手を完全に撃退した訳でもないので、侵略者の姿が見えない三日間も、戦線の見張りを解く事は出来なかった。
 しかし、このサイクルを続けるうちに、三日間の休戦期間の安心感は広まっていた。
 とは言え、その次の日から戦闘は再開される。
 その開戦に備え、無数の戦艦が集結しつつあった。


「くっそ、今回はやけに早えーじゃんか。」
 集結してくる艦隊を見て、ケイネシアはつぶやく。
 ここ最近だと、集結するのは開戦の一時間前という、すごい直前だった。
 だから集結しきる前に総攻撃を仕掛け、敵の後方部隊まで一気に殲滅するつもりだった。

 今回は、衛星基地ソゴムを破壊するため、コアブレイカーを使う。
 そのための露払いとしての、早めの集結だった。
 しかしその事を、ケイネシアは知らない。

 ブルードラゴンによる艦隊の具現化は、著しく魂を消耗させる。
 次の総攻撃では、文字通りブルードラゴンの命をかける事になる。
 つまり、目前にせまる敵艦隊をどうにかするには、ケイネシア自身が行動をおこす必要があった。
 今、衛星基地ソゴムの中には、マイ達がいる。
 すでに残骸となったソゴムだが、占拠されると厄介だ。
 こちらの事情を知るマイ達との合流は、なんとしてでも避けたい。

「もってくれよ、ミイ。」
 マザーコンピュータミイ。
 サポートAIだったミイがこの円筒形のコンピュータを作る時、専門技師はいなかった。
 ミイ自身が材料をかき集め、自らの検索能力を駆使して、作り上げるしかなかった。
 長い年月が経ったマザーコンピュータ。
 それも今度の総攻撃の援護で、相当ガタが来ている。
 だけど、目の前の敵艦隊を相手にするには、そんなミイの能力が必要だった。

 フォログラフの実体化。
 これには、宇宙空間に存在する宙間物質アークスピリットが必要だった。
 しかし、度重なる使用により、ここ衛星基地ソゴム周辺のアークスピリット濃度は、かなり低かった。
 それでも、戦場に無数に散らばる兵器の残骸を核にする事で、どうにか実体化出来るだろう。
 その核になりそうな残骸を物色してる最中に、ユアとメドーラに遭遇してしまう。

 1900年前の、ミイの記憶。
 そして最近回収した、ふたりの立体映像。
 この事からこのふたりは、かなり好戦的だと分かっている。
 これからの戦闘には、絶対参戦させてはならない。
 だから、このソゴムに釘付けにしておくのが最適だろう。
 と思ってたら、マイまで来やがった。
 以前は現状打破の救世主のように思われていたが、すでにその時は過ぎた。
 ブルードラゴンも思いは同じらしく、魂を削ってまで、マイを遠ざけた。
 そんなブルードラゴンの思いも虚しく、マイは戻ってきた。
 そこには、ブルードラゴンを救って欲しいグリーンドラゴンの想いもある。
 だけどその事は、ブルードラゴンも知らない。

 そんな事を思いながら、ケイネシアは実体化した艦隊で敵艦隊を攻撃する。

 すでにガタがきているミイの演算処理能力では、繰り出す攻撃も単調になる。
 戦艦同士の主砲の撃ち合い。
 シールドバリアによって、主砲の威力は緩和される。
 それでもバカのひとつ覚えの様に、主砲を撃ち合う。
 シールドバリアも、無限に防げる訳ではない。
 バリアを展開させるエネルギーが尽きれば、シールドバリアは破られる。
 お互いの戦艦は、着実にダメージを負っている。

 艦載機を出撃させての攻防戦。
 敵戦艦からは、無数の戦闘機が出撃する。
 とはいえ、そのほとんどはトライフォース用の伴機である。
 これらはフォログラフであるが、宙間物質アークスピリットの不足により、ほとんど実体化していない。

 ケイネシア側の戦艦も、艦載機を出撃させる。
 しかし、その数は少ない。

「これでいい。」
 今の小競り合いの戦況を見て、ケイネシアはつぶやく。
 戦況的には、こちらがやや押され気味ではある。
 しかし、相手がこの勢いで押してきた所へ、ブルードラゴンによる総攻撃。
 この総攻撃が、絶妙なカウンター攻撃になるだろう。

 だが、懸念要素が無い訳でもない。
 マザーコンピュータミイの負担である。
 ミイは今、誰も近づけない次元の狭間にいる。
 ミイの修復作業は、もう出来ない。
 そんなミイの現状を知る者は、ふたりいた。
 ひとりは、ミイの別動体である、もうひとりのケイネシア。
 そしてもうひとりが、ブルードラゴンである。
 ブルードラゴンは、ミイのパートナーであったケイを依代にして、この世に顕現した。
 いつしかケイの意識はブルードラゴンに取り込まれたが、ケイとミイとのつながりは、この状態でも切れる事はなかった。
 そして今、マザーコンピュータミイには、ミイとしての意思はすでにない。
 今やブルードラゴンをサポートするための、単なる大型コンピュータにすぎない。

「やっぱ、あいつの助けが必要かもな。」
 ケイネシアは、ミイの崩壊を直感する。
 それを防ぐには、ミイの別動体である、もうひとりのケイネシアの助けが必要だった。

 もうひとりのケイネシアは、マザーコンピュータミイの現状を映し出したフォログラフとともに、簡易他次元空間に居る。
 フォログラフを見守るだけで、ミイに対して何か出来る訳でもない。
 しかし、ミイの別動体でもあるもうひとりのケイネシアにも、ミイとしての働きは出来る。

 ケイネシアは、もうひとりのケイネシアの居る簡易他次元空間に向かう。
 その内部との連絡は、その内部に居る者からしか出来ない仕組みだった。

 簡易他次元空間に来て、ケイネシアは驚く事になる。
 なんとそこには、マイとユアとメドーラの三人がそろっていた。
 しかも、三人の機体、三人のパートナーであるサポートAIも一緒だった。
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