135 / 215
異次元からの侵略者
第135話 龍の皮をかぶっても、人間は人間
しおりを挟む
これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
再会をはたしたと思われた、マザーコンピュータミイ。
現在の姿を見せたミイだったが、その姿はフォログラフにすぎなかった。
そしてミイが実際に居る多次元空間は、すでに人が生活出来る空間ではなかった。
人が存在出来ない次元の狭間に取り残されたミイは、自己修復の手段もなく、あとは朽ち果てるのみだった。
そんな時に備えて、自由に動ける別動体を作った。
しかしその別動体にも、ミイの意思はない。
別動体は、すでにケイネシアと言う人格になっていた。
「ブルードラゴンを止めてくれって、今ブルードラゴンはどこに居るのよ。」
前回、ブルードラゴンを止めてくれと頼まれたマイ。
マザーコンピュータミイは、すでに意思のないコンピュータになりさがり、暴走したブルードラゴンのサポートに徹している。
「ブルードラゴンか。すでにこの世には存在していないんだ。」
そう言ってケイネシアは首をふる。
「ど、どう言う事よ。」
マイはケイネシアの言葉にうろたえる。
「ブルードラゴンをとめてくれって言ったじゃん。
それが存在しないって、どう言う事よ。」
「なるほど、そう言う事ですか。」
うろたえるマイの横で、何故かメドーラは理解する。
「分かるの、メドーラ?」
マイの問いかけに、メドーラはうなずく。
「惑星ドルフレアでの、グリーンドラゴンと同じですわ。」
「グリーンドラゴン?ナツキの事?」
マイは惑星ドルフレアでの事を思い出す。
神武七龍神であるグリーンドラゴンは、この世に顕現出来る場所が、限定されていた。
そのため、ミイの身体に憑依して、マイ達と行動を共にした。
「そっか。憑依する人間がいないんだ。」
「いや、この場合は、文字通りとらえてほしいんだがな。」
「え?」
書いててよかったドルフレア編を思い出すマイであったが、そこから導き出した答えを、ケイネシアは否定する。
「ブルードラゴンはな、自分の存在そのものを兵器に変えてたんだ。」
ケイネシアの言葉に、マイだけではなく、ユアもメドーラも驚く。
「最初の攻撃で制圧出来ればよかったんだけどな。
おまえらの抵抗が激しくて、長引いてしまった。」
「そう言う事か。」
ケイネシアの説明に、ユアは何かを納得する。
「この戦場に散らばる戦闘の残骸。そこに侵略者どもの物は、何も無かったからな。」
「ふ。ここに来てもなお、私達を侵略者と呼ぶのか。」
ケイネシアは目を閉じてニヤける。
「侵略者だなんて、そんな。」
マイにとって、ブルードラゴンのとった行為が、侵略行為と呼べるのか、分からなくなっていた。
でも、ユアは違った。
「訳も分からず、突然攻撃を受けたんだ。
そこにどんな理由があろうとも、これは侵略行為だろ。」
「ま、そうなんだがな。」
ケイネシアはユアの言葉に、理解を示す。
「そのブルードラゴンの具現化能力が、すでに限界を超えている。
次の総攻撃で、ブルードラゴンそのものが完全に消滅する。」
「そ、そんな。」
ケイネシアの独白に、マイも顔面蒼白。
「なるほど。いかに神武七龍神と言えども、無限に具現化は出来ないって事ですね。」
メドーラは、ケイネシアの独白の意味を理解する。
「どう言う事?」
理解出来ないマイは、メドーラに聞き返す。
「私達が、フォログラフに質量を持たせて実体化させてるのと、原理は一緒です。」
メドーラは説明する。
「立体映像の実体化には、宇宙空間に存在する、アークスピリットを使います。
ブルードラゴンは、自らの生命力を使って、実体化させていたのでしょう。」
「ああ、その生命力が、次の総攻撃で尽きる。
神武七龍神ブルードラゴンは、死ぬ。」
メドーラの説明に、ケイネシアは補足する。
「え、死ぬなんてそんな。
え、ちょっと待ってよ。」
ケイネシアの発言に驚くマイだったが、ここで新たな疑問がわく。
「僕達って、ブルードラゴンだけを相手にしてたの?」
「そうだが?」
ケイネシアは、何を今さらって感じに聞き返す。
「こちらの住人は、総じて平和的だ。
ただ、ブルードラゴンの蓄積された怒りが爆発しただけだ。」
「その言葉、おまえら野蛮人とは違うって言いたげだな。」
ケイネシアの発言を聞いて、ユアはチクリとひと言言った。
「ですが、ここで疑問がわいてきます。」
相手がブルードラゴンだったと知って、メドーラもひと言。
「神武七龍神を相手にして、なぜ私達はまだ生きてるのでしょう。」
神武七龍神とは、宇宙開闢以前から存在すると言われる、全ての常識を超越した存在である。
その気になれば、宇宙の一部を空間ごと消失させる事もたやすい。
現に、神武七龍神の逆鱗に触れ、滅んだ文明も数知れず。
この時代、その痕跡は宇宙のいたる所で見る事が出来る。
古くは、かのアトランティス文明の滅亡も、神武七龍神によるものだと言われている。
「そりゃあ、ブルードラゴン自体、特殊だからな。」
「ケイを依代にした事が、か?」
ケイネシアの答えに、ユアが聞き返す。
「それもあるが。」
ケイネシアはそう言って、マイに視線を向ける。
「なんでケイが依代になったのか、覚えてるかな?」
「えと、それは。」
話しを振られたマイは、記憶をさかのぼる。
「確か、レッドドラゴンとケンカしたナツキが、ブルードラゴンの顕現してる所に逃げて来たんでしょ。
それで、ブルードラゴンが、あれ?死んだんだっけ?」
「だいたい、そんなところかな。」
ケイネシアはマイの答えを聞いて、ニヤける。
神武七龍神は、この世に顕現出来る場所が限られている。
ブルードラゴンはグリーンドラゴンにより、その場所からはじかれたのだ。
この行為により、ブルードラゴンの概念そのものが、いちじるしく傷つけられた。
ブルードラゴンの存在自体が、奇跡なほどに。
だから、依代となる存在が必要になった。
その依代になったのが、ケイである。
「そんなひとりの人間を取り込んで、どうにか存在してるんだ。
神武七龍神とは言え、人間の常識の範囲に収まる存在になってしまったのさ。」
ケイネシアは、ブルードラゴンの現状について述べる。
「それが、神武七龍神を相手にして、私達が生き延びてる理由なのですね。」
メドーラも、自分の疑問に対する答えを見つける。
「それで結局のところ、ブルードラゴンはどこに居るんだ?」
と、ユアは最初の疑問をむし返す。
その答えは、まだ出ていない。
いや、すでに出てるのかもしれない。
すでにこの世には存在しないのだ。
再会をはたしたと思われた、マザーコンピュータミイ。
現在の姿を見せたミイだったが、その姿はフォログラフにすぎなかった。
そしてミイが実際に居る多次元空間は、すでに人が生活出来る空間ではなかった。
人が存在出来ない次元の狭間に取り残されたミイは、自己修復の手段もなく、あとは朽ち果てるのみだった。
そんな時に備えて、自由に動ける別動体を作った。
しかしその別動体にも、ミイの意思はない。
別動体は、すでにケイネシアと言う人格になっていた。
「ブルードラゴンを止めてくれって、今ブルードラゴンはどこに居るのよ。」
前回、ブルードラゴンを止めてくれと頼まれたマイ。
マザーコンピュータミイは、すでに意思のないコンピュータになりさがり、暴走したブルードラゴンのサポートに徹している。
「ブルードラゴンか。すでにこの世には存在していないんだ。」
そう言ってケイネシアは首をふる。
「ど、どう言う事よ。」
マイはケイネシアの言葉にうろたえる。
「ブルードラゴンをとめてくれって言ったじゃん。
それが存在しないって、どう言う事よ。」
「なるほど、そう言う事ですか。」
うろたえるマイの横で、何故かメドーラは理解する。
「分かるの、メドーラ?」
マイの問いかけに、メドーラはうなずく。
「惑星ドルフレアでの、グリーンドラゴンと同じですわ。」
「グリーンドラゴン?ナツキの事?」
マイは惑星ドルフレアでの事を思い出す。
神武七龍神であるグリーンドラゴンは、この世に顕現出来る場所が、限定されていた。
そのため、ミイの身体に憑依して、マイ達と行動を共にした。
「そっか。憑依する人間がいないんだ。」
「いや、この場合は、文字通りとらえてほしいんだがな。」
「え?」
書いててよかったドルフレア編を思い出すマイであったが、そこから導き出した答えを、ケイネシアは否定する。
「ブルードラゴンはな、自分の存在そのものを兵器に変えてたんだ。」
ケイネシアの言葉に、マイだけではなく、ユアもメドーラも驚く。
「最初の攻撃で制圧出来ればよかったんだけどな。
おまえらの抵抗が激しくて、長引いてしまった。」
「そう言う事か。」
ケイネシアの説明に、ユアは何かを納得する。
「この戦場に散らばる戦闘の残骸。そこに侵略者どもの物は、何も無かったからな。」
「ふ。ここに来てもなお、私達を侵略者と呼ぶのか。」
ケイネシアは目を閉じてニヤける。
「侵略者だなんて、そんな。」
マイにとって、ブルードラゴンのとった行為が、侵略行為と呼べるのか、分からなくなっていた。
でも、ユアは違った。
「訳も分からず、突然攻撃を受けたんだ。
そこにどんな理由があろうとも、これは侵略行為だろ。」
「ま、そうなんだがな。」
ケイネシアはユアの言葉に、理解を示す。
「そのブルードラゴンの具現化能力が、すでに限界を超えている。
次の総攻撃で、ブルードラゴンそのものが完全に消滅する。」
「そ、そんな。」
ケイネシアの独白に、マイも顔面蒼白。
「なるほど。いかに神武七龍神と言えども、無限に具現化は出来ないって事ですね。」
メドーラは、ケイネシアの独白の意味を理解する。
「どう言う事?」
理解出来ないマイは、メドーラに聞き返す。
「私達が、フォログラフに質量を持たせて実体化させてるのと、原理は一緒です。」
メドーラは説明する。
「立体映像の実体化には、宇宙空間に存在する、アークスピリットを使います。
ブルードラゴンは、自らの生命力を使って、実体化させていたのでしょう。」
「ああ、その生命力が、次の総攻撃で尽きる。
神武七龍神ブルードラゴンは、死ぬ。」
メドーラの説明に、ケイネシアは補足する。
「え、死ぬなんてそんな。
え、ちょっと待ってよ。」
ケイネシアの発言に驚くマイだったが、ここで新たな疑問がわく。
「僕達って、ブルードラゴンだけを相手にしてたの?」
「そうだが?」
ケイネシアは、何を今さらって感じに聞き返す。
「こちらの住人は、総じて平和的だ。
ただ、ブルードラゴンの蓄積された怒りが爆発しただけだ。」
「その言葉、おまえら野蛮人とは違うって言いたげだな。」
ケイネシアの発言を聞いて、ユアはチクリとひと言言った。
「ですが、ここで疑問がわいてきます。」
相手がブルードラゴンだったと知って、メドーラもひと言。
「神武七龍神を相手にして、なぜ私達はまだ生きてるのでしょう。」
神武七龍神とは、宇宙開闢以前から存在すると言われる、全ての常識を超越した存在である。
その気になれば、宇宙の一部を空間ごと消失させる事もたやすい。
現に、神武七龍神の逆鱗に触れ、滅んだ文明も数知れず。
この時代、その痕跡は宇宙のいたる所で見る事が出来る。
古くは、かのアトランティス文明の滅亡も、神武七龍神によるものだと言われている。
「そりゃあ、ブルードラゴン自体、特殊だからな。」
「ケイを依代にした事が、か?」
ケイネシアの答えに、ユアが聞き返す。
「それもあるが。」
ケイネシアはそう言って、マイに視線を向ける。
「なんでケイが依代になったのか、覚えてるかな?」
「えと、それは。」
話しを振られたマイは、記憶をさかのぼる。
「確か、レッドドラゴンとケンカしたナツキが、ブルードラゴンの顕現してる所に逃げて来たんでしょ。
それで、ブルードラゴンが、あれ?死んだんだっけ?」
「だいたい、そんなところかな。」
ケイネシアはマイの答えを聞いて、ニヤける。
神武七龍神は、この世に顕現出来る場所が限られている。
ブルードラゴンはグリーンドラゴンにより、その場所からはじかれたのだ。
この行為により、ブルードラゴンの概念そのものが、いちじるしく傷つけられた。
ブルードラゴンの存在自体が、奇跡なほどに。
だから、依代となる存在が必要になった。
その依代になったのが、ケイである。
「そんなひとりの人間を取り込んで、どうにか存在してるんだ。
神武七龍神とは言え、人間の常識の範囲に収まる存在になってしまったのさ。」
ケイネシアは、ブルードラゴンの現状について述べる。
「それが、神武七龍神を相手にして、私達が生き延びてる理由なのですね。」
メドーラも、自分の疑問に対する答えを見つける。
「それで結局のところ、ブルードラゴンはどこに居るんだ?」
と、ユアは最初の疑問をむし返す。
その答えは、まだ出ていない。
いや、すでに出てるのかもしれない。
すでにこの世には存在しないのだ。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる