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異次元からの侵略者
第129話 死への恐怖
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これは西暦9980年のはるか未来のお話し。
この時代への召喚は、主に西暦7500年前後に集中する。
これは、西暦7522年に起こったポールシフトに由来する。
地球の北極と南極との磁場が逆転する現象。
このポールシフトがもたらした大災害で、地球上の生物の76パーセントが死滅する。
人類の文明は、大自然の脅威の前には、あまりにもモロかった。
しかしこの時代、人類の多くは宇宙中に広く分布していた。
ユアもその時代、西暦7510年からの召喚だった。
ユアは、マイとマインがあまりにも過去すぎる年代からの召喚と知り、衝撃を受ける。
ちなみにメドーラの召喚年代は、定かではない。
それは、メドーラが西暦という暦を使った生き方をしていなかった
からだ。
だけど霊源甲冑への憎悪から、西暦6000年前後と推測される。
「マイとは価値観が違うって事が、よく分かった。」
前回の話しをふまえ、ユアは言う。
ブルードラゴンが引き起こした、北部戦線の激戦。
このブルードラゴンの行為を擁護するマイとは、ユアの価値観は違う。
人の命は地球より重いと言うマイの発言は、ユアにとっては常識を疑う妄想でしかない。
こんな価値観の違う人間とは、普通は関わらないのがベスト。
しかし、マイは同じチームの仲間である。
価値観が違うとは言え、あゆみ寄る必要がある。
そして今回の激戦は、同じチームからも犠牲者がでている。
「マイは、マインとリムを見て、なんとも思わないの?」
北部戦線の激戦で負傷した、マインとリム。
マインは意識が戻らず、魂がアバター体から離れないよう、メスシリンダーみたいな容器に、液体付けにされている。
リムは右半身が完全麻痺してしまい、新たなアバター体への再召喚を余儀なくされる。
「それは、ひどいと思うけど。」
マイはそう答えるのがやっとだった。
今回の戦争の発端となった、ブルードラゴンの報復行為。
これを擁護するような発言をしたため、その報復行為がもたらした結果について、マイは否定しづらかった。
「マイは知らないだろうけど、」
言い淀むマイに、ユアさらに言い浴びせる。
「私達の使うシリウス機体は、一般戦闘機より高性能なのよ。
それでもマインとリムは、あの有り様。
じゃあ、一般戦闘機の人たちは、どうなったと思う?」
「それは。」
ユアの突然の質問に、マイは答えが出てこない。
「みんな死んだわ。」
ユアは、ソウルブレイドのエキシビション戦に特化した召喚者である。
その試合を通じ、召喚者の知り合いも多い。
その多くが、今回の戦闘で死んだ。
「死んだら、どうなると思う?」
ユアの悲しみの表情に、少し自笑が混じる。
「それは、脱出用」
「脱出用ポッドは、使えないとしてよ!」
ユアは、マイが脱出用ポッドで転送されると言いかけたのを、あえて止める。
「脱出用ポッドが使えないで死んだら、どうなると思う?」
ユアは言い直す。
「その場合は、元の時代に戻るんでしょ。」
マイは以前、マインの部屋へお泊まりした時の事を思い出す。
「そして、再召喚は出来ない。でしょ?」
「あんたねえ。」
マイの自信満々の答えを聞いて、ユアは目を閉じて身体を震わせる。
こみ上げてくる怒りを、無理矢理抑えこむ。
「それは、魂の拒絶だな。」
言葉が出ないユアに代わり、ケイネシアが答える。
ユアは目を見開き、ケイネシアをにらむ。
ケイネシアはユアの事など意に介せず、続ける。
「ありえない事、と魂が思えば、その魂はこの時代にはいられなくなる。
これが魂の拒絶。これは、この時代に死ぬ事とは違う。」
「え?じゃあ、死んだらどうなるの?」
ケイネシアの言葉に、マイの顔が青ざめる。
マイにも、その答えが頭をよぎる。
「死にます。」
ケイネシアは、はっきりと答える。
「うそ、でしょ。」
それは、マイが否定したい答えだった。
「嘘じゃないわ。」
怒りを抑えたユアが、横から口を挟む。
「私の時代にはね、原因不明の寝たきり状態になる人が多かったわ。
そのほとんどが、二十三歳の女性。
そして、二度と目が覚める事なく、みんな死んだわ。」
「それって、どういう意味なの?」
聞き返すマイの言葉は、震えている。
マイにも分かったその理由を、認めたくないのだ。
「私も、この時代に召喚されて、はじめて気づいたわ。
みんな、この時代で死んだんだと。」
「うそ。」
マイは両手で自分の二の腕をつかみ、膝から崩れる。
「嘘じゃないから。
これは、ユウにも聞いたから、間違いないわ。」
ユウとは、ユアのパートナーであるサポートAIだ。
ユアは召喚された直後に、様々な疑問をユウにぶつけた。
そのほとんどの疑問に、答えはあった。
中には禁則事項もあったが、それもユウの態度から、ユアは判断出来た。
「うそ。」
マイは、それしか言えなかった。
僕は死なない。
そう言って宇宙ステーションを飛び出したマイ。
だけど、ユアとメドーラと行動を共にして、自分の未熟さを痛感した。
僕は死なない。
そう言ったけれど、死なない自信は無くなっていた。
その場合、ユアやメドーラ、マインとリムとは、二度と会えなくなる。
記憶にも残らないかもしれない。
それが悲しかった。
だけど、今は違う。
本当に死ぬのだ。
マイの心は、死への恐怖でいっぱいだった。
この時代への召喚は、主に西暦7500年前後に集中する。
これは、西暦7522年に起こったポールシフトに由来する。
地球の北極と南極との磁場が逆転する現象。
このポールシフトがもたらした大災害で、地球上の生物の76パーセントが死滅する。
人類の文明は、大自然の脅威の前には、あまりにもモロかった。
しかしこの時代、人類の多くは宇宙中に広く分布していた。
ユアもその時代、西暦7510年からの召喚だった。
ユアは、マイとマインがあまりにも過去すぎる年代からの召喚と知り、衝撃を受ける。
ちなみにメドーラの召喚年代は、定かではない。
それは、メドーラが西暦という暦を使った生き方をしていなかった
からだ。
だけど霊源甲冑への憎悪から、西暦6000年前後と推測される。
「マイとは価値観が違うって事が、よく分かった。」
前回の話しをふまえ、ユアは言う。
ブルードラゴンが引き起こした、北部戦線の激戦。
このブルードラゴンの行為を擁護するマイとは、ユアの価値観は違う。
人の命は地球より重いと言うマイの発言は、ユアにとっては常識を疑う妄想でしかない。
こんな価値観の違う人間とは、普通は関わらないのがベスト。
しかし、マイは同じチームの仲間である。
価値観が違うとは言え、あゆみ寄る必要がある。
そして今回の激戦は、同じチームからも犠牲者がでている。
「マイは、マインとリムを見て、なんとも思わないの?」
北部戦線の激戦で負傷した、マインとリム。
マインは意識が戻らず、魂がアバター体から離れないよう、メスシリンダーみたいな容器に、液体付けにされている。
リムは右半身が完全麻痺してしまい、新たなアバター体への再召喚を余儀なくされる。
「それは、ひどいと思うけど。」
マイはそう答えるのがやっとだった。
今回の戦争の発端となった、ブルードラゴンの報復行為。
これを擁護するような発言をしたため、その報復行為がもたらした結果について、マイは否定しづらかった。
「マイは知らないだろうけど、」
言い淀むマイに、ユアさらに言い浴びせる。
「私達の使うシリウス機体は、一般戦闘機より高性能なのよ。
それでもマインとリムは、あの有り様。
じゃあ、一般戦闘機の人たちは、どうなったと思う?」
「それは。」
ユアの突然の質問に、マイは答えが出てこない。
「みんな死んだわ。」
ユアは、ソウルブレイドのエキシビション戦に特化した召喚者である。
その試合を通じ、召喚者の知り合いも多い。
その多くが、今回の戦闘で死んだ。
「死んだら、どうなると思う?」
ユアの悲しみの表情に、少し自笑が混じる。
「それは、脱出用」
「脱出用ポッドは、使えないとしてよ!」
ユアは、マイが脱出用ポッドで転送されると言いかけたのを、あえて止める。
「脱出用ポッドが使えないで死んだら、どうなると思う?」
ユアは言い直す。
「その場合は、元の時代に戻るんでしょ。」
マイは以前、マインの部屋へお泊まりした時の事を思い出す。
「そして、再召喚は出来ない。でしょ?」
「あんたねえ。」
マイの自信満々の答えを聞いて、ユアは目を閉じて身体を震わせる。
こみ上げてくる怒りを、無理矢理抑えこむ。
「それは、魂の拒絶だな。」
言葉が出ないユアに代わり、ケイネシアが答える。
ユアは目を見開き、ケイネシアをにらむ。
ケイネシアはユアの事など意に介せず、続ける。
「ありえない事、と魂が思えば、その魂はこの時代にはいられなくなる。
これが魂の拒絶。これは、この時代に死ぬ事とは違う。」
「え?じゃあ、死んだらどうなるの?」
ケイネシアの言葉に、マイの顔が青ざめる。
マイにも、その答えが頭をよぎる。
「死にます。」
ケイネシアは、はっきりと答える。
「うそ、でしょ。」
それは、マイが否定したい答えだった。
「嘘じゃないわ。」
怒りを抑えたユアが、横から口を挟む。
「私の時代にはね、原因不明の寝たきり状態になる人が多かったわ。
そのほとんどが、二十三歳の女性。
そして、二度と目が覚める事なく、みんな死んだわ。」
「それって、どういう意味なの?」
聞き返すマイの言葉は、震えている。
マイにも分かったその理由を、認めたくないのだ。
「私も、この時代に召喚されて、はじめて気づいたわ。
みんな、この時代で死んだんだと。」
「うそ。」
マイは両手で自分の二の腕をつかみ、膝から崩れる。
「嘘じゃないから。
これは、ユウにも聞いたから、間違いないわ。」
ユウとは、ユアのパートナーであるサポートAIだ。
ユアは召喚された直後に、様々な疑問をユウにぶつけた。
そのほとんどの疑問に、答えはあった。
中には禁則事項もあったが、それもユウの態度から、ユアは判断出来た。
「うそ。」
マイは、それしか言えなかった。
僕は死なない。
そう言って宇宙ステーションを飛び出したマイ。
だけど、ユアとメドーラと行動を共にして、自分の未熟さを痛感した。
僕は死なない。
そう言ったけれど、死なない自信は無くなっていた。
その場合、ユアやメドーラ、マインとリムとは、二度と会えなくなる。
記憶にも残らないかもしれない。
それが悲しかった。
だけど、今は違う。
本当に死ぬのだ。
マイの心は、死への恐怖でいっぱいだった。
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